Hansonは、アメリカ・オクラホマ州タルサ出身の兄弟3人によるポップ・ロック・バンドである。1997年の「MMMBop」が世界的な大ヒットとなり、10代前半から中盤の若い兄弟バンドとして一躍有名になった。
しかし、Hansonの本当の特徴は「MMMBop」だけでは見えにくい。彼らの音楽には1960〜70年代のロックやソウル、R&B、ピアノ・ポップの影響が強く、年齢を重ねるにつれて演奏も曲作りも厚みを増していった。
さらに重要なのは、1990年代のスターとして消費される道を選ばなかったことである。メジャーレーベルとの関係を離れ、自分たちのレーベルを設立。その後もアルバム制作とツアーを続けてきた。
1992年の結成から30年以上。Hansonは子ども時代のヒット曲を持つバンドではなく、長い時間をかけて自分たちの音楽と活動環境を作り上げてきたポップ・ロック・バンドである。
Hansonのメンバーと結成から世界的ブレイクまで
HansonはIsaac Hanson、Taylor Hanson、Zac Hansonの3兄弟で構成されている。Isaacがギター、Taylorがボーカルやキーボード、Zacがドラムを主に担当する。
バンドは1992年にタルサで結成された。当初から兄弟で歌い、1950〜60年代のロックンロールやソウル、R&Bなどを吸収しながら活動していた。
若い兄弟グループという見た目から、後にはアイドル的な存在として扱われることも多かった。しかし、彼らは最初から自分たちで楽器を演奏し、曲作りにも関わるバンドだった。
大きな転機となったのが、1997年のメジャーデビューアルバムMiddle of Nowhereである。
ここからシングルとして発売された「MMMBop」が世界各国で1位となり、Hansonは一気に世界的な人気を獲得した。当時の3人はIsaacが16歳、Taylorが14歳、Zacが11歳という若さだった。
「MMMBop」の明るいメロディと3兄弟のコーラスは強烈な印象を残した。その反面、ヒットがあまりにも大きかったため、その後のHansonには「一発屋」「90年代のティーン・ポップ」というイメージも付きまとった。
だが、彼らはそこで活動を終えなかった。
2000年にはThis Time Aroundを発表。前作よりロックやソウルの要素を強め、演奏面でも成長した姿を見せた。
その後、所属レーベルをめぐる環境が大きく変化する。大手音楽企業の再編の中で、Hansonが作りたい音楽とレーベル側が求める方向との間に距離が生まれていった。
最終的に彼らはメジャーレーベルを離れ、自分たちのレーベル3CG Recordsを設立する。2004年のUnderneathから本格的な自主活動へ移った。
この決断がHansonの長いキャリアを支えることになった。大きなヒットを狙うことより、自分たちのファンと直接つながりながらアルバムを作り、ツアーを続ける方向を選んだからだ。
2010年代以降も作品制作は続き、2017年には結成25周年を迎えた。2018年にはオーケストラと共演するString Theoryを制作し、2022年には結成30周年とともにRed Green Blueを発表している。
Hansonの音楽スタイルと特徴
Hansonの音楽で最も重要なのは、3人の声が重なるコーラスである。
Taylorが中心となって歌うことが多いが、IsaacとZacもボーカルを担当する。兄弟だけに声質の相性がよく、サビでは3人の声が一つの大きなメロディに聞こえる。
「MMMBop」の印象から明るいポップだけを想像されやすいが、実際にはソウルやR&Bから受けた影響がかなり強い。
Taylorの歌い方には、きれいに音程をなぞるだけではなく、声を少し荒らしたり、リズムを揺らしたりする感覚がある。特に後期になるほど、若い頃の高い声とは違う力強さが増している。
楽器の中心はギター、ピアノ、ベース、ドラムという昔ながらのバンド編成だ。電子音を大きく前に出すより、人が実際に演奏している感触を残すことを重視している。
リズムにも特徴がある。ロックの強いビートだけで押すのではなく、ソウルやファンクに近い跳ね方を使う曲が多い。そのため、ギター中心のバンドでありながら体を動かしやすい曲が多い。
もう一つ重要なのがメロディである。Hansonの曲はサビが非常に分かりやすい。これは「MMMBop」だけではなく、その後の「This Time Around」「Penny & Me」「Thinking ‘Bout Somethin’」などにも共通している。
複雑な音楽を作ることより、何度も歌いたくなる旋律を丁寧に作る。その姿勢が30年以上変わっていない。
Hansonの代表曲
「MMMBop」
1997年のMiddle of Nowhereからの大ヒット曲。Hansonを世界的に有名にしただけでなく、1990年代ポップを代表する曲の一つとなった。
明るいギター、跳ねるようなリズム、3兄弟の高いコーラスが一気に耳へ入ってくる。意味のない音のように聞こえる「MMMBop」というフレーズも強烈だ。
しかし歌詞は、楽しいだけの内容ではない。人間関係の多くは時間とともに消えていき、本当に残る人は少ないという考えが歌われている。非常に明るい音と、少し寂しい内容の組み合わせが面白い。
