アルバムレビュー:High Road by Kesha

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年1月31日

ジャンル:ポップ、ダンス・ポップ、エレクトロ・ポップ、カントリー・ポップ、ポップ・ラップ、グラム・ポップ

概要

Keshaの4作目のスタジオ・アルバム『High Road』は、2017年の前作『Rainbow』で示した自己回復とシンガーソングライター的な成熟を踏まえつつ、初期のパーティー・ポップの奔放さを再び取り込んだ作品である。Keshaは2009年のシングル「Tik Tok」によって一気に世界的なポップ・スターとなり、デビュー作『Animal』では、エレクトロ・ポップ、ダンス・ポップ、ラップ調の歌唱、派手なクラブ・サウンドを組み合わせた、2000年代末から2010年代初頭のポップを象徴する存在となった。その後の『Warrior』でも、グラム・ロック、EDM、ポップ・パンク的な勢いを取り込み、享楽的で反抗的なポップ・スター像をさらに拡張した。

しかし、Keshaのキャリアは単なるパーティー・ポップの成功だけでは語れない。長い法的・個人的な困難を経て発表された『Rainbow』は、彼女が自身の痛み、怒り、回復、自己尊重を歌に変換した作品であり、アーティストとしての評価を大きく変えた。特に「Praying」は、Keshaの歌唱力と精神的な強さを示す楽曲として広く受け止められた。『Rainbow』は、初期の派手なイメージの裏にいたソングライター、ボーカリスト、サバイバーとしてのKeshaを前面に出したアルバムだった。

『High Road』は、その『Rainbow』の後に発表された作品であり、Keshaが「癒やされた後にどう生きるのか」を問うアルバムだといえる。前作が痛みからの再生を強く打ち出した作品だったのに対し、本作では、回復した人間が再び楽しむこと、ふざけること、踊ること、欲望すること、自分の過去のキャラクターも否定せず引き受けることがテーマになっている。タイトルの「High Road」は「高い道」「道徳的に上位の立場を取ること」という意味を持つが、同時にKeshaらしい言葉遊びとして、少し不良っぽく、自由で、ユーモラスな響きも含んでいる。

音楽的には、『High Road』は非常に多彩である。初期Keshaを思わせるエレクトロ・ポップやパーティー・ラップ、カントリー・ポップ、ゴスペル風のコーラス、バラード、グラム・ロック的な派手さ、ヒップホップ由来のリズムが混在している。アルバム全体は一枚岩のコンセプト作品というより、Keshaという人物の複数の面を並べたコラージュに近い。ふざけた曲、傷ついた曲、開き直った曲、家族や友情を扱う曲、神聖さと下品さが隣り合う曲が共存している。

この雑多さは、Keshaの本質と深く結びついている。彼女は最初から、清潔で整ったポップ・スターではなかった。ラメ、酒、クラブ、動物的な衝動、反抗、ユーモア、下品さ、そして意外なほど真摯な感情が混ざり合う存在だった。『High Road』は、その初期のキャラクターを単純に復活させるのではなく、『Rainbow』を経た後の自己認識を加えた形で再構成している。つまり本作は、初期のKeshaと成熟したKeshaの対話である。

歌詞面では、自己肯定、解放、過去との和解、傷ついた後の楽しさ、恋愛と欲望、家族愛、友情、精神的なサバイバルが中心にある。Keshaはここで、深刻さだけが真実ではないことを示している。痛みを経験した人間が、再びくだらない冗談を言い、パーティーをし、派手な服を着て、自分を祝福することもまた回復の一部である。『High Road』は、その意味で非常にKeshaらしいアルバムである。涙とラメ、祈りと悪ふざけ、カントリーとクラブ・ビートが同じ場所に置かれている。

キャリア上の位置づけとして、『High Road』はKeshaの中間的な作品である。『Animal』や『Warrior』のような初期の爆発的なポップ性と、『Rainbow』の成熟した自己表現の間に立ち、その両方を結びつけようとしている。完全に統一された名盤というより、Keshaが自分のすべての側面を取り戻そうとするアルバムであり、その不均一さも含めて意味を持つ作品である。

