発売日: 2001年4月10日
ジャンル: オルタナティブロック、グラムロック
2001年、イギリス出身のバンドSpacehogは3作目となるアルバム『The Hogyssey』をリリースした。前作『The Chinese Album』での実験的な音作りを経て、本作ではロックバンドとしてのエネルギッシュな原点に立ち返りつつ、グラムロックの影響を色濃く反映したサウンドを展開している。
アルバムタイトル『The Hogyssey』は、スタンリー・キューブリック監督の名作『2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)』をもじったものだ。タイトル通り、宇宙的なテーマと未来への憧れを感じさせるサウンドスケープが随所に散りばめられている。
本作は、テネシー州メンフィスのArdent Studiosで録音され、ショーン・スレイドやポール・エバーソル、ブライス・ゴギンズといった名プロデューサー陣が携わった。ロックの力強さ、遊び心、そしてバンドのテクニカルな一面が融合した意欲作となっている。
トラックごとの解説
1. Jupiter’s Moon
アコースティックギターの静かなイントロから始まり、すぐに重厚なギターリフが加わるダイナミックなオープニングトラック。宇宙的な広がりを感じさせる壮大な雰囲気とロイ・ラングドンの力強いボーカルが印象的だ。
2. This Is America
キャッチーでパワフルなギターリフとシンガロングできるサビが魅力的な楽曲。「自由の女神が僕に処女を捧げた」と歌う挑発的な歌詞が、アメリカ文化への風刺とユーモアを込めている。
3. I Want to Live
アップテンポのリズムに乗せて「生きたい」という強いメッセージを表現した楽曲。軽快なメロディとは裏腹に、内省的な歌詞が心に響く一曲だ。
4. Earthquake
タイトル通り、地震のように揺さぶられるビートと荒々しいギターが炸裂するナンバー。バンドの演奏力とアグレッシブなエネルギーが前面に押し出されている。
5. A Real Waste of Food
皮肉めいたタイトルとシンプルながら力強いメロディが特徴のトラック。歌詞には現代社会への風刺が込められており、バンドの知的な一面が垣間見える。
6. Perpetual Drag
グルーヴィーなベースラインと繰り返しのリフが中毒性を生み出す。アンセミックなコーラスがライブでの盛り上がりを想起させる一曲だ。
7. Dancing On My Own
ディスコの影響を感じさせるビートとロックサウンドが融合したダンサブルな楽曲。孤独をテーマにしつつも、踊りたくなるようなリズムが印象的だ。
8. And It Is
グラムロックへのオマージュを感じさせるトラック。華やかなギターとロイのボーカルが絶妙に絡み合い、70年代ロックのエッセンスを現代に蘇らせている。
9. The Hogyssey
リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」をロックアレンジしたインストゥルメンタル。ギターによる壮大なオーケストレーションが展開され、アルバムのハイライトのひとつとなっている。
10. The Strangest Dream
幻想的なサウンドとメロディが織りなすバラード。ドリーミーなシンセサイザーと繊細なボーカルが心地よい浮遊感を生み出している。
11. At Least I Got Laid
タイトルからもわかるように、ユーモアと皮肉が詰まった楽曲。軽快なビートとキャッチーなメロディが耳に残るポップロックナンバーだ。
12. The Horror…
ダークなサウンドと重厚なアレンジが際立つ終盤のトラック。4分47秒以降は無音が続き、隠しトラック「I Can’t Hear You」が登場する仕掛けもユニークだ。
アルバム総評
『The Hogyssey』は、Spacehogが持つグラムロックの影響、遊び心、そしてロックバンドとしての技術力を最大限に発揮したアルバムだ。「ツァラトゥストラはかく語りき」のロックアレンジなど、彼らの音楽的な冒険心とユニークな視点が詰め込まれている。全体として、アルバムはスペース・オデッセイの名にふさわしい壮大なサウンドスケープを描き出し、バンドの音楽的アイデンティティを確立した。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
『Ziggy Stardust』 by David Bowie
グラムロックの最高峰。スペーステーマや華やかなサウンドが共通している。
『A Night at the Opera』 by Queen
壮大なアレンジと遊び心のある楽曲が好きな人にぴったりな名盤。
『Mechanical Animals』 by Marilyn Manson
グラムロックとオルタナティブを融合させたコンセプチュアルな作品。
『Dig Your Own Hole』 by The Chemical Brothers
宇宙的なサウンドとエネルギッシュなビートが魅力のエレクトロ名盤。
『Goodbye Yellow Brick Road』 by Elton John
美しいメロディとストーリーテリングが光る、グラムロックの傑作アルバム。
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