1. 歌詞の概要
「Lady Love(レディ・ラヴ)」は、イギリスのギタリスト Robin Trower(ロビン・トロワー)が1976年にリリースしたアルバム『Long Misty Days』に収録されたナンバーであり、ソウルフルでブルージーなヴォーカルとサイケデリックなギター・サウンドが溶け合う、熱情的なラブ・ソングである。
歌詞の中心にあるのは、タイトルが示す通り“Lady Love”――つまり語り手の心を捉えて離さない女性、あるいは“愛そのもの”の化身のような存在である。
語り手は彼女に翻弄されつつも、その愛に身を委ねずにはいられない、抑えきれない衝動と依存を告白している。
その感情は甘美であると同時に危うく、まるで中毒のようだ。
「Lady Love」は、ただの恋心ではなく、魂ごと引き込まれていくような、破滅的で抗いがたい愛の象徴なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Lady Love」は、Robin Trowerの通算4作目のスタジオ・アルバム『Long Misty Days』からシングルカットされた楽曲で、アメリカではラジオ・エアプレイを通じて広く親しまれ、Trowerの代表曲のひとつとして定着している。
この曲の特筆すべき点は、Trowerではなく、バンドメイトである**James Dewar(ジェイムズ・デュワー)**が共作者としてクレジットされていること。彼はこの曲で、深くソウルフルなボーカル・パフォーマンスを披露しており、その情感豊かな歌声が曲の情熱と切なさを強く際立たせている。
一方で、Robin Trowerのギターはここでも異彩を放ち、ワウ・ペダルを駆使したうねるようなトーンと、歌うようなフレージングが、歌詞の情熱をそのまま音に変えている。
ブルース、ソウル、サイケデリックの要素が一体化したサウンドは、1970年代中盤のTrowerが到達した独自の音楽的頂点を示している。
3. 歌詞の抜粋と和訳
Lady love, your love is peaceful
Like the summer’s breeze
And just like in the springtime
You’re only just a tease
レディ・ラヴ 君の愛は穏やかだ
夏の風のように
でも春の日差しのように
それはただ 僕をじらすだけ
Lady love, you bring me peace of mind
Let me know you’re mine
レディ・ラヴ 君は僕の心に安らぎをくれる
だから教えてほしい――君が僕のものだと
And though you’re so far away
You’re with me every day
君は遠く離れているけれど
僕の心には 毎日君がいるんだ
引用元:Genius 歌詞ページ
歌詞は比較的シンプルで、愛する人を想う気持ちがストレートに表現されている。
だがその裏には、愛の不在、あるいはすれ違いの影が微かに漂っており、歌い手の切実さがにじんでいる。
4. 歌詞の考察
「Lady Love」は、そのシンプルなラブソングの体裁のなかに、満たされることのない愛のもどかしさや、絶えず変化する感情の揺らぎが織り込まれている。
たとえば、「peaceful like the summer’s breeze(夏の風のような穏やかさ)」というラインは、最初は安らぎの象徴のように聞こえるが、風はすぐに過ぎ去るものであり、その刹那的な性質を暗に示している。
さらに、「just a tease(からかい)」という表現は、愛が近づくたびに遠ざかっていくような、触れられそうで触れられない恋を暗示している。
また、「though you’re so far away」というラインからは、この“レディ・ラヴ”が実在の女性なのか、それとも精神的な理想像なのかが曖昧になる。
つまりこの曲は、実在する女性に対する恋慕であると同時に、人が追い求める“完全な愛”そのものに対する祈りのようにも響く。
James Dewarのボーカルは、ただ愛を伝えるのではなく、愛に翻弄され、救いを求めるような祈りのトーンで貫かれており、それがTrowerのギターの“泣き”と融合することで、言葉以上の感情の深さを伝えてくれる。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Bridge of Sighs by Robin Trower
愛や喪失、自己超越をテーマにしたトロワーのスピリチュアルな名作。 - Little Wing by Jimi Hendrix
幻想的で詩的な愛のイメージをギターとともに描いた、名ラブソング。 - I’d Rather Go Blind by Etta James
恋の喪失と未練を、圧倒的なソウルで描く涙のバラード。 - Still Got the Blues by Gary Moore
愛の記憶を引きずる哀しみと、ギターの泣きが共鳴するブルース・バラード。 - Love Reign O’er Me by The Who
愛を通じて救済を求める、ロック・オペラ的なスケールのバラード。
6. 魂の奥から“愛”を呼ぶ歌
「Lady Love」は、Robin Trowerのキャリアの中でも、最もソウルフルでエモーショナルなラブ・ソングのひとつである。
この曲には、愛というものが決して単純な“喜び”だけでなく、喪失、葛藤、執着、そして希望をも内包するものであるという認識が、静かに、しかし確かに宿っている。
トロワーのギターは、愛を語る言葉以上に真実を語り、
デュワーの歌声は、切実な感情の奥底にある“本音”を浮かび上がらせる。
「Lady Love」は、甘さと痛みのあいだで揺れ動く、
**魂の深層を照らすような“愛の音楽詩”**なのだ。
コメント