発売日: 1978年11月17日
ジャンル: ポストパンク / アートパンク / アヴァンガルドロック
Dub Housingは、ペレ・ウブのセカンドアルバムであり、ポストパンクの象徴的な作品として広く評価されている。前作The Modern Danceのエネルギッシュで鋭いサウンドを引き継ぎつつ、さらにアヴァンガルドな方向へと進化した本作は、より実験的で不穏な音楽体験を提供している。
タイトルの「Dub Housing」は、バンドが活動していたクリーブランドの「ダブハウス」と呼ばれるアパート群に由来し、その閉塞感や荒廃した都市風景がアルバムの不安定でカオスな雰囲気を象徴している。デヴィッド・トーマスの奇妙で風変わりなボーカル、不協和音のギター、ディストーションの効いたシンセサウンドが織り成すサウンドスケープは、後のポストパンクやオルタナティブロックに大きな影響を与えた。
各曲解説
1 Navvy
アルバムの幕開けを飾るアップテンポな楽曲で、歪んだギターリフとタイトなリズムセクションが印象的。デヴィッド・トーマスの独特なボーカルが聴き手を混沌の世界へ引き込む。歌詞は抽象的だが、エネルギッシュで反抗的な雰囲気が全開だ。
2 On the Surface
冷たく不穏なムードを持つ楽曲。ギターのディストーションとシンセサイザーが絡み合い、都市の荒廃を感じさせる音像を作り出している。トーマスのボーカルが繰り返すフレーズが緊張感を高めている。
3 Dub Housing
タイトル曲であり、アルバムの中でも特に印象的な一曲。不協和音とエコーを駆使したサウンドが、タイトルに込められた不安感や孤立感を表現している。ミステリアスで混沌とした雰囲気がアルバム全体のテーマを象徴している。
4 Caligari’s Mirror
ミッドテンポのリズムと独特のメロディが特徴的。タイトルは映画『カリガリ博士』への言及と思われ、不気味でサイケデリックな雰囲気が楽曲全体に漂っている。トーマスの声が不安感を増幅させている。
5 Thriller!
ノイズとエコーが絡み合う、実験的なトラック。バンドのアヴァンガルドな一面が最も顕著に表れており、ポストパンクの枠を超えた音楽的挑戦が感じられる。歌詞は不明瞭だが、その抽象性が曲の魅力をさらに深めている。
6 I Will Wait
比較的シンプルな構成を持ちながらも、反復的なギターフレーズとダークな雰囲気が強烈な印象を残す一曲。トーマスのボーカルが切迫感を与え、楽曲に緊張感を持たせている。
7 Drinking Wine Spodyody
アルバムの中で最も風変わりな楽曲。ブルースやカントリーの要素を皮肉ったような構成で、バンドのユーモアと実験精神が光る。タイトル自体が奇抜で、曲全体がアルバムの異色のアクセントとなっている。
8 Ubu Dance Party
エネルギッシュでダンサブルな楽曲。ディスコやファンクのリズムを取り入れつつも、ペレ・ウブらしいカオスとノイズが混ざり合う。ライブでも盛り上がる定番曲として知られている。
9 Blow Daddy-o
フリージャズの影響を感じさせる楽曲で、サックスの不規則なフレーズが楽曲全体を支配している。緊張感のあるサウンドが印象的で、アルバムのアヴァンガルドな方向性を象徴している。
10 Codex
アルバムのラストを飾るダークでアンビエントな楽曲。シンセサイザーと不規則なギターが絡み合い、終末的な雰囲気を作り出している。静かだが不気味な余韻を残し、アルバムを印象的に締めくくる。
アルバム総評
Dub Housingは、ペレ・ウブがポストパンクというジャンルの枠を超え、音楽的実験を大胆に追求した作品である。不協和音やノイズを巧みに活用したサウンドスケープは、当時の音楽シーンでは極めて斬新であり、現在でも多くのアーティストに影響を与えている。冷たく不安定な都市の風景を描く楽曲群は、1970年代末の社会的・文化的な緊張感を反映しており、聴く者を独自の音楽的冒険へと誘う。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Entertainment! by Gang of Four
鋭いリズムと社会的メッセージが特徴で、ペレ・ウブのファンにも響くポストパンクの名盤。
Y by The Pop Group
アヴァンガルドでカオスなサウンドが、本作と共通する実験的な作品。
Fear of Music by Talking Heads
都市の不安と緊張感をテーマにしたポストパンクの名作。
Closer by Joy Division
ダークで緊張感のあるポストパンク作品で、音楽的な深みが本作と共通する。
Fun House by The Stooges
ノイズとエネルギーが詰まったロックの名盤で、ペレ・ウブのルーツを感じられる。
コメント