アルバムレビュー:Kick by INXS
発売日: 1987年10月19日
ジャンル: ロック、ニュー・ウェイヴ、ファンクロック
INXSの6枚目のスタジオアルバム『Kick』は、バンドを国際的な成功へと導いた作品であり、彼らのキャリアにおいて最も重要なアルバムのひとつである。ハードなギターリフと、ファンク、ロック、ニュー・ウェイヴが絶妙に融合したサウンドが特徴的で、ミカエル・ハッチェンスのセクシーでダイナミックなボーカルがアルバム全体を通じて印象を強めている。このアルバムは、全世界で1,000万枚以上を売り上げ、彼らを80年代後半の最も影響力のあるバンドのひとつに押し上げた。
各曲ごとの解説:
- Guns in the Sky
重厚でアグレッシブなギターリフから始まるオープニングトラック。核兵器や戦争に対する怒りを歌っており、シンプルながらも力強いメッセージを放つ楽曲。ハッチェンスのボーカルは抑えたトーンでありながら、曲の緊張感を高めている。 - New Sensation
アルバムの代表的なシングルのひとつで、ダンサブルなリズムとキャッチーなサビが特徴。軽快なギターリフとリズムセクションが絶妙に絡み合い、躍動感溢れるポップロックナンバーに仕上がっている。ハッチェンスのエネルギッシュなボーカルが、聴く者を魅了する。 - Devil Inside
ダークでミステリアスな雰囲気を持つ一曲。鋭いギターリフと重厚なベースラインが曲全体を支え、歌詞は人間の二面性や欲望をテーマにしている。イントロからアウトロまで、テンションが高く保たれた緊張感のある曲だ。 - Need You Tonight
INXS最大のヒット曲のひとつであり、セクシュアルでグルーヴィーなサウンドが特徴。ミニマルなファンクリフに乗せて、ハッチェンスの滑らかで誘惑的なボーカルが心に響く。シンプルながらも非常に印象的な曲で、間奏のギターブレイクも秀逸。 - Mediate
「Need You Tonight」と繋がる形で続くこの曲は、詩的で内省的なリリックが印象的。ボブ・ディランの「Subterranean Homesick Blues」に影響を受けたリズミカルな言葉遊びが特徴で、メロディよりもリリックが際立つアートロック的な楽曲だ。 - The Loved One
ゴスペル調のコーラスとファンクのリズムが融合した、アルバムの中でも異色のカバー曲。オリジナルはオーストラリアのバンド、The Loved Onesの楽曲で、INXSが自分たちのスタイルにアレンジを加え、新しい生命を吹き込んでいる。 - Wild Life
ファンキーなリズムとアップテンポなギターワークが際立つ楽曲。軽快なリズムセクションに支えられた明るい曲調が特徴で、アルバム全体の中でも特にライブ映えするナンバー。 - Never Tear Us Apart
壮大なバラードで、ストリングスが効果的に使用され、感情的な高まりを演出している。ハッチェンスの深い感情表現が、失われた愛や痛みをテーマにした歌詞を引き立てており、アルバムの中でも特に感動的な楽曲。 - Mystify
軽快なピアノのリフとポップなメロディが際立つ楽曲。ロマンティックでエネルギッシュな歌詞が、聴く者にポジティブな印象を与える。ハッチェンスのボーカルはここでも輝きを放ち、彼の多様な声質を感じさせる一曲。 - Kick
アルバムのタイトルトラックで、パワフルなホーンセクションとファンキーなギターリフが絡み合う。勢いのあるリズムが印象的で、アルバム全体のエネルギーを体現した曲となっている。ライブでの盛り上がりが容易に想像できる、活気あふれる楽曲だ。 - Calling All Nations
軽快なテンポとポップなメロディが特徴のナンバー。タイトル通り、世界中の人々に向けた前向きなメッセージが込められており、曲全体に一体感をもたらす。 - Tiny Daggers
アルバムの締めくくりにふさわしい、明るくエネルギッシュな曲。ギターリフが軽やかで、シンセサイザーが曲にポップな色合いを加えている。ラストを飾るにふさわしいポジティブな楽曲だ。
アルバム総評:
『Kick』は、INXSが世界的な成功を収めるきっかけとなったアルバムであり、ファンク、ロック、ニュー・ウェイヴの要素を巧みに融合させた名作だ。ミカエル・ハッチェンスのカリスマ的なボーカルと、バンド全体の卓越した演奏力が、各楽曲に個性を与えている。「Need You Tonight」や「Never Tear Us Apart」などのヒット曲は、アルバム全体の中でも特に強烈な印象を残し、現在も多くのリスナーに愛されている。ダンサブルなトラックとエモーショナルなバラードがバランス良く配置されており、80年代後半のロックシーンを代表する一枚となった。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- True Colors by Cyndi Lauper
ファンキーなリズムとエモーショナルなバラードが共存するこのアルバムは、INXSの『Kick』のファンにおすすめ。特に「True Colors」のような心に響く楽曲が、『Never Tear Us Apart』のファンには刺さるだろう。 - Rio by Duran Duran
洗練されたサウンドとキャッチーなメロディが特徴の『Rio』は、『Kick』と同様にファンキーでダンサブルな要素が魅力。ポップでありながら、感情の深みも感じさせる一枚。 - The Joshua Tree by U2
1987年リリースで、壮大なサウンドスケープと感情的な歌詞が際立つアルバム。INXSの「Never Tear Us Apart」などのバラードファンにおすすめの、エモーショナルな作品。 - Listen Like Thieves by INXS
『Kick』の前作であり、INXSのファンクロックスタイルがさらに深まった作品。ハードなギターリフとグルーヴィーなリズムが『Kick』と共通しており、ファンには見逃せない一枚。 - Synchronicity by The Police
ファンク、ロック、ニュー・ウェイヴの要素が混ざり合ったサウンドが、『Kick』と似た要素を持っている。特に「Every Breath You Take」のようなエモーショナルな楽曲が、INXSファンに響くはずだ。
コメント