
発売日:2000年11月21日
ジャンル:Pop / Teen Pop / Contemporary R&B
概要
Backstreet Boysが2000年に発表した4作目のスタジオ・アルバムがBlack & Blueである。世界的な成功を収めたMillenniumから約1年半後という、グループの人気が頂点にあった時期に制作された。Max Martin、Rami、Kristian Lundinら従来の重要な制作陣に加え、Babyface、Rodney Jerkinsらも参加し、90年代末の明るいティーン・ポップから、R&Bと電子的なビートを強めた2000年代初頭のサウンドへ踏み出している。
前作との大きな違いは、メンバー自身の作詞作曲への関与が増えたことだ。Brian Littrell、AJ McLean、Kevin Richardson、Howie Dorough、Nick Carterの5人が複数の楽曲制作に参加し、恋愛についても純粋な憧れだけでなく、別れ、後悔、すれ違い、関係を修復したい気持ちが多く扱われる。タイトルのBlack & Blueも、成功の華やかさだけではない傷や疲労を思わせる。
とはいえ、中心にあるのは5人のボーカルである。低い声から高音まで役割を分け、リードが交代しても厚いコーラスによってBackstreet Boysの音としてまとめる。派手なダンス曲と大きなバラードを交互に置く構成は前作から続くが、本作ではビートが硬くなり、声の加工も増えた。ボーイ・バンド全盛期の巨大なポップ・プロダクションと、より成人したR&Bへの移行が同時に記録された作品である。
全曲レビュー
1. 「The Call」
電話を使って恋人に嘘をつき、別の女性と夜を過ごそうとする人物を描く、アルバムとしてはかなり異例の導入である。Rodney Jerkinsによる硬いビートと不穏な電子音が、秘密を隠しながら行動する語り手の緊張を強める。5人の声も甘いハーモニーだけでなく、短く切ったフレーズや加工された音としてリズムへ組み込まれる。誠実なラブソングのイメージから意識的に離れ、作品の暗い色を最初に示す。
2. 「Shape of My Heart」
アコースティック・ギターを軸にしたミドルテンポのバラードで、本作を代表するシングルである。自分の過ちを認め、相手に本当の姿を理解してほしいと願う歌詞は、「The Call」の無責任な主人公から一転して後悔へ向かう。ヴァースでは楽器を抑え、サビで5人のハーモニーを大きく広げるため、旋律の高まりが自然に伝わる。Backstreet Boysの強みである声の重なりを、過剰な装飾なしで聞かせる曲だ。
3. 「Get Another Boyfriend」
Max MartinとRamiらによるアップテンポ曲で、危険な恋人から離れて別の相手を探すよう促す。低く硬いビートとギターのアクセントを組み合わせ、90年代の明るいダンス・ポップより攻撃的な音に仕上げている。リード・ボーカルと集団コーラスを短い間隔で切り替えるため、サビには観客全体で歌える勢いがある。アルバム序盤で、バラードだけではない新しい硬質さを再確認させる。
4. 「Shining Star」
R&B色を前面へ出し、跳ねるビートと低音を中心に進む。タイトルには古典的なラブソングらしい甘さがあるが、アレンジは滑らかなコーラスと現代的なリズムを組み合わせ、2000年前後のアーバン・ポップへ接近している。5人が同じ声色で歌うのではなく、それぞれの声の質感を交代させながら曲を運ぶのも特徴だ。ポップとR&Bの境界を広げようとする本作の姿勢が分かりやすい。
5. 「I Promise You (With Everything I Am)」
相手への献身を正面から歌う大きなバラードで、電子的な前半から一度距離を置く。ピアノと柔らかな伴奏から始まり、曲が進むにつれてストリングス風の音とコーラスを重ねる定番の構成だが、5人のハーモニーがあることで説得力を持つ。歌詞は比喩を複雑にせず、全面的な約束を直接伝える。Backstreet Boysの王道バラードを期待する聞き手に応える一曲である。
6. 「The Answer to Our Life」
メンバー5人が作詞作曲に参加した曲で、個人的な恋愛から視野を広げ、より良い世界を作るための責任について歌う。穏やかなギターと中速のビートを使い、メッセージを声のハーモニーで包むため、説教調になりすぎない。内容は理想主義的でかなり直接的だが、当時の彼らが自分たちの言葉をアルバムへ増やそうとしていたことがよく表れている。
7. 「Everyone」
ファンや自分たちを支えてきた人々へ向けた感謝を、勢いのあるダンス・ポップとして聞かせる。ビートは大きく、集団コーラスを何層にも重ねることで、ライブ会場で観客と共有できるようなスケールを作る。歌詞も個人的な恋愛ではなく、成功を一緒に経験してきた人々との関係へ向けられる。アルバム中盤で外向きな高揚を作る、明確なファン・アンセムである。
8. 「More Than That」
相手を粗末に扱う恋人より、自分ならもっと深く愛せると語りかけるミドルテンポ曲。ピアノ、電子的なリズム、厚いコーラスを滑らかに組み合わせ、R&Bバラードとポップの中間に置かれている。相手を説得するように静かに始まり、サビで5人の声が広がる構成が歌詞の感情を自然に大きくする。派手さより旋律とハーモニーで勝負した、本作でも特に完成度の高い楽曲だ。
9. 「Time」
過去を振り返り、時間の経過とともに変わってきた自分たちを見つめる曲である。メンバーが制作に関わっていることもあり、一般的な恋愛歌というより、グループとして経験してきた年月を重ねて聞ける内容になっている。演奏は穏やかで、リードを競うより5人の声を並べることを優先する。世界的成功の真っただ中に、自分たちの出発点へ視線を戻す落ち着いた一曲だ。