全曲レビュー

1. Tonight

オープニング曲「Tonight」は、『High Road』の方向性を強く示す楽曲である。曲は静かな導入から始まり、次第に初期Keshaを思わせるクラブ・ポップへ展開していく。冒頭には少し感傷的な空気もあるが、すぐにパーティーの熱量へ変わる構成になっており、過去の痛みを抱えながらも夜へ飛び込むという、本作全体の姿勢が表れている。

歌詞では、夜を楽しむこと、仲間と集まること、現実の重さを一時的に振り払うことが描かれる。ここでのパーティーは単なる現実逃避ではない。『Rainbow』を経たKeshaにとって、再び騒ぎ、踊り、笑うことは、自分の人生を取り戻す行為でもある。つまり「Tonight」は、初期の享楽的なKeshaに戻った曲であると同時に、その享楽が以前とは違う意味を持っている曲でもある。

サウンドは、エレクトロ・ポップの派手さ、ラップ調のボーカル、合唱的な高揚感を組み合わせている。Keshaの声は、きれいに整えられたポップ・ボーカルというより、少し荒く、会話的で、仲間を巻き込むような力を持つ。この曲は、アルバムの幕開けとして「Keshaは再び楽しむことを選んだ」と宣言している。

2. My Own Dance

「My Own Dance」は、『High Road』の中でも特に重要な自己宣言の曲である。タイトルの通り、ここでは「自分の踊り」を踊ること、つまり他者の期待や過去のイメージに従わず、自分のやり方で生きることがテーマになっている。前作『Rainbow』でシリアスなアーティストとして再評価されたKeshaが、今度は「真面目な自分だけを求めないでほしい」と言っているような曲である。

音楽的には、ヒップホップ的なビート、エレクトロ・ポップの鋭い処理、挑発的なボーカルが組み合わされている。サビは非常にキャッチーだが、曲全体には皮肉と反抗のトーンがある。Keshaは、リスナーや業界が自分に求める役割を拒否し、自分の中にある複数の人格をそのまま提示する。

歌詞では、かつてのパーティー・ガール像、回復したサバイバー像、成熟したシンガー像など、周囲がKeshaに押しつけるイメージが問題になっている。彼女はそのどれか一つに閉じ込められることを拒む。ふざけることも、怒ることも、傷つくことも、踊ることも、すべて自分の一部である。「My Own Dance」は、本作の主題である自己統合を最も明確に表現した楽曲である。

3. Raising Hell feat. Big Freedia

「Raising Hell」は、Big Freediaを迎えたゴスペル風の高揚感とクラブ・ミュージックの祝祭性が融合した楽曲である。タイトルは「騒ぎを起こす」「大暴れする」という意味を持つが、同時に宗教的な言葉遊びも含んでいる。罪深い楽しさと神聖な祝福が同時に鳴っているところが、Keshaらしい。

サウンド面では、教会的なコーラス、弾むビート、クラブ向けの低音が組み合わされている。Big Freediaの参加によって、ニューオーリンズ・バウンスのエネルギーも加わり、曲全体が非常に開放的な祝祭空間になっている。Keshaの声は、説教師のようでもあり、パーティーの司会者のようでもある。

歌詞では、完璧な善人ではない自分を肯定する姿勢が示される。人は罪を犯し、失敗し、夜遊びをし、騒ぎを起こす。それでも祈ることもできるし、救われる価値もある。この曲は、道徳的な清潔さではなく、人間の矛盾をまるごと抱きしめる。『High Road』における「高い道」は、禁欲的な正しさではなく、自分の混沌を笑いながら引き受ける道なのだと示している。