「Where’s the Love」
同じくMiddle of Nowhereに収録された代表曲。「MMMBop」よりもギターとバンド演奏が前に出ており、Hansonが単なるボーカルグループではないことが分かりやすい。
サビでは3人のコーラスが大きく広がる。ソウルや1970年代のポップ・ロックに通じる感覚もあり、Hansonの音楽的な土台を理解しやすい曲である。
「This Time Around」
2000年の同名アルバムを代表する曲。少年らしい軽さが目立ったデビュー期から、より力強いロック・バンドへ成長したことがよく分かる。
ピアノとギターを中心にしながら、演奏には重さが加わった。Taylorの歌声も以前より力強く、サビではゴスペルやソウルの影響を感じさせる大きなコーラスが響く。
「MMMBop」のイメージから先へ進みたい場合、最初に聴く価値のある一曲である。
「Penny & Me」
2004年のUnderneathを代表する曲。メジャーレーベルを離れ、自分たちのレーベルから活動を始めた時期のHansonを象徴する曲でもある。
アコースティック・ギターを中心にした軽やかなポップで、車で走りながら聴きたくなるような開放感がある。大げさな音を使わず、メロディとコーラスだけで曲を印象づけるHansonの強みがよく出ている。
「Thinking ‘Bout Somethin’」
2010年のShout It Outに収録された曲。Hansonが持つソウルやR&Bへの愛情が特に分かりやすい。
ホーンを使った軽快なアレンジと、跳ねるリズムが特徴だ。1990年代のティーン・ポップとはかなり違い、1960年代のソウルやリズム&ブルースを現代的なポップとして鳴らしている。
長いキャリアの中でHansonがどのような音楽を好んできたのかを知るうえでも重要な一曲である。
アルバムごとに見るHansonの進化
Middle of Nowhere(1997年)
Hansonを世界へ送り出したメジャーデビュー作である。
「MMMBop」の印象が圧倒的に強いが、アルバム全体を聴くとロック、ソウル、ピアノ・ポップなど幅広い要素が入っている。「Where’s the Love」「I Will Come to You」「A Minute Without You」など、メロディの強い曲が多い。
最大の魅力は3兄弟のコーラスだ。まだ非常に若い時期の録音ながら、曲そのものには1960〜70年代のポップやソウルを好んでいた彼らのルーツがすでに表れている。
This Time Around(2000年)
2作目では、よりロック・バンドらしい方向へ進んだ。
ギターとドラムが力強くなり、Taylorのピアノも存在感を増している。前作より音に重量感があり、少年バンドから大人のバンドへ移ろうとしていることがはっきり分かる。
タイトル曲「This Time Around」や「If Only」では、ソウルの熱さとロックの勢いが自然に組み合わされている。
商業的には「MMMBop」ほどの巨大な現象にはならなかったが、Hansonのその後を理解するうえでは非常に重要な作品だ。このアルバムで、彼らが流行に合わせてティーン・ポップを続けるバンドではないことが明確になった。
Underneath(2004年)
Hansonのキャリア最大の転換点となった作品である。
メジャーレーベルとの関係を終え、自分たちの3CG Recordsから発表された。音楽だけではなく、Hansonというバンドがどのように活動していくのかを決めたアルバムでもある。
「Penny & Me」をはじめ、以前より温かく自然な音が目立つ。派手な制作より、ギター、ピアノ、ドラム、ハーモニーを中心にした曲が多い。
「Strong Enough to Break」には、この時期の彼らが置かれていた状況とも重なる緊張感がある。自分たちの音楽を自分たちで管理するという選択が、その後20年以上続く独立した活動につながった。
The Walk(2007年)
Underneathで独立した後、さらに音楽の幅を広げた作品である。
ロックやポップだけでなく、ゴスペルやソウルの感覚が強くなっている。特にコーラスの厚みが目立ち、3人の声を一つの楽器のように使っている。
この時期になると、初期のアイドル的な印象はかなり薄くなる。長く演奏を続けてきたバンドとして、リズムや声の重なりをより意識した音になっている。
Shout It Out(2010年)
Hansonのソウル好きが最も分かりやすく表れた作品の一つである。
「Thinking ‘Bout Somethin’」をはじめ、ホーンやピアノを大きく使った明るい曲が多い。1960年代から70年代のソウルやR&Bを思わせるが、単なる昔の音楽の再現ではない。
Hansonがもともと持っていたキャッチーなメロディと、踊れるリズムを組み合わせている。その結果、デビュー時の明るさを残しながら、大人のバンドらしい演奏を楽しめる作品になった。
Anthem(2013年)
Anthemでは、再びギターとロックの力強さが前に出た。
前作のソウル色を残しつつ、ドラムやギターをより大きく鳴らしている。ライブで演奏したときに勢いが出る曲が多く、長年ツアーを続けてきたバンドらしい作品だ。