10. 「Not for Me」
暗いシンセサイザーと力強いリズムによって、再びアルバム前半の硬質な音へ戻る。魅力的だが自分には良くない関係を拒絶する歌詞に合わせ、サビでは短い言葉を強く押し出す。甘いハーモニーよりリズムと声の切れ味を重視しており、「The Call」と並んで本作のダークな側面がよく出ている。2000年代のポップ/R&Bへ向かうグループの変化を感じさせる曲だ。
11. 「Yes I Will」
Brian Littrellが制作に参加したバラードで、相手と将来を共にする意思を穏やかに歌う。ピアノを中心とした柔らかな伴奏と、徐々に厚くなるコーラスはBackstreet Boysらしい王道の作りである。大げさなドラマを付けるより、「そうする」と繰り返す言葉によって約束の確かさを表現する。「Not for Me」の拒絶から一転し、安定した関係を求める方向へ流れを変える。
12. 「It’s True」
別れや距離を経験した後でも残る感情を、静かなバラードとして描く。メロディは素直で、5人の声を重ねるサビにも過度な装飾を加えないため、歌詞の切なさが直接伝わる。誰かを責めるより、自分の中にまだ存在する感情を認めることへ重点が置かれている。本作後半の内向きな流れを支える曲で、グループのコーラス能力を改めて前へ出している。
13. 「How Did I Fall in Love with You」
標準盤を締めくくるバラードは、長く身近にいた相手への感情がいつの間にか恋へ変わっていたことに気づく場面を描く。ピアノを中心にゆっくり進み、歌声を段階的に重ねることで、驚きから確信へ変わる感情を表現する。派手なダンス曲で終えるのではなく、問いかけを残した静かなラブソングを置くことで、アルバムは傷や対立から親密さへ着地する。
総評
Black & Blueは、Millenniumで完成したBackstreet Boysの巨大なポップ・サウンドを維持しながら、その表面を少し暗くした作品である。「The Call」や「Not for Me」では電子音とR&B由来の硬いビートを強調し、以前の無邪気なティーン・ポップから距離を取る。その一方で「Shape of My Heart」「More Than That」のようなバラードでは、彼ら最大の武器である5声のハーモニーを崩していない。
この二つの方向があるため、作品には2000年前後という時代の変化がよく記録されている。Max Martin型のメロディ中心のポップが依然として大きな力を持つ一方、Rodney Jerkinsに代表される硬質なR&Bプロダクションもメインストリームの中心へ入っていた。Backstreet Boysはどちらか一方へ完全に移るのではなく、その両方を13曲の中で使い分けている。
メンバー自身の作曲参加が増えたことも見逃せない。「The Answer to Our Life」や「Time」では、外部ライターが作る普遍的なラブソングとは少し異なり、自分たちの経験や価値観を作品へ持ち込もうとしている。ただしアルバム全体としてはバラードの比率が高く、中盤以降に似た速度の曲が続くため、Millenniumほど鮮やかな曲調の切り替えを感じにくい部分もある。
それでも、人気絶頂期のボーイ・バンドが次の時代へどう進むかという問いに対して、Black & Blueはかなり明確な答えを出している。ダンス曲では音を硬くし、バラードではハーモニーという核を守り、作詞作曲では本人たちの関与を増やした。90年代ティーン・ポップの完成形を繰り返すだけではなく、成人したボーカル・グループへの移行を試みた作品であり、その過渡期らしい揺れまで含めてBackstreet Boysのキャリアを理解するうえで重要な一枚である。
おすすめアルバム
Millennium by Backstreet Boys
1999年の前作。「I Want It That Way」を中心に、Max Martin型の巨大なメロディと5人のハーモニーを完成させた代表作。Black & BlueでR&Bと暗い電子音がどれほど増えたかを比較するうえで最も分かりやすい。
Never Gone by Backstreet Boys
2005年の次作。活動休止を挟み、ダンス・ポップより生楽器を使ったポップ・ロックへ大きく方向転換した。Black & Blueで始まった「成人したグループとして何を歌うか」という課題への、その後の回答として聞ける。
No Strings Attached by *NSYNC
2000年作。同時代最大のライバルによる作品で、電子的なビート、R&B、未来的な音響をより大胆に押し出した。Black & Blueと並べると、ボーイ・バンドが2000年代のサウンドへ移行する際の異なる方法が見えてくる。
Invincible by Michael Jackson
2001年作。Rodney Jerkinsらを起用し、硬質なデジタルR&Bと大規模なバラードを同じ作品へ収めている。歌唱スタイルは大きく異なるが、2000年前後のポップがR&Bプロダクションをどう吸収したかという点で本作と接点がある。
Celebrity by *NSYNC
2001年作。ビートボックス、エレクトロニックな加工、R&Bを取り込み、ボーイ・バンドのポップをさらに実験的な制作へ進めた。Black & Blueが始めたティーン・ポップからの脱却を、よりリズムとスタジオ技術へ振り切った比較対象である。

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