4. High Road

表題曲「High Road」は、アルバムのタイトルを担う楽曲であり、本作のユーモアと自己肯定を象徴している。曲調は軽快で、ラップ調のボーカルやポップなフックを含み、Keshaの遊び心が強く表れている。ここでは、他者からの批判や攻撃に対して、自分は「高い道」を行くという姿勢が歌われるが、その語り口は決して堅苦しくない。

歌詞では、嫌な相手に対して直接的に応酬するのではなく、自分の人生を楽しむことで勝つという態度が示される。これは単なる優等生的な道徳ではなく、Keshaらしい皮肉を含んだ自己防衛である。攻撃されたからといって同じ土俵に下りるのではなく、もっと派手に、もっと自由に、もっと自分らしく生きる。その姿勢が「High Road」という言葉に込められている。

音楽的には、初期Keshaのポップ・ラップの要素が戻ってきている。言葉のリズム、軽い挑発、派手な態度が曲を動かしている。『Rainbow』の後にこの曲を聴くと、Keshaが真面目なシンガーソングライターとしてだけではなく、悪ふざけのポップ・スターとしての自分も取り戻したことが分かる。

5. Shadow

「Shadow」は、アルバム前半の中で比較的シリアスな感情を持つ楽曲である。タイトルの「影」は、自分につきまとう批判、過去の痛み、あるいは他者のネガティヴな視線を象徴している。Keshaはここで、自分の光を遮ろうとする存在に対して、静かだが確かな拒絶を示す。

サウンドは、ダンス・ポップの派手さを抑え、メロディとボーカルを前面に出している。曲には少しカントリー・ポップ的な温かさもあり、『Rainbow』で見せた叙情的な側面に近い。Keshaの声は、強く叫ぶというより、感情を丁寧に積み上げるように響く。

歌詞では、誰かの影に自分の人生を覆われることを拒む姿勢が描かれる。過去の傷や他者の悪意は、簡単には消えない。しかし、それに自分の未来まで支配させる必要はない。「Shadow」は、『High Road』の中で、パーティー的な解放の裏側にある精神的な闘いを思い出させる曲である。明るく騒ぐことだけでなく、自分を暗くするものから距離を取ることも、回復の一部である。

6. Honey

「Honey」は、Keshaらしい語り口と皮肉が表れた楽曲である。タイトルは甘さや親密さを連想させるが、曲の内容には友情や人間関係の裏切りへの視線が含まれている。甘い言葉の裏にある不誠実さ、表面的な親しさの危うさがテーマになっている。

音楽的には、軽いグルーヴと会話的なボーカルが中心で、ポップ・ソングとして聴きやすい。Keshaは感情を大きく歌い上げるのではなく、語るように、時にからかうように言葉を置いていく。この話し言葉に近い感覚は、彼女の初期作品から続く重要な個性である。

歌詞では、親しいはずの相手に対する不信や、裏で何かをされたことへの苛立ちが描かれる。ただし、曲は重い復讐心に沈むのではなく、どこか軽やかに相手を突き放す。Keshaの魅力は、痛みを完全に隠すのではなく、それをジョークや皮肉に変えるところにある。「Honey」は、その会話的な毒が効いた楽曲である。

7. Cowboy Blues

「Cowboy Blues」は、『High Road』の中でも特にカントリー的な色彩が強い楽曲である。Keshaは『Rainbow』でもカントリー、ロック、アメリカーナへの接近を見せていたが、この曲ではその要素がより親密な形で表れている。タイトルの「Cowboy Blues」は、アメリカ的な孤独、旅、恋、自由への憧れを連想させる。

サウンドは比較的シンプルで、アコースティックな響きと温かいメロディが中心になる。派手なクラブ・ビートから離れ、Keshaの声と歌詞が前面に出る。彼女の声には少しざらつきがあり、その質感がカントリー的な語り口とよく合っている。