若い頃のHansonが「歌のうまい兄弟」という印象だったとすれば、この時期には完全にライブ・バンドとしての存在感が中心になっている。
String Theory(2018年)
Hansonの長いキャリアの中でも特に変わった作品である。
オーケストラ・アレンジャーのDavid Campbellと組み、自分たちの楽曲をフル・オーケストラとともに演奏した。「MMMBop」「Where’s the Love」「This Time Around」など過去の曲に加え、新しい曲も含まれている。
ストリングスを単に後ろへ足しただけではなく、曲の感情や物語をオーケストラで広げている点が特徴だ。
もともとHansonの曲はメロディがはっきりしている。そのため、大規模なオーケストラへ置き換えても曲の輪郭が失われにくい。長年書き続けてきた楽曲そのものの強さを確認できる作品でもある。
Against the World(2021年)
7曲で構成された作品で、2021年に一曲ずつ順番に発表された。
録音にはアメリカ南部の音楽史で知られるマッスル・ショールズのFAME Studiosも使われている。ロック、ソウル、ピアノ・バラードなど、Hansonが長年扱ってきた要素がコンパクトにまとめられている。
タイトル曲「Against the World」をはじめ、逆境の中でも前へ進むことが大きなテーマになっている。長期間活動してきた彼ら自身のキャリアとも重なって聞こえる作品だ。
Red Green Blue(2022年)
結成30周年の時期に発表されたアルバムで、Hansonというバンドの構造そのものに焦点を当てた作品である。
アルバムを3つのパートに分け、Taylorが「Red」、Isaacが「Green」、Zacが「Blue」をそれぞれ中心となって制作した。
Taylorの曲にはピアノを中心にした感情的なポップ、Isaacには温かいシンガーソングライター的な感覚、Zacにはギターを強く使ったロック色が見える。
3人が同じ方向を向いているから長く続いたのではなく、それぞれ違う音楽的な個性を持ちながら一つのバンドとして活動してきたことが分かる作品である。
Hansonが影響を受けた音楽
Hansonの音楽を理解するには、1990年代のポップだけを見るのではなく、さらに前の時代までさかのぼる必要がある。
兄弟は幼い頃から1950〜60年代のロックンロール、R&B、ソウル、モータウンなどを聴いて育った。彼らの音楽にコーラスとリズムが重要なのは、この背景と深く関係している。
特にソウルから受けた影響は分かりやすい。ボーカルをきれいに整えるだけではなく、声を押し出したり、複数人のコーラスでサビを大きくしたりする方法にその影響が表れている。
ロックでは、ギターを中心にしながらメロディを重視するクラシックなポップ・ロックの流れとつながっている。
また、ピアノを曲作りの中心に置くことも多い。Taylorのピアノは伴奏だけではなく、曲のリズムそのものを引っ張ることがある。
そのためHansonは、1990年代のボーイ・バンド文化と並べて語られるより、ソウルやロックンロールを土台にしたアメリカのポップ・バンドとして聴いた方が実際の音に近い。
Hansonが後の音楽シーンに残したもの
Hansonの影響を考えるとき、「MMMBop」のヒットだけを見ると重要な部分を見落としてしまう。
彼らが特に珍しかったのは、幼い時期に世界的なスターになった後も、そのイメージだけに頼らずバンド活動を続けたことである。
大手レーベルを離れ、自分たちのレーベルを作ったことも大きかった。現在ではアーティストが自主レーベルやオンラインのファンコミュニティを使って活動することは珍しくない。しかしHansonがその道へ進んだ2000年代前半は、現在ほど簡単ではなかった。
彼らはツアー、ファンクラブ、独自イベントなどを通してファンとの関係を維持した。この活動方法が、巨大なチャートヒットがなくなった後もバンドを続けられる基盤になった。
また、兄弟バンドとして30年以上同じ3人で演奏し続けていることも特徴的である。
若い頃のスターという出発点を否定するのではなく、「MMMBop」も現在まで演奏しながら、その横に新しい曲を増やしてきた。過去の成功から逃げるのでも、それだけに依存するのでもない。この距離感がHansonの長寿につながっている。
まとめ
Hansonは「MMMBop」で一躍有名になった1990年代の兄弟バンドだが、その後の30年以上の活動まで見ると、まったく違う姿が見えてくる。
3兄弟のコーラス、強いメロディ、ソウルやR&Bから受けた跳ねるリズム、ギターとピアノを中心にした生演奏が音楽の基本にある。This Time Aroundでロック色を強め、Underneathでは自主レーベルへ移行し、Shout It Outではソウル、String Theoryではオーケストラまで取り入れた。
巨大なヒットを再現し続けることより、自分たちで音楽を作り、ファンとの関係を維持しながら演奏を続ける道を選んだことがHansonの最大の特徴である。「MMMBop」は彼らの入り口として重要だが、Hansonの本当の面白さは、そのヒットの後に30年以上積み重ねてきた音楽にある。


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