![]()
グラム・メタルを知るなら、まず定番アーティストから
グラム・メタルは、1980年代のロック/メタルを象徴する華やかなジャンルである。派手な衣装、逆立てた髪、キャッチーなコーラス、きらびやかなギターソロ、そしてスタジアム級のスケールを持つバラードやアンセムが大きな特徴である。ヘヴィメタルの鋭さを持ちながら、ハードロックやポップの親しみやすさも強く、ラジオやMTVの時代と深く結びついて広がった。
このジャンルを理解するには、まず定番アーティストから聴くのがわかりやすい。グラム・メタルは一枚岩ではなく、LAのクラブシーンから出てきた荒々しいバンド、ポップメタルとして大成功したバンド、ブルースロックやパンクの要素を持つバンド、バラードで広く知られたバンドまで幅がある。代表的なバンドを並べて聴くことで、派手な見た目だけではなく、曲作り、ギターサウンド、コーラスワーク、時代背景まで見えてくる。
ここでは、Mötley Crüe、Bon Jovi、Poison、Def Leppard、Ratt、Cinderella、Skid Row、Warrant、Europe、Twisted Sisterまで、グラム・メタルを知るうえで欠かせない10組を紹介する。
グラム・メタルとはどんなジャンルか
グラム・メタルは、1970年代のグラムロック、ハードロック、ヘヴィメタルを背景に、1980年代のアメリカを中心に大きく広がったジャンルである。特にロサンゼルスのサンセット・ストリップ周辺のクラブシーンは重要で、Mötley Crüe、Ratt、Poisonなどがこの流れの中心にいた。
音楽的には、歪んだギターリフ、派手なギターソロ、力強いドラム、合唱しやすいサビが基本である。ヘヴィメタル由来の攻撃性を持ちながら、楽曲は比較的コンパクトで、メロディやコーラスが強い。アルバムには、勢いのあるロック曲と、アリーナで大合唱できるパワーバラードが並ぶことも多い。
親ジャンルとしてはメタルに含まれるが、ハードロックとの関係も非常に深い。スラッシュメタルのような速度や攻撃性よりも、フック、華やかさ、ステージ映え、ポップな親しみやすさを重視したメタルと考えるとわかりやすい。
グラム・メタルの定番アーティスト10選
1. Mötley Crüe
Mötley Crüeは、グラム・メタルを象徴する最重要バンドのひとつである。1980年代初頭にロサンゼルスで結成され、サンセット・ストリップの享楽的で危険な空気をそのまま音とイメージにした存在として知られている。
代表作には、1983年の『Shout at the Devil』、1987年の『Girls, Girls, Girls』、1989年の『Dr. Feelgood』がある。初期はより荒く、パンクやヘヴィメタルの攻撃性も強いが、後期になるにつれてプロダクションが洗練され、アリーナ級のハードロックとして完成度を高めていった。「Kickstart My Heart」や「Dr. Feelgood」は、派手なギター、太いリズム、勢いのあるボーカルが一体となった代表曲である。
初心者には『Dr. Feelgood』から聴くのがおすすめである。グラム・メタルの華やかさ、危うさ、キャッチーさが高い完成度でまとまっており、ジャンルの入口として非常にわかりやすい。
2. Bon Jovi
Bon Joviは、グラム・メタルやポップメタルを広い層へ届けた代表的なバンドである。ニュージャージー出身で、1980年代半ばから世界的な成功を収めた。サンセット・ストリップのバンドとは少し距離があり、よりアメリカン・ロックやポップソングとしての完成度を重視した存在である。
代表作は1986年の『Slippery When Wet』と1988年の『New Jersey』である。「Livin’ on a Prayer」「You Give Love a Bad Name」「Wanted Dead or Alive」など、サビの強い楽曲が多く、メタル的なギターを使いながらも、歌として非常に覚えやすい。Richie SamboraのギターとJon Bon Joviの声が、バンドの大きな魅力である。
初心者には、まず『Slippery When Wet』から入るとよい。グラム・メタルのポップな側面、MTV時代のロックの華やかさ、スタジアムで歌えるコーラスの力がよくわかる。重さよりもメロディを重視する人に向いているバンドである。
3. Poison
Poisonは、グラム・メタルの派手でポップな面を代表するアメリカのバンドである。ペンシルベニア出身だが、ロサンゼルスへ移り、1980年代のサンセット・ストリップ・シーンで大きな成功を収めた。カラフルなルックス、明るい曲調、親しみやすいコーラスで、グラム・メタルのイメージを広く定着させた存在である。
代表作は1986年の『Look What the Cat Dragged In』と1988年の『Open Up and Say… Ahh!』である。「Talk Dirty to Me」や「Nothin’ but a Good Time」は、シンプルなギターリフと陽気なサビを持つ楽曲で、難解さよりも楽しさを前面に出している。「Every Rose Has Its Thorn」では、パワーバラードとしての魅力も見せた。