歌詞では、偶然の出会いや恋愛への妄想、運命的な相手を求める気持ちが描かれる。Keshaはしばしば派手で破天荒なイメージを持たれるが、この曲ではロマンティックで少し不器用な人物像が見える。カウボーイというイメージは、自由で孤独な存在であり、彼女自身の放浪的なポップ・スター像とも重なる。「Cowboy Blues」は、本作の中でKeshaの素朴で物語的な側面を示す曲である。

8. Resentment feat. Sturgill Simpson, Brian Wilson & Wrabel

「Resentment」は、アルバムの中でも最も成熟した楽曲のひとつである。Sturgill Simpson、Brian Wilson、Wrabelという異なる背景を持つアーティストが参加しており、カントリー、ポップ、ハーモニー、シンガーソングライター的な感性が交わっている。タイトルの「Resentment」は「恨み」「憤り」を意味し、関係の中で蓄積する静かな怒りを扱っている。

サウンドは穏やかで、美しいハーモニーとアコースティックな質感が中心である。しかし、歌詞の内容は非常に苦い。大きな喧嘩や劇的な破局よりも、長い時間をかけて心の中に溜まっていく不満が描かれる。これは非常に現実的な感情であり、ポップ・ソングではしばしば見落とされがちなテーマである。

Keshaの歌唱は抑制されており、感情を爆発させるのではなく、諦めと怒りの間にある声で歌う。Brian Wilsonの存在は、曲に美しい陰影を加えている。The Beach Boys的なハーモニーの美しさと、関係の中の苦い感情が重なることで、「Resentment」は非常に複雑な余韻を持つ楽曲になっている。『High Road』の中で、Keshaのソングライターとしての成熟を最もよく示す曲のひとつである。

9. Little Bit of Love

「Little Bit of Love」は、アルバムの中でも明るく、親しみやすいポップ・ソングである。タイトル通り、少しの愛を求めるシンプルな感情が中心にある。『High Road』には派手な自己肯定や皮肉な曲も多いが、この曲では、より素直な愛情への欲求が描かれている。

サウンドは軽快で、ポップ・ロックやダンス・ポップの要素を含みながら、過度に重くならない。Keshaのボーカルも明るく、聴き手に開かれている。曲全体には、アルバムの中盤を軽くする役割がある。

歌詞では、相手からの愛情や関心を求める気持ちが歌われる。ただし、それは大げさな永遠の愛ではなく、ほんの少しの愛、少しの優しさで十分だという感覚である。この控えめな願いは、Keshaの派手なイメージとは対照的だが、彼女の音楽にある人間的な温かさを示している。「Little Bit of Love」は、軽やかな曲調の中に、素朴な孤独を忍ばせた楽曲である。

10. Birthday Suit

「Birthday Suit」は、Keshaのユーモアとセクシュアリティが前面に出た楽曲である。タイトルの「birthday suit」は裸を意味する俗語であり、曲全体にも遊び心と挑発が満ちている。『High Road』の中でも、初期Keshaの悪ふざけ精神に最も近い曲のひとつである。

音楽的には、軽いエレクトロ・ポップのビートと、コミカルなボーカル処理が特徴である。曲は洗練されたバラードではなく、あえて少しチープで楽しい質感を持っている。このチープさは弱点ではなく、Keshaのポップ・アート的な魅力の一部である。彼女は高尚さだけを目指すのではなく、下品さやくだらなさを堂々とポップに変える。

歌詞では、性的な欲望が軽い冗談のように表現される。Keshaにとってセクシュアリティは、しばしば笑いと結びついている。深刻な官能ではなく、身体を使った遊び、自己演出、自由の表現として提示される。「Birthday Suit」は、『High Road』が真面目な回復アルバムではなく、ふざける権利を取り戻すアルバムでもあることを示している。

11. Kinky feat. Ke$ha

「Kinky」は、Keshaが過去の表記であるKe$haをフィーチャーするという、非常に象徴的な楽曲である。これは単なる冗談ではなく、初期のパーティー・ガール的な自分と、現在のKeshaが共演するという自己対話のような構造になっている。アルバム全体のテーマである「過去の自分を否定せず統合する」姿勢が、最も分かりやすく表れた曲である。

