アルバムレビュー:More Fun in the New World by X

AD
※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1983年7月**
ジャンル: パンク・ロック、カウパンク、アメリカーナ、ポストパンク


AD

概要

『More Fun in the New World』は、Xが1983年にリリースした4作目のスタジオ・アルバムであり、
パンク・ロックとアメリカーナを融合させた“文学的ロックンロール”の完成形ともいえる作品である。
ジョン・ドウとエクシーン・セルヴェンカによる詩的なリリックはますます研ぎ澄まされ、
レイ・マンザレクのプロデュースも本作で一区切りを迎える。

本作では、“社会批評”と“日常生活の記録”が音楽的多様性の中に溶け込み、
LAパンク・シーンの最前線から、アメリカという国全体を俯瞰する視点へとシフトしている

カントリー、ソウル、ポップ、R&Bなどの要素も大胆に取り入れ、
“パンク”という言葉の枠を越えた表現へと踏み込んでいる。


全曲レビュー

1. The New World
オープニングにして代表曲。
レーガン時代のアメリカの変質を描く社会批評でありながら、
そのリズムとメロディはキャッチーで皮肉に満ちている。
「世界は変わった、でも誰のために?」という問いが今も突き刺さる。

2. We’re Having Much More Fun
ハイスピードなロックンロール。
ツアー生活の狂騒と、その中にある退屈さや疎外感を
“楽しい”という語の連呼で反転させる皮肉なパーティーチューン

3. True Love
激しく歪んだギターと不安定なリズムの中で、
“真実の愛”がいかに暴力的で破壊的になりうるかを描く。

4. Poor Girl
貧困のなかで生きる女性の視点を詩的に描写した名曲。
エクシーンの冷たくも優しいボーカルが、「語られない者たち」の声を代弁している。

5. Make the Music Go Bang
ライブでも人気の高いパーティーチューン。
“音楽を爆発させろ”というロックの原点に立ち返る宣言であり、
熱量と疾走感が最高潮に達する一曲

6. Breathless(Jerry Lee Lewisカバー)
原曲のロカビリー感を維持しつつ、Xらしい荒削りなアレンジで再解釈。
過去のロックンロールと現在のパンクが握手する瞬間

7. I Must Not Think Bad Thoughts
アルバムのハイライト。
政治と音楽、記憶と現実の混乱を
静かで美しく、しかし鋭く突き刺すポストパンク・バラード
アメリカのニュース報道、検閲、ラジオの変質などを題材に、
“悪いことを考えてはいけない”という自己検閲的内面との葛藤が描かれる。

8. Devil Doll
古典的ロックンロールとラウンジ音楽を融合させた異色のラブソング。
ジャジーなリズムと囁くような歌声が、恋の中毒性と甘美さを際立たせる。

9. Painting the Town Blue
退屈な日常の繰り返しに抗うような、哀愁のロックナンバー。
“街を青く塗る”=悲しみの主張という比喩が美しい。

10. Hot House
熱気と抑圧が入り混じる、内向きな激情を描いた一曲。
エクシーンのボーカルが“閉じた空間で発酵する感情”をそのまま音像化している。

11. Drunk in My Past
酩酊と後悔、時間の錯綜。
Xらしい**“酔いどれ詩”**の典型で、荒く切り裂くギターと独白的なリズムが印象的。

12. True Love Pt. #2
再び“真実の愛”をテーマにしつつ、
前半のカオスに対する反省とも諦めともとれる語り口で幕を閉じる。
円環構造のように、感情が再び戻ってくる構成が秀逸。


総評

『More Fun in the New World』は、Xがパンクの“自己表現”から“社会的発言”へと踏み出したアルバムである。
だがその表現は決して説教的ではなく、
街の片隅、車のなか、酒場の影、ベッドの上――そんな“現場”から紡がれる物語たちが連なっている。

音楽的には前作『Under the Big Black Sun』の流れを受けつつも、
より多様なジャンルを取り込み、
カントリー、ソウル、ラウンジ、ロカビリーまでもが“X流パンク”に昇華されている。

“新世界”に希望はあるのか?
タイトルが投げかけるその問いに、バンドは明確な答えを出さない。
だが、その“答えのなさ”こそが80年代のリアルだったのだ。


おすすめアルバム

  • Minutemen / Double Nickels on the Dime
     社会批評とパンクの融合をさらに広げたLAアンダーグラウンドの金字塔。
  • The Clash / Sandinista!
     多ジャンルを貪欲に吸収しながら世界を語ったパンクの拡張型。
  • Blondie / Eat to the Beat
     ジャンルの越境とポップな切れ味が共通する。
  • Jason & the Scorchers / Lost & Found
     カントリーとパンクを融合した“カウパンク”の決定盤。
  • The Dream Syndicate / The Days of Wine and Roses
     ロサンゼルスの暗部を描く、同時代的なポストパンク/ペイズリー・アンダーグラウンド代表作。

特筆すべき事項

  • 「I Must Not Think Bad Thoughts」は、アメリカ文化の崩壊と情報統制を予見した先鋭的な楽曲として再評価が進み、
     のちのR.E.M.Fugaziにも影響を与えた。
  • アルバムタイトル『More Fun in the New World』は、希望と皮肉の両義的な含みを持ち、
     当時の政治的ムード(レーガン政権下のアメリカ)への批判とも取れる。
  • 本作をもって、プロデューサーRay Manzarekとの共同作業は一旦終了し、
     Xはこの後より独立色の強い音楽性を模索していくことになる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました