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ジャングル・ポップを知るなら、まず代表曲から
ジャングル・ポップは、きらびやかに鳴るギターと親しみやすいメロディを軸にしたポップ/ロックのスタイルである。英語では「Jangle Pop」と呼ばれ、ここでいう「jangle」とは、クリーンなギターが高音域で鳴る、鈴のような響きを表している。
その源流として重要なのが1960年代のThe Byrdsであり、1980年代になるとR.E.M.を筆頭とするアメリカのカレッジ・ロックや、The Smithsなどの英国インディーへとその感覚が受け継がれた。その後もThe La’s、The Sundays、Teenage Fanclub、さらに現代のインディー・ポップまで影響を確認できる。
ジャンルの特徴をつかむなら、まず時代の異なる代表曲を聴き比べるのがわかりやすい。12弦ギターの響き、アルペジオ、簡潔なバンドアレンジ、そしてギターに負けないメロディの強さに注目すると、ジャングル・ポップならではの魅力が見えてくる。
ジャングル・ポップとはどんなジャンルか
ジャングル・ポップの重要なルーツは、1960年代のフォークロックにある。特にRoger McGuinnがThe Byrdsで鳴らしたRickenbackerの12弦エレクトリックギターは、後のジャングル・ポップにとって一つの原型となった。
1970年代にはBig Starなどが、ギターの響きと優れたメロディを組み合わせた作品を残す。そして1980年代前半、R.E.M.をはじめとするアメリカのインディー/カレッジ・ロック周辺で、1960年代的なギターサウンドが新しい形で復活した。
特徴は必ずしも12弦ギターだけではない。クリーントーンのエレクトリックギター、コードを分散して弾くアルペジオ、高音域を生かしたコードストロークなどによって、「ジャングリー」と形容される響きを作ることが重要である。
パワーポップやインディー・ポップ、ネオアコ、フォークロックとも境界を共有しており、厳密な分類よりもギターの音色とメロディを手掛かりに聴くと理解しやすい。
ジャングル・ポップの代表曲10選
1. Mr. Tambourine Man by The Byrds
1965年にThe Byrdsが発表した「Mr. Tambourine Man」は、ジャングル・ポップのルーツを知るうえで最初に聴きたい一曲である。Bob Dylanの楽曲を大胆にアレンジし、フォークとロックを結びつけた。
最大のポイントはRoger McGuinnによるRickenbacker 12弦ギターである。高音域の倍音を豊かに含んだコードが鳴ることで、通常の6弦ギターとは異なるきらびやかな音色が生まれている。
後のR.E.M.をはじめ、多数のインディー・ロック・バンドへつながるギターサウンドの原型として聴くことができる。
2. September Gurls by Big Star
Big Starが1974年のアルバム『Radio City』で発表した「September Gurls」は、1970年代から1980年代以降のギター・ポップをつなぐ重要曲である。
Alex Chiltonを中心とするBig Starは、The BeatlesやThe Byrdsなどから受け継いだメロディ感覚を、より乾いたギターサウンドと組み合わせた。商業的には活動当時に巨大な成功を収めたバンドではなかったが、後のパワーポップやインディー・ロックへの影響は大きい。
「September Gurls」は短い演奏時間の中にギターの響きと強いメロディが凝縮されている。ジャングル・ポップとパワーポップの接点を知るのにも適した曲である。
3. Radio Free Europe by R.E.M.
R.E.M.の「Radio Free Europe」は1981年に最初のシングル版が発表され、1983年のデビューアルバム『Murmur』には再録音されたバージョンが収録された。1980年代ジャングル・ポップの成立を考えるうえで欠かせない一曲である。
Peter Buckのギターは、強く歪ませるのではなく、コードやアルペジオを細かく鳴らすことで楽曲を前へ進める。Mike MillsのベースとBill Berryのドラムもよく動き、Michael Stipeのボーカルと組み合わさることで独特のバンドサウンドを作っている。
1960年代のギターサウンドをそのまま再現するのではなく、ポストパンク以降の感覚で更新している点が重要である。
4. This Charming Man by The Smiths
The Smithsが1983年に発表した「This Charming Man」は、Johnny Marrのギタープレイを象徴する代表曲である。
単純なコードストロークだけではなく、細かなフレーズやコードの構成音を組み合わせることで、複数のギターが同時に鳴っているような豊かな響きを作っている。そこへAndy Rourkeの動きのあるベースとMorrisseyの個性的なボーカルが加わる。
ジャングル・ポップを「12弦ギターのジャンル」と限定せず、クリーンなギターによるアンサンブルの魅力として理解するためにも適した一曲である。
5. Streets of Your Town by The Go-Betweens
オーストラリアのThe Go-Betweensが1988年の『16 Lovers Lane』で発表した「Streets of Your Town」は、メロディアスなジャングル・ポップを代表する楽曲の一つである。
軽快なギターと穏やかなボーカルによって非常に親しみやすいサウンドを作っているが、単純に明るいだけではない。The Go-Betweensは文学的なソングライティングでも評価されており、ポップな曲調と歌詞の感触に微妙な距離があることも特徴である。
R.E.M.やThe Smithsより柔らかなギターポップを求める人にも聴きやすい。
6. Under the Milky Way by The Church
オーストラリアのThe Churchが1988年に発表した「Under the Milky Way」は、ジャングル・ポップとサイケデリックな音響が交差する一曲である。
The Churchは複数のギターを重ねた立体的なサウンドを得意とするバンドで、この曲では比較的ゆったりしたテンポの中で、ギターの響きそのものを楽しめる。
