発売日: 2011年2月28日
ジャンル: オルタナティブ・ロック, ブリットポップ
『Different Gear, Still Speeding』は、2011年にリリースされたBeady Eyeのデビューアルバムであり、Oasis解散後にリアム・ギャラガーと元Oasisメンバーが結成したバンドの初のスタジオ作品だ。ノエル・ギャラガーが抜けた後、リアムを中心にジェム・アーチャーやアンディ・ベルらが新たにスタートを切り、Oasisのサウンドを継承しながらも、独自の方向性を模索しているのがこのアルバムだ。
アルバム全体には、Oasis後期に見られた重厚なロックサウンドから一歩引き、より原点回帰的なローファイなロックンロールと60年代のサイケデリック、ビートルズ風のポップ感覚が漂っている。プロデュースはスティーヴ・リリーホワイトが担当し、シンプルでありながらもエネルギッシュなバンドサウンドが特徴だ。リアムの独特なボーカルとともに、彼らのルーツであるブリットポップへの愛情がアルバム全体を通して感じられる。
それでは、『Different Gear, Still Speeding』のトラックを順に見ていこう。
1. Four Letter Word
オープニングを飾るこの曲は、力強いギターリフとリアム・ギャラガーの攻撃的なボーカルが印象的な、エネルギッシュなロックナンバーだ。「Nothing ever lasts forever」というフレーズが繰り返され、Oasisの解散後の新たなスタートを感じさせる。ギターの重厚感と疾走感が、アルバム全体の勢いを象徴している。
2. Millionaire
前のトラックとは対照的に、軽快でリラックスしたギターサウンドが心地よい曲。60年代のサイケデリック・ロックを彷彿とさせるメロディラインと、リアムのボーカルが明るい雰囲気を演出している。特にコーラス部分のキャッチーさが耳に残る一曲だ。
3. The Roller
シングルカットされたこの曲は、The Beatlesへのオマージュが色濃く反映されている。特に「Hey Jude」を思わせるピアノのリフや、メロディのシンプルさが印象的だ。リアムのボーカルが強調され、彼の歌声が曲にノスタルジックな味わいを加えている。
4. Beatles and Stones
タイトルからもわかるように、リアムの音楽的なルーツであるThe BeatlesとThe Rolling Stonesへのリスペクトが込められた曲。荒々しいロックンロールのビートが印象的で、リアムの反抗的な歌詞とアティチュードが際立つ一曲だ。生き生きとしたバンドサウンドが耳に残る。
5. Wind Up Dream
アップテンポで軽快なギターリフが特徴的なこのトラックは、リアムのボーカルが前面に出ており、バンド全体のエネルギーが詰まっている。ビートルズ風のメロディアスなサビが特に印象的で、リズムの変化が楽しい一曲だ。
6. Bring the Light
ピアノをフィーチャーしたロカビリー風のこのトラックは、ビートルズや初期ロックンロールへのオマージュを感じさせる曲。ダンサブルなリズムとリアムのアグレッシブな歌唱が融合し、ライブで盛り上がること間違いなしの一曲。シンプルながらもエネルギッシュなパフォーマンスが光る。
7. For Anyone
アルバムの中では比較的落ち着いたバラードで、リアムの優しいボーカルが際立つ曲。アコースティックギターとシンプルなメロディが美しく、愛や友情をテーマにした歌詞が心に響く。曲の長さも短く、アルバムの中で一息つける瞬間だ。
8. Kill for a Dream
Oasisを彷彿とさせる壮大なバラードで、歌詞には希望と失望が交錯する。リアムの感情的なボーカルと、美しいメロディラインがドラマチックな印象を与える。特にサビの広がりが感動的で、ライブでも映えるだろう。
9. Standing on the Edge of the Noise
タイトル通り、轟音の中に立っているかのような荒々しいロックナンバー。エッジの効いたギターと、迫力あるリアムのボーカルが印象的で、バンド全体のラウドなエネルギーが爆発している。アルバムの中でも特にパンチのある一曲だ。
10. Wigwam
ミッドテンポで、徐々に盛り上がっていく展開が特徴的なこの曲は、サイケデリックな要素が強い。リアムのボーカルが繰り返しのフレーズを歌いながら、壮大なサウンドスケープを作り上げていく。曲が進むにつれて、圧倒的な高揚感が生まれ、聴く者を引き込んでいく。
11. Three Ring Circus
アップテンポでシンプルなロックナンバー。リズムセクションが力強く、ギターリフもキャッチーで、リアムのボーカルがリズムに乗って軽快に響く。シンプルな構成ながらも、アルバムの中盤を引き締める役割を果たしている。
12. The Beat Goes On
サイケデリックなムードが漂う、穏やかで心地よいバラード。時間が流れる中での人生や思い出について考えさせられる歌詞が印象的で、ビートルズ後期の影響が色濃く表れている。エモーショナルなボーカルと美しいメロディがリスナーの心に深く残る。
13. The Morning Son
アルバムのフィナーレを飾る壮大なバラードで、リアムの感情的なボーカルと、ゆっくりとしたビルドアップが印象的だ。ノエル・ギャラガーが不在となった後の新たな旅立ちを象徴するかのような歌詞と、深いメロディが響く。アルバムを締めくくるにふさわしい、感動的なトラックだ。
アルバム総評
『Different Gear, Still Speeding』は、Beady Eyeとしての新たなスタートを示すアルバムであり、Oasisの伝統を引き継ぎつつも、より軽快でローファイなロックンロールの感覚が際立っている。リアム・ギャラガーの独特なボーカルと、バンド全体のエネルギーが詰まった楽曲が揃っており、特に「The Roller」や「Kill for a Dream」といった曲は、ファンにとって特に印象的な一曲となるだろう。ビートルズやストーンズからの影響を受けた音楽性を感じさせながらも、Beady Eyeとしてのアイデンティティを確立した、パワフルで自信に満ちた作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- 『Definitely Maybe』 by Oasis
Beady Eyeのメンバーが所属していたOasisのデビューアルバム。ギターリフの力強さやリアムのボーカルが『Different Gear, Still Speeding』と共通し、ブリットポップの代表作だ。 - 『As You Were』 by Liam Gallagher
リアム・ギャラガーのソロアルバム。彼のボーカルスタイルとソングライティングがより深化しており、Beady Eyeのサウンドをさらに発展させた作品。 - 『Let It Be』 by The Beatles
ビートルズの後期作品であり、シンプルながらも深みのあるサウンドが特徴。リアムが強く影響を受けたアルバムで、『Different Gear, Still Speeding』のルーツを感じることができる。 - 『The Stone Roses』 by The Stone Roses
マッドチェスター・ムーブメントを代表するアルバム。サイケデリックでメロディアスな要素が、Beady Eyeの楽曲にも通じる。 - 『All Things Must Pass』 by George Harrison
ジョージ・ハリスンの名作ソロアルバム。サイケデリックで広がりのあるサウンドと、個人的な歌詞が、Beady Eyeの楽曲と共鳴する部分が多い。
コメント