サウンドは、エレクトロ・ポップとポップ・ラップの要素が強く、挑発的で遊び心に満ちている。声の使い分けや言葉のリズムも含めて、Keshaは自分のキャラクターを意識的に演じている。かつてのKe$haは、メディアによってしばしば浅薄なパーティー・キャラクターとして扱われたが、この曲では彼女自身がそのキャラクターを取り戻し、自分の側から再定義している。

歌詞では、性的な自由、関係のルール、欲望への好奇心が描かれる。重要なのは、ここでの奔放さが他者に消費されるためではなく、自分の楽しみとして提示されている点である。「Kinky」は、Keshaが過去のイメージを恥じるのではなく、それを現在の自己表現の一部として使い直す曲であり、本作のコンセプト上きわめて重要である。

12. Potato Song(Cuz I Want To)

「Potato Song(Cuz I Want To)」は、アルバムの中でも最も奇妙で、子どもの歌のような素朴さを持つ楽曲である。タイトルからして意図的に脱力しており、Keshaのユーモアと自由さが表れている。一見すると軽いノベルティ・ソングのようだが、そこには「自分がしたいからする」という本作の根本的なテーマが込められている。

音楽的には、フォーク的で素朴な響きがあり、派手なポップ・プロダクションから離れている。メロディはシンプルで、子どもっぽい無邪気さを持つ。Keshaはここで、完成度の高さやクールさよりも、自由に歌うことの楽しさを優先している。

歌詞では、社会的な成功や洗練された生き方ではなく、もっと単純で楽しい生活への憧れが描かれる。じゃがいもを育てるような素朴なイメージは、ポップ・スターの華やかな世界とは正反対である。しかし、その素朴さは、過剰な期待やプレッシャーから離れ、自分の好きなように生きたいという願望につながっている。「Potato Song」は、Keshaの自由への希求を、最も脱力した形で表現した楽曲である。

13. BFF feat. Wrabel

「BFF」は、Wrabelを迎えた友情の歌であり、アルバムの中でも温かい感情が強く表れた楽曲である。タイトルは「Best Friends Forever」の略で、恋愛ではなく、人生を支えてくれる友人との絆が中心になっている。Keshaの作品では、パーティーや恋愛だけでなく、仲間とのつながりも重要なテーマである。

サウンドは穏やかで、アコースティックな質感とポップなメロディが中心になっている。Wrabelの声はKeshaの声と柔らかく重なり、曲に親密な雰囲気を与えている。派手な曲ではないが、アルバムの中で感情的な安定をもたらす重要な役割を持つ。

歌詞では、長く続く友情への感謝が素直に歌われる。恋愛関係はしばしば壊れやすく、激しい感情を伴うが、友人との関係は別の形で人生を支える。「BFF」は、Keshaが一人で戦ってきたアーティストではなく、周囲の人々との絆によって支えられていることを感じさせる曲である。『High Road』の中で、もっとも優しく人間的な楽曲のひとつである。

14. Father Daughter Dance

「Father Daughter Dance」は、本作の中でも特に私的で感情的な楽曲である。タイトルは、結婚式などで父と娘が踊る場面を連想させるが、Keshaにとって父親との関係は複雑な意味を持つ。この曲では、欠落、家族、成長、叶わなかった瞬間への思いが描かれている。

音楽的には、ピアノを中心としたバラードであり、Keshaの声が非常に近くに響く。派手な加工やビートは控えめで、歌詞の重みが前面に出る。彼女の歌唱には、強がりではない脆さがあり、『Rainbow』で見せた真摯な表現に近い。

歌詞では、父親と娘の間にある不在や、経験できなかった親密な瞬間への悲しみが描かれる。Keshaのパブリック・イメージには派手さやユーモアが強いが、この曲では、家族の欠落を抱えて生きる一人の人間としての姿が現れる。アルバムの中でこの曲が持つ意味は大きく、Keshaの表現が単なるパーティーや自己肯定に留まらないことを示している。