初心者には「Nothin’ but a Good Time」から聴くと入りやすい。グラム・メタルの軽快さ、パーティー感、ポップなメロディが端的に伝わる。重厚なメタルよりも、明るく聴きやすいロックとして楽しめるバンドである。
4. Def Leppard
Def Leppardは、イギリス出身のバンドで、グラム・メタル、ハードロック、ポップメタルを語るうえで欠かせない存在である。1970年代末のNWOBHMの流れとも関係を持ちながら、1980年代には極めて洗練されたロックサウンドで世界的な成功を収めた。
代表作は1983年の『Pyromania』と1987年の『Hysteria』である。特に『Hysteria』では、重ねられたコーラス、緻密なプロダクション、強いメロディ、硬質なギターサウンドが組み合わされている。「Pour Some Sugar on Me」や「Animal」は、メタルの重さよりも、ポップソングとしての精度と音作りの完成度が際立つ。
初心者には『Hysteria』が聴きやすい。グラム・メタルの派手さを持ちながら、サウンドは非常に整理されており、ロックに慣れていない人でも入りやすい。80年代ロックのプロダクションを知るうえでも重要なバンドである。
5. Ratt
Rattは、ロサンゼルスのグラム・メタル・シーンを代表するバンドのひとつである。1980年代前半から活動し、サンセット・ストリップの硬派で少し陰りのある側面を持った存在として知られている。派手なルックスを持ちながら、音楽的にはギターリフの切れ味が強い。
代表作は1984年の『Out of the Cellar』である。「Round and Round」は、Rattを象徴する代表曲で、鋭いギターリフ、乾いたリズム、Stephen Pearcyの個性的なボーカルが印象的である。Mötley CrüeやPoisonに比べると、少しクールで硬い質感があり、LAメタルの魅力をよく伝えている。
初心者には『Out of the Cellar』から入るとよい。グラム・メタルの華やかさと、リフ中心のハードロック感がバランスよくまとまっている。ポップすぎないグラム・メタルを聴きたい人に向いたバンドである。
6. Cinderella
Cinderellaは、アメリカ・フィラデルフィア出身のバンドで、グラム・メタルの枠で語られながらも、ブルースロックやルーツ寄りのハードロック色が強い存在である。Tom Keiferのしゃがれたボーカルと、泥臭いギターサウンドが大きな特徴である。
代表作には、1986年の『Night Songs』と1988年の『Long Cold Winter』がある。初期はよりグラム・メタルらしい派手さが目立つが、『Long Cold Winter』ではブルースやスワンプ的な感覚が強まり、より骨太なハードロックへ進んだ。「Shake Me」や「Gypsy Road」は、キャッチーさと荒々しさのバランスがよい。
初心者には、グラム・メタルの中でもブルースロック寄りの音を知る入口としておすすめできる。派手な見た目だけではなく、1970年代ハードロックから続くギターの泥臭さを感じられるバンドである。
7. Skid Row
Skid Rowは、1980年代末に登場したアメリカのバンドで、グラム・メタルの末期により硬く、攻撃的なサウンドを鳴らした存在である。ニュージャージー出身で、Sebastian Bachの強力なボーカルを中心に、メタル寄りの重さと若い怒りを前面に出した。
代表作は1989年の『Skid Row』と1991年の『Slave to the Grind』である。デビュー作には「18 and Life」や「Youth Gone Wild」など、メロディアスでありながらエッジの立った楽曲が収録されている。『Slave to the Grind』ではさらにヘヴィになり、グラム・メタルよりも正統派メタルやハードロックに近い緊張感を持つ。
初心者には、まずデビュー作『Skid Row』から聴くのがよい。キャッチーな曲とヘヴィな演奏が共存しており、グラム・メタルが1990年代初頭へ向かうなかで、どのように硬さを増していったかがわかる。
8. Warrant
Warrantは、アメリカ・ロサンゼルスのグラム・メタル・シーンから登場したバンドで、1980年代末から1990年代初頭にかけて大きな人気を得た。Jani Laneのソングライティングと甘いボーカルを中心に、ポップでメロディアスなグラム・メタルを展開した。
代表作は1989年の『Dirty Rotten Filthy Stinking Rich』と1990年の『Cherry Pie』である。「Heaven」は、グラム・メタルのパワーバラードを代表する楽曲のひとつであり、「Cherry Pie」はバンドの陽気で派手な面を象徴している。一方で、アルバムにはメロディの強いロック曲も多く、単なる軽いバンドとして片づけられない魅力がある。
