アルバムレビュー:Come with Us by The Chemical Brothers

Spotifyジャケット画像

発売日: 2002年1月21日
ジャンル: ビッグビート、エレクトロニカ、サイケデリック・ロック


新たな音の冒険へ——The Chemical Brothersが描く音楽の境界線を越えた旅路

2002年にリリースされた『Come with Us』は、The Chemical Brothersの5枚目のスタジオ・アルバムであり、彼らのサウンドの多様化と深化が感じられる一作である。
このアルバムは、前作『Surrender』の成功を受けて、サイケデリックな要素や実験的なアプローチをさらに強化し、彼らが掲げる“ダンス・ミュージックの革新”を次のステージへと押し上げた。

『Come with Us』は、ダンス・ミュージックのエネルギーに加え、より広範なジャンルを取り入れた音楽的な冒険が感じられる。
エレクトリック・ビートとロック、サイケデリックな雰囲気が融合し、彼らの音楽に新たな深みを与えている。特に、このアルバムでは映画的な音響やトリップ感のあるサウンドスケープが強調されており、リスナーをまるで音楽的な旅に誘うような印象を与える。


全曲レビュー

1. Come with Us

アルバムのオープニングを飾るタイトル曲。
ストリングスとシンセサイザーの重なりが、徐々にビートへと変わり、幻想的な音の世界に誘っていく。
「私たちと一緒に来て」と歌うサビが、まさにリスナーを新たな音楽的冒険へと導いている。

2. It Began in Afrika

アフリカン・ビートとサンプルが絡み合った、トライバル感溢れるエネルギッシュなトラック
シンセサイザーとギターの重厚な音作りが、音楽のダイナミズムを引き立て、アルバム全体のエネルギー感を強調する。

3. Galaxy Bounce

サイケデリックなギターリフとグルーヴィーなベースラインが特徴的な、まさに「銀河の跳躍」を感じさせるトラック。
幻想的な空間を表現する音響が心地よく広がり、音楽的に夢のような体験を提供する。

4. Star Guitar

このトラックは、シンプルなビートと流れるようなサンプルワークで、他のトラックよりもやや穏やかな印象。
繰り返しの中で次第にビルドアップしていき、エレクトロニカとしての完璧なグルーヴ感が味わえる。
強烈にリズミカルな展開が特徴的で、エレクトロニック・ダンスの名曲。

5. The State We’re In

Hope Sandoval (Mazzy Star)がボーカルを担当したこの楽曲は、アルバムの中でも異色のフォーク・サイケデリックな雰囲気を持つ。
彼女の透き通った歌声と、音の広がりが美しく融合し、幻想的でメランコリックな世界を作り上げている。

6. Bat Country

ハードなギターリフと強烈なドラムビートで始まり、徐々にサイケデリックな要素が加わる。
テクノとロックを融合させたエネルギッシュなナンバーで、アルバムの中でも最も攻撃的でパワフルな一曲。

7. Come Inside

ロックとエレクトロニカの境界をさらに超えていくトラックで、ビートとサンプルのうねりが印象的。
ダークでミステリアスな雰囲気が漂い、リスナーを深く引き込む。

8. The Test

曲名通り、音のテストと実験を感じさせる一曲
シンプルでありながら、リズムが刻まれることで音楽の可能性が広がり、ダンスと実験的な要素が見事に交差する。

9. Hoops

ジャジーでクールなエレクトロニカが、アルバムの中で一転してクールダウン。
ダウンテンポでありながら、シンセサイザーとサンプルが織り成すグルーヴが心地よく、余韻を残す。

10. The Big Jump

アルバムの終盤に向けて再び高揚感を生み出すエネルギッシュなトラック。
ビッグビートとサイケデリックな要素が絡み合い、アルバム全体を締めくくるにふさわしいダイナミックな仕上がり。


総評

『Come with Us』は、The Chemical Brothersがビッグビートとエレクトロニカを越え、音楽の枠を再定義したアルバムである。
彼らはダンス・ミュージックにおける革新を続けながらも、ロックやサイケデリック、フォークなどの要素を取り入れ、より多面的な音楽を作り上げた
それは、単なるクラブミュージックの域を超え、音楽としての深みと表現力を増していった。

ゲストアーティストとのコラボレーションも、アルバムに新たな色合いを加え、音楽的に広がりを持たせた。
『Come with Us』は、ダンスフロアだけでなく、リスニングとしても楽しめる深いアルバムであり、音楽的な冒険と解放をテーマにした名作だと言える。


おすすめアルバム

  • The Prodigy / The Fat of the Land
    同時期にリリースされ、ダンス・ビートとエレクトロニカの革新を体現した作品。
  • Daft Punk / Discovery
    フレンチ・ハウスとエレクトロニカを先駆けた名盤。サウンドの多様性と革新性が共通。
  • Underworld / Beaucoup Fish
    アンビエント・テクノとダンス・ミュージックを融合させた、エネルギーと実験性が共存する名作。
  • Fatboy Slim / You’ve Come a Long Way, Baby
    ビッグビートとエレクトロニカのエネルギッシュな名作。『Surrender』と並ぶ名盤。
  • Chemical Brothers / Dig Your Own Hole
    彼らの2作目で、ダンス・ミュージックの枠を超えて新しい世界を切り開いた傑作。

コメント

タイトルとURLをコピーしました