発売日: 1967年2月17日
ジャンル: ブルースロック
アルバム全体の印象
「A Hard Road」は、John Mayall & the Bluesbreakersによる3枚目のアルバムであり、エリック・クラプトンの後任として加入したピーター・グリーンのギタープレイが大きな注目を集めた作品である。クラプトンの「神」と称されるギターの影響を受けていたブルースロックシーンに、新たな視点とサウンドを持ち込んだのがこのアルバムだ。
ピーター・グリーンは、クラプトンとは異なる、より抑制された感情的なギタースタイルを持ち、繊細でメロディアスなアプローチが特徴的である。その後、Fleetwood Macを結成し、さらに成功を収めたグリーンだが、このアルバムでは彼のブルースギタリストとしての才能が最も純粋な形で表現されている。
アルバム全体には、ジョン・メイオールが主導するブルースの伝統的な解釈と、現代的なロックのエネルギーが融合しており、「Blues Breakers with Eric Clapton」とは異なる深みと個性が感じられる。オリジナル曲と伝統的なブルースのカバーを絶妙に組み合わせ、バンド全体のまとまりが一層際立つ仕上がりだ。
各曲解説
1. A Hard Road
アルバムのタイトル曲で、メイオールのソウルフルなボーカルとグリーンの滑らかなギターが際立つ。ブルースの苦悩と希望を描いた歌詞が心に響く。
2. It’s Over
グリーンの感情豊かなギターソロが光るスローブルース。静かでありながらも深いエモーションを感じさせる一曲。
3. You Don’t Love Me
オーティス・ラッシュの楽曲をアレンジしたカバー。アップテンポのリズムと印象的なギターフレーズが、オリジナル曲に新たな生命を吹き込んでいる。
4. The Stumble
フレディ・キングのインストゥルメンタルをカバーしたトラックで、グリーンのテクニックが存分に発揮されている。疾走感とブルースの本質が詰まった楽曲だ。
5. Another Kinda Love
メイオールのオリジナル曲で、軽快なピアノとグリーンのギターが絶妙に絡み合う。陽気なブルースナンバー。
6. Hit the Highway
アップテンポで明るいトラック。バンド全体のアンサンブルが際立つ楽曲で、ブルースの伝統的なスタイルに現代的なエネルギーが加わっている。
7. Leaping Christine
ホーンセクションがフィーチャーされたトラックで、グルーヴ感のあるアレンジが特徴的。バンドの多様性が感じられる。
8. Dust My Blues
エルモア・ジェームズの楽曲をカバー。スライドギターが楽曲に独特の質感を与え、原曲の持つエネルギーを忠実に再現している。
9. There’s Always Work
シンプルな構成ながらも、力強いブルースの魂を感じさせる一曲。メイオールのリリックが印象的。
10. The Same Way
ピーター・グリーン作の楽曲で、彼の作曲家としての才能が垣間見える。繊細なギターとソウルフルなボーカルが特徴。
11. The Supernatural
グリーンのソロインストゥルメンタルで、彼のギターの魔法ともいえるトラック。空間を支配するような音響効果が印象的で、後のキャリアを予感させる。
12. Top of the Hill
エネルギッシュなトラックで、メイオールのピアノとグリーンのギターが生き生きとしている。
13. Someday After a While (You’ll Be Sorry)
フレディ・キングのカバー曲。スローテンポで情感たっぷりのギターソロが楽曲を彩る。
14. Living Alone
アルバムの最後を飾るトラックで、メイオールの歌声とグリーンのギターが穏やかに響く、感動的な締めくくりとなっている。
アルバム総評
「A Hard Road」は、ピーター・グリーンという新たな才能をフィーチャーし、ブルースロックの新しい可能性を切り開いたアルバムである。グリーンの抑制されたギタープレイは、エリック・クラプトンとはまた異なる形でブルースロックの未来を示し、バンド全体の一体感と演奏の質がアルバム全体を支えている。
「The Stumble」や「The Supernatural」のような楽曲は、グリーンの技術と感情が完璧に融合しており、アルバムのハイライトとなっている。ブルースロックの名作として、「Blues Breakers with Eric Clapton」に匹敵する価値を持つ一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Blues Breakers with Eric Clapton」 by John Mayall & the Bluesbreakers
クラプトン時代の名盤で、ブルースロックの原点を知ることができる。
「Fleetwood Mac (1968)」 by Fleetwood Mac
ピーター・グリーンが結成したバンドのデビューアルバムで、彼のブルーススタイルがさらに進化している。
「Born Under a Bad Sign」 by Albert King
ブルースギターの名盤で、ピーター・グリーンやクラプトンに影響を与えたアルバート・キングの作品。
「John Mayall’s Bare Wires」 by John Mayall & the Bluesbreakers
ブルースにジャズの要素を取り入れた後期の名作。
「Then Play On」 by Fleetwood Mac
ピーター・グリーン時代のFleetwood Macの傑作で、ブルースとプログレッシブロックが融合している。
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