発売日: 2012年8月18日
ジャンル: インディーロック、ポストパンク、ガレージロック
Parquet Courtsの2作目となるアルバム「Light Up Gold」は、アメリカのオルタナティブロックシーンに衝撃をもたらした一枚で、鋭いポストパンクサウンドと観察眼に富んだリリックが特徴的だ。テキサスで結成され、ニューヨークで活動を本格化させたこのバンドは、DIY精神にあふれたローファイなプロダクションとともに、聴く者を即座に引き込むエネルギッシュな音楽を提供している。このアルバムは、パンキッシュでありながらインテリジェントな一面も持ち合わせた歌詞、そしてタイトで勢いのあるサウンドが魅力的で、ニューヨークの喧騒や現代社会への風刺が痛快に描かれている。
アルバム全体には、70年代後半のパンクロックから80年代のポストパンクへのオマージュが色濃く見られ、Andrew Savageの荒々しいボーカルとAustin Brownの切れ味鋭いギターが融合し、活気に満ちた音の波が押し寄せてくる。わずか33分のアルバムながら、14曲にわたる短くて鋭い楽曲が次々に展開され、気怠いアティチュードとテンションの高さが心地よいカオスを生み出している。
トラックごとの解説
1. Master of My Craft
アルバムの幕開けを飾る「Master of My Craft」は、アグレッシブなギターリフが印象的なトラックで、Savageの力強いボーカルが現代社会に対する皮肉を込めて歌う。疾走感とともに不安定なエネルギーが聴く者をつかむ一曲。
2. Borrowed Time
「Borrowed Time」は、シンプルなコード進行に鋭いリズムが加わり、軽快なギターリフが展開されるポップなナンバー。歌詞には人生の儚さが描かれ、どこか刹那的なメロディが心地よい。
3. Donuts Only
この短いインストゥルメンタルトラックは、疾走するリズムとノイジーなギターが印象的で、まるでライブの一瞬を切り取ったような臨場感が漂う。次の曲への勢いをつけるブリッジ的役割を果たしている。
4. Yonder is Closer to the Heart
「Yonder is Closer to the Heart」は、軽快なリズムにのせて、曖昧な人間関係や距離感をテーマにした歌詞が展開される。シンプルながらも引き込まれるサウンドが心地よい。
5. Careers in Combat
わずか1分にも満たない「Careers in Combat」は、戦争や軍隊への皮肉が込められた歌詞が特徴的。Savageの激しいボーカルとラフなギターサウンドが、社会への不満を鋭く突き刺す。
6. Light Up Gold I
この短いインタールードは、アルバム全体のテーマである「金色の輝き」に関する暗喩が込められており、次の「Light Up Gold II」へとつながる。切迫感のあるメロディが印象的だ。
7. Light Up Gold II
続く「Light Up Gold II」では、ギターとドラムが力強く重なり合い、無駄のないシンプルなサウンドがアルバムの核となるメッセージを表現する。消費社会への皮肉が感じられる歌詞も秀逸。
8. N Dakota
「N Dakota」は、アメリカ中西部を象徴する風景や文化を描写し、ノスタルジックな雰囲気が漂う楽曲。静かなテンポと淡々とした歌い方が印象的で、日常の一コマを切り取ったようなリリックが魅力的だ。
9. Stoned and Starving
アルバムのハイライトとも言える「Stoned and Starving」は、シンプルなビートが続く中で、次第に高まっていくギターリフが印象的。退屈な日常と欲望をテーマにした歌詞が、都市生活の虚しさを映し出している。
10. No Ideas
「No Ideas」は、短くもエネルギッシュなパンクナンバーで、激しいギターとシンプルなドラムが勢いよく絡み合う。何もアイデアが浮かばない状況を皮肉った歌詞が、無気力感を表現している。
11. Caster of Worthless Spells
落ち着いたテンポと不気味な雰囲気が漂う「Caster of Worthless Spells」は、短いながらもインパクトのあるトラック。魔法使いのような存在になぞらえ、自らの価値観を皮肉る内容だ。
12. Disney P.T.
「Disney P.T.」は、軽快なギターとリズムが特徴的で、資本主義や娯楽産業への風刺が込められている。テーマパークに例えられるアメリカの文化がシニカルに描かれている。
13. Tears O Plenty
「Tears O Plenty」は、哀愁を帯びたメロディが心に残る一曲。落ち着いたリズムと、どこか退廃的な雰囲気が漂い、歌詞には現代社会の虚しさや不安が詰め込まれている。
14. Picture of Health
アルバムを締めくくる「Picture of Health」は、再び高まるエネルギーで終幕にふさわしいフィナーレを迎える。社会の表面に隠れた病的な側面を暗示しており、激しいサウンドと共にメッセージ性を強調する。
アルバム総評
「Light Up Gold」は、Parquet Courtsがニューヨークのインディーシーンで注目を集めるきっかけとなったアルバムで、ポストパンクやガレージロックの要素が見事に融合されている。時に激しく、時にシニカルな歌詞は、現代社会や都市生活の虚しさ、退屈さをリアルに描写しつつ、どこかユーモラスでもある。シンプルでありながらも、強烈なエネルギーを持ったサウンドは、リスナーを飽きさせることなく、痛快で鋭い視点が散りばめられている。アルバム全体が持つ疾走感と切れ味の鋭さが、Parquet Courtsならではの魅力を存分に引き出しており、繰り返し聴くたびに新たな発見がある作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Is This It by The Strokes
ニューヨークのインディーロックの金字塔。シンプルでタイトなリズムと都会的な歌詞が共通しており、Light Up Goldのファンには必聴のアルバム。
Pink Flag by Wire
ポストパンクの傑作で、短く鋭いトラックが印象的。Parquet Courtsのシンプルでアグレッシブなサウンドに影響を与えた作品であり、パンク好きにおすすめ。
Entertainment! by Gang of Four
社会的メッセージを盛り込んだポストパンクの名盤。鋭いリリックとエネルギッシュなサウンドが、Parquet Courtsのシニカルな視点に通じる。
Double Negative by Low
エクスペリメンタルな要素を取り入れたインディーロックで、退廃的な雰囲気が漂う。社会や現代への問いかけが深く、Light Up Goldのファンにも響く作品。
The Modern Lovers by The Modern Lovers
シンプルなガレージロックで、日常や現実をテーマにした歌詞が特徴。Parquet Courtsのように、等身大のメッセージが詰まったアルバムで共感できる。
コメント