15. Chasing Thunder

「Chasing Thunder」は、自由、移動、衝動をテーマにした楽曲である。タイトルの「雷を追いかける」という表現は、危険で、つかまえられないものを求める姿を象徴している。Keshaの音楽には、常に自由への強い欲望があるが、この曲ではそれがロード・ソング的な感覚で描かれている。

サウンドは、ポップ・ロックとカントリー・ポップの要素を含み、広い風景を感じさせる。ビートは前へ進む感覚を持ち、メロディには開放感がある。Keshaの声は力強く、アルバム終盤に向けて再び外へ向かうエネルギーを生み出している。

歌詞では、安定よりも自由、予測可能な幸福よりも未知の刺激を求める姿勢が描かれる。雷は美しく、激しく、危険で、すぐに消える。そのようなものを追いかけることは、Keshaのアーティスト像そのものにも重なる。彼女は整った安全な道よりも、少し危険で派手で、自分らしい道を選ぶ。「Chasing Thunder」は、その放浪的な精神を表現した楽曲である。

16. Summer

クロージング曲「Summer」は、アルバムの最後に置かれた軽やかで少しノスタルジックな楽曲である。タイトルの「夏」は、若さ、自由、恋、記憶、終わりの予感を含む季節であり、Keshaの作品にある解放感と相性が良い。アルバム全体の騒がしさや感情の揺れを経た後、この曲は比較的穏やかな余韻を残す。

音楽的には、明るく開放的なポップ・サウンドを持ちながら、どこか過ぎ去った時間を振り返るような感覚もある。大きなフィナーレというより、仲間と過ごした夜が終わり、朝の光が差してくるような締めくくりである。

歌詞では、夏の記憶や自由な時間への思いが描かれる。Keshaにとって、楽しさは単なる消費ではなく、生き延びた後に取り戻すべきものでもある。この曲がアルバムの最後に置かれることで、『High Road』は痛みや怒りではなく、軽やかな記憶と解放感で閉じられる。完全な解決ではないが、少なくとも自分の人生を再び楽しむ場所へ戻ってきたという感覚が残る。

総評

『High Road』は、Keshaのキャリアにおいて、過去と現在を結び直すアルバムである。『Rainbow』が痛みからの回復と尊厳の回復を描いた作品だったとすれば、『High Road』はその後に「もう一度楽しむこと」を取り戻す作品である。ここでの楽しさは、浅さや逃避ではない。傷ついた経験を持つ人間が、それでも笑い、踊り、ふざけ、欲望し、友情を祝い、家族の痛みを歌う。そのすべてを同じアルバムに入れていることが、本作の特徴である。

本作は非常に雑多なアルバムである。エレクトロ・ポップ、カントリー・ポップ、バラード、ポップ・ラップ、ゴスペル風の祝祭、脱力したフォーク調の曲が並び、統一感という点では『Rainbow』ほど明確ではない。しかし、その雑多さはKeshaというアーティストの複雑さを反映している。彼女はシリアスなサバイバーであると同時に、悪ふざけを愛するポップ・スターでもある。美しいバラードを歌える一方で、くだらない下ネタも堂々と歌う。その両方を引き受けることが、『High Road』の核心である。

特に重要なのは、「My Own Dance」と「Kinky」である。この2曲は、Keshaが他者の期待から自由になろうとする姿勢を明確に示している。『Rainbow』以降、彼女には「真面目で感動的な歌を歌うアーティスト」としての期待も強まった。しかしKeshaは、その役割だけに閉じ込められることを拒む。初期のKe$haもまた自分の一部であり、パーティー・ポップも、冗談も、セクシュアルな遊びも、彼女の表現から切り離されるべきではない。本作は、その自己回収のプロセスとして聴くことができる。

