発売日: 1989年5月16日
ジャンル: アートポップ / オルタナティブロック / ポストパンク
Cloudlandは、ペレ・ウブが実験的なアヴァンガルドサウンドからポップなアプローチへと大胆に方向転換を遂げたアルバムである。メジャーレーベルであるFontana Recordsからリリースされた本作は、プロデューサーに名うてのエイドリアン・ブリュー（キング・クリムゾン、トーキング・ヘッズなどで活躍）を迎え、より親しみやすいメロディと洗練されたアレンジが特徴的だ。
これまでのダークでカオスなポストパンクのイメージを一新し、明るさやポップさを前面に押し出した楽曲が多く収録されている。しかし、デヴィッド・トーマスの独特なボーカルスタイルやバンドのひねりの効いたアプローチは健在であり、ポップのフォーマットの中にもユニークさが色濃く残る作品となっている。
各曲解説
1 Breath
アルバムの幕開けを飾る爽快な楽曲。アップテンポで明るいメロディが特徴で、これまでのペレ・ウブとは一線を画すポップさが感じられる。歌詞は抽象的だが、トーマスの独特な表現力が光る。
2 Race the Sun
キラキラしたギターリフとドライブ感のあるリズムが心地よい一曲。タイトル通り、明るく疾走感に満ちた雰囲気が印象的で、バンドの新たな方向性を象徴している。
3 Cry
メランコリックなメロディが特徴的なミッドテンポの楽曲。トーマスのボーカルが感情豊かに響き、歌詞には哀愁が漂う。アルバムの中でも特に感情的な一曲だ。
4 Why Go It Alone?
キャッチーなコーラスとグルーヴ感のあるリズムが際立つ楽曲。アートポップ的なアレンジが耳に心地よく、バンドの多様性を感じさせるトラックだ。
5 Waiting for Mary
アルバムのシングルカット曲で、明るく心地よいポップソング。メロディアスなギターとシンセが楽曲を引き立てており、デヴィッド・トーマスの風変わりなボーカルが独自の魅力を加えている。歌詞は、幻想的で謎めいた内容だが、それが楽曲の魅力をさらに深めている。
6 Ice Cream Truck
タイトルの通り、軽快で遊び心のある楽曲。子どもの頃の記憶を呼び起こすようなメロディが印象的で、ポップさの中にノスタルジアを感じさせる。
7 Bus Called Happiness
ファンキーなリズムが楽しいトラック。陽気なムードが漂いながらも、バンド独自のひねりの効いたサウンドが健在だ。リスナーを引き込むエネルギーが溢れている。
8 Love Love Love
ストレートなポップソングで、トーマスのボーカルが特に際立つ楽曲。ラブソングとしてのシンプルなメッセージが新鮮で、バンドの柔軟性が感じられる。
9 Lost Nation Road
静かで内省的な楽曲。アコースティックなサウンドが楽曲を包み込み、トーマスの歌声が哀愁を漂わせる。アルバム全体のバランスを取る重要なトラックだ。
10 Flat
ディスコビートとポップなメロディが融合した楽曲。軽快でダンサブルな雰囲気が印象的で、ライブでも盛り上がりそうな一曲だ。
11 The Wire
複雑なリズムとシンセの絡み合いが楽曲に深みを与える。アルバムの中でもやや実験的なトラックで、初期のペレ・ウブを思わせる部分もある。
12 Cloud 149
ドリーミーなサウンドスケープが特徴の楽曲で、アルバムタイトル「Cloudland」に相応しい幻想的な雰囲気を持つ。トーマスのボーカルが特に優しく響く一曲だ。
13 Nevada!
アルバムの締めくくりとなる楽曲。明るく前向きなエネルギーを持ち、これまでのペレ・ウブの暗いイメージを払拭するような爽快なフィナーレを迎える。
アルバム総評
Cloudlandは、ペレ・ウブのキャリアの中で最も親しみやすい作品でありながら、実験性や独自性を失わないバランスの取れたアルバムだ。ポップなメロディと複雑なアレンジが見事に融合し、これまでのファンだけでなく、新しいリスナー層も引き込むことに成功している。特にWaiting for MaryやLove Love Loveといった楽曲は、バンドの新しい一面を象徴しており、彼らの音楽的幅広さを示している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Remain in Light by Talking Heads
ポップと実験音楽が融合した名盤で、ペレ・ウブのポップ志向に近い作品。
Avalon by Roxy Music
洗練されたポップサウンドと美しいメロディが共通する1980年代の名盤。
Entertainment! by Gang of Four
ダンサブルでリズム中心のポストパンク作品で、本作のエネルギッシュな面と共通する部分がある。
True by Spandau Ballet
ポップでありながら芸術的な側面を持つアルバムで、本作のリスナーに響く作品。
Hats by The Blue Nile
夢見心地のサウンドスケープと内省的な歌詞が特徴で、Cloudlandのファンにおすすめのアルバム。
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