アルバムレビュー:Bachman-Turner Overdrive II by Bachman-Turner Overdrive

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発売日: 1973年12月
ジャンル: ハードロック、ブギーロック、アリーナロック


重心の低いロックが響く、“BTOらしさ”の確立点

Bachman-Turner Overdrive IIは、カナダのハードロックバンドBTOのセカンド・アルバムであり、彼らの“骨太なロック像”が確立された作品である。
前作Bachman-Turner Overdrive(1973年)は荒削りながらも力強いデビュー作であったが、この2作目ではサウンド、楽曲ともに明確な方向性と完成度を獲得している。

本作には、BTO最大のヒット曲であるTakin’ Care of Businessが収録されており、それだけでもこのアルバムの意義は大きい。
労働者階級の代弁者としてのBTO、ブルースやブギーに根ざしたロックンロールの快楽、そして耳に残るフック。
それらが自然に結びついた、1970年代北米ロックの一つの到達点である。


全曲レビュー

1. Blown

分厚いリフが押し寄せる、ヘヴィなオープナー。
サイケデリックさをわずかに残しつつ、BTO流の直球ハードロックへと着地する。
荒々しいが、どこか洗練され始めた印象もある。

2. Welcome Home

タイトル通り、暖かく包み込むような空気を持つ中速ロック。
家庭、仲間、ルーツといったテーマが、シンプルなコード進行に乗って語られる。
土の匂いがするような1曲。

3. Stonegates

ブルージーなグルーヴが支配する、深みのあるナンバー。
「閉ざされた門(Stonegates)」というメタファーが示すように、抑圧や葛藤を静かに描いている。

4. Let It Ride

アルバム中最も洗練された構成のミドルテンポ・ロック。
全米チャートでもヒットした本曲は、力強いドラムとファンキーなギターが絡み合い、BTOの代表曲の一つとなった。
「流れに身を任せろ」というテーマが、サウンドにも反映されている。

5. Give It Time

じっくりと展開するバラード風ロック。
時間の流れ、忍耐、人生の浮き沈みをテーマにしながら、しみじみと語りかけてくる。
静と動のバランスが美しい。

6. Tramp

タイトル通り、“放浪者”をテーマにした骨太ロック。
ワイルドなギターリフとソウルフルなヴォーカルが絡み合い、自由と孤独を歌い上げる。

7. I Don’t Have to Hide

自己肯定と開き直りをストレートに表現したロック・ナンバー。
「もう隠れなくていい」という力強いメッセージが、サビで爆発する。
BTOらしい男気とシンプルなメロディの融合。

8. Takin’ Care of Business

説明不要の代表曲。
商業ロックの原型ともいえる、キャッチーで覚えやすいリフと歌詞は、70年代ロックアンセムのひとつ。
会社員の日常と“音楽で食う”夢の狭間を描いたこの曲は、聴く者に元気を与え続けている。
ライブでは観客の大合唱が定番となる、BTOの代名詞。


総評

Bachman-Turner Overdrive IIは、デビュー作の粗削りな魅力を引き継ぎながら、バンドとしての統一感やアンサンブルの精度が格段に向上したアルバムである。
特に“Takin’ Care of Business”と“Let It Ride”という2大アンセムの存在が、BTOというバンドの輪郭を決定づけた。

華やかさや前衛性とは無縁だが、そのぶんリアリティと共感力に満ちたサウンドが詰まっている。
地道に働き、週末に音楽を楽しむような“普通の生活者”の視点。
その誠実さこそが、BTOの音楽を長く愛されるものにしている。


おすすめアルバム

  • REO Speedwagon – Ridin’ the Storm Out
    中西部的なハードロックの文脈で通じる一枚。BTOと並ぶアメリカンロックの代表格。
  • Status Quo – Hello!
    ブギーロックをルーツに持つイギリスのバンド。直球ロックの爽快さが共通点。
  • Doobie Brothers – The Captain and Me
    アメリカン・ルーツとロックの融合。BTOの持つ温かみやグルーヴに通じる魅力。
  • The Guess WhoShare the Land
    Randy Bachmanが脱退後の作品だが、彼の出発点を知るうえで欠かせない一枚。
  • Loverboy – Loverboy
    カナダ出身で、BTOの後継的存在とも言える80年代ロックバンド。明快でポップな魅力が光る。

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