
1. 曲の概要
“Hideaway“は、1966年にリリースされたアルバム『Blues Breakers with Eric Clapton』に収録されているインストゥルメンタル・ナンバーであり、ブルース・ロック・ギターの教科書的存在として語り継がれる名演です。
この曲は、**シカゴ・ブルースの伝説的ギタリスト、フレディ・キング(Freddie King)**が1960年に発表したインストゥルメンタル楽曲のカバーで、元はロックンロールとジャンプ・ブルースの中間のようなスタイルを持つ作品でした。
ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズによるバージョンでは、当時若干21歳のエリック・クラプトンがギターを担当し、驚異的な正確さと表現力で原曲を再構築。その演奏は後に多くのギタリストにとっての「必修課題」となり、ブリティッシュ・ブルースの象徴的楽曲となりました。
2. 楽曲の背景と構成
『Blues Breakers with Eric Clapton』は、ブリティッシュ・ブルース・ロックの出発点として評価されており、”Hideaway”はその中でも唯一のインストゥルメンタル楽曲として際立った存在です。
この曲は、フレディ・キングとサニー・トンプソンが共作したシンプルな12小節のブルース進行を基盤にしており、軽快なシャッフル・リズムと、ユーモラスかつ流麗なギターリックが魅力です。
クラプトンのバージョンでは、原曲のテーマに忠実でありながらも、テンポの変化、キーの転調、小さな即興フレーズなどが随所に盛り込まれ、ギターの技術力とセンスを存分にアピールしています。
3. 聴きどころとサウンドの特徴
✅ エリック・クラプトンの正確無比なフレージング
クラプトンはこの楽曲で、スウィートなクリーントーンとソリッドなリードプレイを見事に両立させています。特に彼のギタープレイは、チョーキング、ヴィブラート、ダブルストップ、ハンマリング/プリングなどの基本テクニックが詰まっており、ギタリストの模範演奏とも言える内容です。
✅ レスポール+マーシャルの“Beanoトーン”
このアルバムで用いられたギブソン・レスポールとマーシャル・アンプの組み合わせが生み出すサウンドは、いわゆる「Beanoトーン」と呼ばれ、後のロック・ギター・サウンドの基準となりました。甘く太い中音域と、切れの良いアタック感が”Hideaway”のドライブ感を際立たせています。
✅ 原曲への敬意と遊び心
クラプトンは、フレディ・キング版の“メインテーマ”を忠実に再現しつつ、途中で**「Day Tripper(The Beatles)」のリフ**を引用するなど、ウィットに富んだ即興性を披露しています。これによって曲全体にリラックスしたムードが生まれ、聴き手を楽しませる仕掛けになっています。
4. この曲の文化的意義と影響
“Hideaway”は、その後のギタリストにとっての“登竜門”ともいえる楽曲です。特に次のような側面で、歴史的意義があります。
- ギター・インストゥルメンタルのスタンダード化:
”Hideaway”は、ブルース/ロックにおいてインストゥルメンタル曲が持つ可能性を提示し、ライブやセッションでの定番曲となりました。 - クラプトンの名声を決定づけた:
「ギター・ゴッド」としてのエリック・クラプトンの地位は、この曲を含むアルバムによって確立されたといっても過言ではありません。 - フレディ・キング再評価の契機:
ブリティッシュ・ブルース・ムーブメントによって、アメリカのブルース・ミュージシャンたち(特にキング三兄弟:B.B.、フレディ、アルバート)が再評価される流れが強まりました。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Steppin’ Out” by John Mayall & the Bluesbreakers
- 同アルバム収録のギター・インストで、さらにアグレッシブなクラプトンが聴ける。
- “The Stumble” by Freddie King
- フレディ・キングによる名インスト。ロック・ギタリスト必聴。
- “Sleepwalk” by Santo & Johnny
- 美しいメロディが特徴のインスト曲。泣きのギターが印象的。
- “Cause We’ve Ended as Lovers” by Jeff Beck
- 言葉を使わずに感情を伝えるギターインストの極致。
- “Beck’s Bolero” by Jeff Beck
- ロックとクラシックの融合。ギターで物語を描くような楽曲。
6. 『Hideaway』のユニークな特徴
- 🎸 ギタリスト向けの“教科書”とも言える構成
- 🎛 当時最先端だったエレクトリック・ブルース・サウンド
- 🇬🇧 ブリティッシュ・ブルースの歴史を開いた実践的名演
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😎 メロディアスでテクニカル、かつ聴きやすいインストゥルメンタル
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🎶 ジャム感と構成美の両立による心地よさ
結論
“Hideaway“は、ブルース・ギターの美学を凝縮したインストゥルメンタルの金字塔であり、エリック・クラプトンのテクニックと音楽的センスが全開となった名演です。ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズによるこのカバーは、オリジナルへの敬意と革新性が見事に融合した模範的なブルース解釈と言えるでしょう。
聴けば聴くほど、シンプルな12小節の中にどれほど豊かな表現ができるのかというブルースの本質が浮かび上がってくる。そんな“音楽の愉しさ”と“職人技の結晶”が詰まった一曲です。
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