アルバムレビュー：Loaded by The Velvet Underground

アルバムレビュー

2024.11.212025.04.24

発売日: 1970年11月15日
ジャンル: ロック、ポップロック

The Velvet Undergroundの4枚目のスタジオアルバムLoadedは、バンドがこれまでの挑発的で実験的なアートロック路線から、よりポップで親しみやすい方向へと舵を切った作品だ。そのタイトルは「ラジオにヒット曲を満載したアルバムを作れ」というレーベルからの指示に由来しており、キャッチーなメロディと明快なアレンジが特徴的である。

このアルバムは、バンドにとって新しい挑戦であり、また大きな転機でもあった。制作途中でルー・リードが脱退し、バンドの終焉を予感させる作品となった一方、彼が手掛けた楽曲はこれまで以上に洗練され、普遍的な魅力を備えている。「Sweet Jane」や「Rock & Roll」といった楽曲は、The Velvet Undergroundのキャリアを象徴する名曲として語り継がれている。ポップさの中にも深い詩的な視点を保ち続けたLoadedは、ロック史における重要なマイルストーンと言える。

トラック解説

1. Who Loves the Sun
ビートルズやバーズを思わせる爽やかなポップソングでアルバムが幕を開ける。軽やかなメロディとは裏腹に、歌詞は愛の喪失と無常を歌っている。「Who loves the sun? Not everyone」というフレーズに、希望と諦念が交錯する独特の感情が込められている。

2. Sweet Jane
バンドの代表曲の一つで、リードが生み出したロック史に残る名曲。軽快なギターチャンクとメロディックなボーカルが絡み合い、聴く者を魅了する。歌詞には「大人になること」への皮肉とともに、若者の無邪気さと自由が描かれている。コンサートでは定番のアンセムとなった一曲だ。

3. Rock & Roll
音楽の力によって人生が変わる瞬間を歌ったポジティブでエネルギッシュな楽曲。疾走感あふれるリフと「Her life was saved by rock and roll」というフレーズが、ロックへの愛をストレートに表現している。希望に満ちたメッセージが心を打つ。

4. Cool It Down
ファンキーなリズムセクションとリードの軽快なボーカルが特徴のトラック。歌詞は愛欲や欲望の危うさを描きながらも、どこかユーモラスなトーンを持つ。リズムのグルーヴが心地よい一曲だ。

5. New Age
ダグ・ユールがボーカルを担当した美しいバラード。歌詞には、時代の変化とそれに取り残された個人の悲哀が描かれている。「It’s the beginning of a new age」というリフレインは、希望と切なさが交錯する絶妙な余韻を残す。

6. Head Held High
ゴスペル風のコーラスと荒々しいロックサウンドが融合した楽曲。明るいメロディに対して、歌詞は自己肯定と自信をテーマにしており、リズムセクションがエネルギーを引き立てている。

7. Lonesome Cowboy Bill
カントリー風のアレンジが特徴の楽曲で、前作までのアヴァンギャルドな雰囲気とは一線を画す。遊び心ある歌詞と陽気なサウンドが印象的で、アルバム全体のバランスを取る役割を果たしている。

8. I Found a Reason
愛の喜びと感謝を歌った感動的なバラード。シンプルなコード進行に乗せたリードの優しいボーカルが聴く者の心に響く。「I found a reason to keep living」というフレーズは、アルバム全体の中でも特に深い印象を残す。

9. Train Round the Bend
蒸気機関車のリズムを模倣した繰り返しのギターリフが特徴的。歌詞は都会生活への不満と逃避願望を描き、荒々しいエネルギーが曲全体を支配している。

10. Oh! Sweet Nuthin’
アルバムの最後を飾る壮大なバラードで、ダグ・ユールがボーカルを担当。無名の人々や失意の中にある人々への優しい眼差しが感じられる楽曲で、繊細で美しいメロディとドラマチックな展開が印象的だ。

アルバム総評

Loadedは、The Velvet Undergroundがポップスの魅力を追求しながらも、その詩的な深みを失わない稀有な作品である。ルー・リードの作詞作曲の才能が前面に押し出され、商業的成功を狙ったとはいえ、単なる「ヒット曲集」に終わらないアルバムに仕上がっている。特に「Sweet Jane」や「Rock & Roll」のような楽曲は、ロックの普遍的な魅力を感じさせる一方、「Oh! Sweet Nuthin’」などの静かな楽曲には、バンドの繊細な側面が表れている。