R.E.M.のような軽快なジャングル・ポップとは異なり、音の広がりを重視している点が特徴だ。ジャングル・ポップからドリームポップやネオ・サイケデリアへ進む入口としても聴ける。
7. There She Goes by The La’s
The La’sの「There She Goes」は1988年に最初に発表され、その後再録音を経て1990年のアルバム『The La’s』にも収録された。英国ギターポップを代表する楽曲として広く知られている。
イントロから鳴るギターフレーズは非常に簡潔だが、一度聴けば覚えやすい。楽曲全体もコンパクトで、複雑なアレンジを使わずにギターとメロディの組み合わせを最大限に生かしている。
1960年代のThe ByrdsやThe Beatlesに通じるポップ感覚と、後のブリットポップにつながる英国ギターロックの感覚を同時に味わえる。初心者にも特におすすめしやすい一曲である。
8. Here’s Where the Story Ends by The Sundays
The Sundaysが1990年のデビューアルバム『Reading, Writing and Arithmetic』で発表した「Here’s Where the Story Ends」は、繊細なギターサウンドを持つジャングル・ポップの代表例である。
David GavurinのクリーンなギターとHarriet Wheelerのボーカルが中心となり、音数を過剰に増やすことなく軽やかなアンサンブルを作っている。
The Smithsのギターワークが好きな人にも入りやすい一方、より柔らかく透明度の高いサウンドを持つ。1990年代のインディー・ポップやドリームポップへつながる感覚も確認できる曲である。
9. Sparky’s Dream by Teenage Fanclub
スコットランドのTeenage Fanclubが1995年の『Grand Prix』で発表した「Sparky’s Dream」は、ジャングル・ポップとパワーポップの魅力をまとめて楽しめる楽曲である。
ギターは明るく鳴りながらも過剰に歪まず、そこへ明快なメロディとコーラスが重なる。Teenage FanclubはBig Starからの影響でも知られ、1970年代のギターポップを1990年代のインディー・ロックへ接続した重要な存在である。
ギターサウンドだけでなく、歌えるメロディこそジャングル・ポップの大きな魅力だと理解できる一曲である。
10. Archie, Marry Me by Alvvays
カナダのAlvvaysが2014年に発表した「Archie, Marry Me」は、ジャングル・ポップの方法論が現代のインディー・ポップにも受け継がれていることを示す楽曲である。
Molly Rankinのメロディアスなボーカルを中心に、ギターを幾重にも重ねたサウンドを展開する。1980年代のジャングル・ポップより音の密度は高いものの、ギターの響きとポップなメロディを中心に据える基本的な発想は共通している。
The ByrdsからR.E.M.、The Smithsを経て続いてきたギター・ポップの系譜を、21世紀のインディー音楽までつなげて聴くための一曲である。
初心者におすすめの3曲
最初の3曲なら、The Byrds「Mr. Tambourine Man」、R.E.M.「Radio Free Europe」、The La’s「There She Goes」がわかりやすい。
「Mr. Tambourine Man」は、このジャンルの核となる12弦ギターの響きを理解するための出発点である。イントロからギターの音色そのものに注目すると、後のジャングル・ポップへ何が受け継がれたのかが見えてくる。
次に「Radio Free Europe」を聴けば、そのサウンドが1980年代のインディー・ロックによってどう更新されたのかがわかる。さらに「There She Goes」へ進めば、ジャングリーなギターと優れたメロディの組み合わせが、非常にシンプルなポップソングとしても成立することを体験できる。
この3曲を年代順に聴くだけでも、1960年代のフォークロックから1980年代のカレッジ・ロック、1990年代のギターポップへ続く大まかな流れをつかめる。
関連ジャンルへの広がり
ジャングル・ポップと特に関係が深いのがインディー・ポップである。1980年代以降、クリーンなギターと簡潔なメロディを重視するスタイルは各地のインディーシーンへ広がった。The Sundaysや後のAlvvaysなどを聴けば、その連続性を理解しやすい。
一方、より強いギターとコーラスを求めるならパワーポップへ進むとよい。Big StarやTeenage Fanclubは両方の文脈で語りやすく、ジャングリーなギターと力強いポップメロディが自然に結びついている。
さらにThe Churchの音響的なギターが気に入ったならネオ・サイケデリアやドリームポップ、The Smithsのような英国勢から広げるならネオアコや1980年代のインディー・ポップにも接続できる。ジャングル・ポップは、ギターを中心としたさまざまなポップ/ロックを横断する重要なスタイルなのである。
まとめ
ジャングル・ポップの魅力は、派手なギターソロや強烈なディストーションではなく、ギターの「鳴り」そのものをポップソングのフックとして利用するところにある。
The Byrdsの「Mr. Tambourine Man」で確立された12弦ギターのきらびやかな響きは、Big Starを経て、1980年代のR.E.M.やThe Smithsなどによって新しいインディー・ロックの文脈へ取り込まれた。その感覚はThe Go-BetweensやThe Sundays、Teenage Fanclub、Alvvaysといった後続世代にも見つけることができる。
まずは「Mr. Tambourine Man」「Radio Free Europe」「There She Goes」の3曲から始め、ギターの音色とメロディのどちらに惹かれるかを意識して聴くとよい。そこからインディー・ポップ、パワーポップ、ネオアコ、ドリームポップへ広げていけば、ジャングル・ポップがギター中心のポップミュージックに与えてきた影響も見えやすくなるのである。

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