一方で、「Resentment」「Shadow」「Father Daughter Dance」のような曲は、Keshaの成熟したソングライティングを示している。特に「Resentment」は、関係の中で静かに溜まる怒りを描いた優れた楽曲であり、参加アーティストの声も含めて深い余韻を持つ。「Father Daughter Dance」は、派手なKesha像の裏にある家族的な欠落と脆さを浮かび上がらせる。こうした曲があることで、『High Road』は単なる初期路線への回帰ではなく、『Rainbow』以降の内面的な深みを保った作品になっている。

音楽的には、アルバムの振れ幅が大きいため、曲ごとの完成度には差がある。まとまりのあるポップ・アルバムとしては散漫に感じられる部分もある。しかし、Keshaの魅力は常に、整然とした美しさよりも、混沌とした生命力にあった。『High Road』では、その混沌が意識的に前面へ出されている。洗練された一枚というより、Keshaという人物の部屋を開け放ち、そこにあるラメ、涙、酒、祈り、家族写真、冗談、怒り、友情をすべて見せるようなアルバムである。

『High Road』は、ポップ・スターが自分のイメージを再び所有し直す作品でもある。初期のKeshaは、しばしばパーティー・ガールとして単純化されてきた。しかし本作では、彼女自身がそのイメージを取り戻し、現在の視点から再演している。これは過去への後退ではなく、過去の自分を恥じずに抱きしめる行為である。痛みを経験した後に、かつての自分の明るさや馬鹿馬鹿しさを再び許すこと。それは非常に重要な回復の形である。

日本のリスナーにとって『High Road』は、Keshaを「Tik Tok」のイメージだけで知っている場合にも、『Rainbow』のシリアスな印象から入った場合にも、彼女の両面を理解するためのアルバムとして聴く価値がある。初期のクラブ・ポップの派手さ、カントリー寄りの叙情性、自己肯定のメッセージ、ふざけたユーモアが同居しており、Keshaというアーティストの多面性がよく表れている。

『High Road』は、完璧に整った名盤というより、Keshaが自分自身のすべてを取り戻そうとする過程の記録である。傷ついた後でも、笑ってよい。真面目になった後でも、ふざけてよい。過去の自分を捨てなくてもよい。その開放的なメッセージが、本作の最も大きな魅力である。

おすすめアルバム

1. Kesha『Rainbow』

2017年発表の前作で、Keshaのキャリアにおける最重要作のひとつ。カントリー、ロック、ポップ、ゴスペル的な要素を取り入れながら、痛み、回復、自己尊重をテーマにした作品である。『High Road』の背景にある精神的な再生を理解するために欠かせないアルバムである。

2. Kesha『Animal』

2010年発表のデビュー・アルバム。エレクトロ・ポップ、ダンス・ポップ、パーティー・ラップを組み合わせ、初期Keshaのイメージを決定づけた作品である。『High Road』で再び現れるKe$ha的な悪ふざけやクラブ感覚の原点を知ることができる。

3. Miley Cyrus『Plastic Hearts』

2020年発表のアルバムで、ポップ・スターがロック、グラム、カントリー、自己表現を組み合わせて過去のイメージを更新した作品である。Keshaの『High Road』と同様に、派手さと傷、ユーモアと真剣さが共存している。女性ポップ・スターの再定義という点で関連性が高い。

4. Lady Gaga『Joanne』

2016年発表のアルバム。ダンス・ポップの大スターが、カントリー、ロック、アメリカーナ的な要素を取り入れ、より個人的な表現へ向かった作品である。『High Road』のカントリー・ポップ的な側面や、派手なポップ・スターが素朴な音楽性へ接近する流れを理解するうえで比較しやすい。

5. P!nk『Funhouse』

2008年発表のポップ・ロック作品。失恋、怒り、ユーモア、自己肯定を力強いポップ・ソングに変換しており、Keshaの持つ反抗心や傷ついた後の明るさと共鳴する。『High Road』の感情の振れ幅や、強さと脆さを同時に見せるポップ表現に関心があるリスナーに適している。

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