発売日: 1980年3月14日
ジャンル: ハードロック、ヘヴィメタル
Def Leppardのデビューアルバム『On Through the Night』は、バンドの若さとエネルギーが存分に詰め込まれた作品である。1980年代初頭のハードロックシーンを牽引する要素を既に備えており、後のスタジアム級バンドへと成長する片鱗が感じられる。アルバムは、NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)の影響を強く受けており、疾走感あふれるギターリフとキャッチーなメロディが特徴的だ。リリース当時は、まだバンドのサウンドが完成されていない部分もあるが、その荒削りな魅力と未来の可能性が際立つ一枚となっている。
各曲ごとの解説:
- Rock Brigade
アルバムの幕開けを飾る「Rock Brigade」は、力強いリフとジョー・エリオットのエネルギッシュなボーカルが印象的なハードロックアンセム。戦う若者たちをテーマにした歌詞と、リスナーを引き込むサビが特徴で、Def Leppardの初期の勢いを象徴する一曲だ。 - Hello America
アメリカ市場を意識したメロディアスな一曲。「Hello America」は、バンドが当時抱いていた夢や希望を歌った楽曲で、パワフルなギターサウンドと希望に満ちた歌詞がマッチしている。アメリカ進出の決意が込められており、バンドの野心を感じさせる。 - Sorrow Is a Woman
ゆったりとしたイントロから始まるミッドテンポの楽曲。恋愛の失望を歌った歌詞と、メロディの抑揚が心に響く。ギターソロは特に感情的で、メロウな部分とハードな部分がバランスよく融合している。 - It Could Be You
短くシンプルなロックナンバー。疾走感あふれるリズムが特徴で、Def Leppardの持つスピード感を体現している。歌詞は自己肯定的で、若者の挑戦や勝利への意志を表現している。 - Satellite
未来的なテーマを歌ったこの曲は、どこかミステリアスな雰囲気を持っている。リズムの変化が心地よく、ギターのフレーズが特に際立つ。キャッチーなサビとメタリックなサウンドが印象的な楽曲だ。 - When the Walls Came Tumbling Down
ダークでドラマチックなイントロから始まり、ストーリーテリング形式の歌詞が特徴的な曲。崩壊する世界を描いた内容は、バンドの後の作品に見られる壮大なテーマの先駆けと言える。 - Wasted
スピーディーでアグレッシブな一曲。「Wasted」は、アルバム中でも特にパンチの効いたロックナンバーで、若者のフラストレーションをストレートに表現している。エリオットのボーカルとギターリフが力強く、ライブでも盛り上がること間違いなしの楽曲だ。 - Rocks Off
爽快なギターリフで幕を開ける「Rocks Off」は、シンプルながらもグルーヴ感が溢れるロックナンバー。サビのコーラスがキャッチーで、リズムセクションがバンドの若さと活力を強調している。 - It Don’t Matter
軽快なテンポとシンコペーションが特徴的な曲。日常の些細なことに対する無関心さや、逆境に立ち向かう姿勢を歌詞で表現している。シンプルな構成だが、力強さを感じさせる。 - Answer to the Master
ギターソロが光るパワフルなロックナンバー。リズムの変化が豊富で、バンドの演奏技術の高さが際立つ一曲。歌詞は精神的な強さや指導者への反抗をテーマにしており、メッセージ性が強い。 - Overture
アルバムの締めくくりとなるこの曲は、6分を超える壮大な楽曲で、プログレッシブな要素も垣間見える。複雑な構成とドラマチックな展開が特徴で、Def Leppardの作曲力が試された一曲。バンドの可能性を示す、野心的なフィナーレだ。
アルバム総評:
『On Through the Night』は、Def Leppardが後に大成功を収めるまでの第一歩となったアルバムである。荒削りな部分も多いが、それが逆にバンドの若さとエネルギーを象徴している。NWOBHMの影響を受けつつも、キャッチーなメロディとポップな要素を取り入れ、独自のサウンドを築き上げようとしている姿勢が感じられる。特に「Wasted」や「Rock Brigade」は、彼らの代表曲として長く愛されるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- High ‘n’ Dry by Def Leppard
同じくDef Leppardの2枚目のアルバムで、より洗練されたハードロックサウンドが楽しめる。「Bringin’ On the Heartbreak」など、彼らのスタイルが確立され始めた作品。 - British Steel by Judas Priest
1980年リリースの名盤。『On Through the Night』同様に、NWOBHMムーブメントを代表する作品で、鋭いギターリフと力強いボーカルが魅力。 - Killers by Iron Maiden
初期Iron Maidenのスピーディーで攻撃的なサウンドが特徴の作品。Def Leppardのデビュー作に見られる若さとエネルギーが好きな人には特におすすめ。 - Heaven and Hell by Black Sabbath
ブラック・サバスの1980年のアルバムで、ロニー・ジェイムス・ディオを迎えた新生バンドの重厚なサウンドが特徴。メロディアスな要素が増え、Def Leppard好きにも刺さる要素が多い。 - Ace of Spades by Motörhead
疾走感とエネルギーに溢れた作品。『On Through the Night』の荒削りなロックサウンドに共感するリスナーには、同じく1980年リリースのこのアルバムがぴったりだ。
コメント