初心者には「Heaven」や「Cherry Pie」から入ると聴きやすい。グラム・メタルが持つ甘いメロディ、バラードの強さ、MTV時代らしい派手なイメージを理解するうえで重要なバンドである。
9. Europe
Europeは、スウェーデン出身のバンドで、グラム・メタルやメロディアス・ハードロックの文脈で広く知られている。アメリカのLAメタルとは異なる出自を持つが、1980年代の華やかなメタル/ハードロックを代表する存在として重要である。
代表作は1986年の『The Final Countdown』である。表題曲「The Final Countdown」は、印象的なシンセリフと壮大なコーラスで世界的に知られる楽曲である。ギターよりもキーボードの華やかさが前面に出る場面もあり、グラム・メタルの中でもメロディアスでヨーロッパ的なスケール感を持っている。
初心者には、まず「The Final Countdown」から入るとよい。メタルの重さよりも、メロディ、シンセ、壮大なサビの魅力がわかりやすい。グラム・メタル周辺のポップで大きな音を知るうえで外せないバンドである。
10. Twisted Sister
Twisted Sisterは、アメリカ・ニューヨーク周辺で活動したバンドで、グラム・メタル、ハードロック、ヘヴィメタルの境界に位置する存在である。派手なメイクと衣装で知られるが、音楽的にはシンプルで力強いアンセム型のハードロックが中心である。
代表作は1984年の『Stay Hungry』である。「We’re Not Gonna Take It」や「I Wanna Rock」は、非常にシンプルな構成ながら、強いコーラスと反抗的なメッセージで広く知られている。演奏は技巧よりも勢いを重視し、観客が一緒に叫べる曲作りに徹している。
初心者には「We’re Not Gonna Take It」から聴くとわかりやすい。グラム・メタルの派手な外見と、ハードロックのわかりやすいアンセム性が結びついたバンドである。メタルに慣れていない人でも、曲のメッセージとサビの強さで入りやすい。
まず聴くならこの3組
最初に聴くなら、Mötley Crüeが最もわかりやすい。LAのグラム・メタルらしい危うさ、派手さ、ハードロックとしての勢いがまとまっている。特に『Dr. Feelgood』は、サウンドの完成度も高く、ジャンルの入口として非常に機能する。
次におすすめしたいのはBon Joviである。グラム・メタルのポップな側面を代表するバンドで、メロディが強く、サビも覚えやすい。メタルの重さに慣れていない人でも、「Livin’ on a Prayer」や『Slippery When Wet』から入れば、この時代のロックの魅力をつかみやすい。
三組目にはDef Leppardを挙げたい。『Hysteria』に代表される緻密なプロダクションと、強いコーラスワークは、80年代ロックの完成形のひとつである。派手さだけでなく、音作りやポップソングとしての完成度にも注目したいバンドである。
関連ジャンルへの広がり
グラム・メタルを聴いていくと、ヘヴィメタル、ハードロック、スラッシュメタルへの関心も自然に広がっていく。ハードロックをたどれば、Aerosmith、KISS、Van Halen、AC/DCなど、グラム・メタルの土台になったリフ、ステージング、ロックンロールの感覚が見えてくる。多くのグラム・メタル・バンドは、1970年代ハードロックの派手さや曲作りを、1980年代の音像とビジュアルで更新した存在である。
一方で、同じ1980年代のメタルでも、スラッシュメタルとはかなり方向性が異なる。Metallica、Slayer、Megadethなどが速度、攻撃性、重いリフを追求したのに対し、グラム・メタルはメロディ、コーラス、ショウとしての華やかさを重視した。両者を聴き比べると、1980年代メタルの幅広さがよくわかる。
まとめ
グラム・メタルは、1980年代のロック/メタルの華やかさを象徴するジャンルである。Mötley CrüeはLAの危険な空気を、Bon Joviはポップなメロディとスタジアム級のコーラスを、Poisonは明るく親しみやすいパーティー感を代表している。Def Leppardは緻密なプロダクションで、グラム・メタルをより洗練されたロックへ押し上げた。
RattやCinderellaを聴けば、LAメタルの硬さやブルースロック寄りの側面が見えてくる。Skid Rowはよりヘヴィで攻撃的な方向を示し、Warrantはバラードとポップなメロディの強さを伝えている。EuropeやTwisted Sisterからは、アメリカ以外のメロディアスな広がりや、アンセム型ハードロックとしての魅力も理解できる。
最初はMötley Crüe、Bon Jovi、Def Leppardの3組から入ると理解しやすい。そこからPoisonでポップな側面へ、RattやSkid Rowで硬い側面へ、Cinderellaでブルース寄りへ広げていけば、グラム・メタルが単なる派手な見た目だけでなく、80年代ロックの多様な魅力を詰め込んだジャンルであることが見えてくる。

コメント