
発売日: 2017年8月25日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ダンスロック、アートロック
概要
『Villains』は、Queens of the Stone Age(QOTSA)が2017年に発表した7作目のスタジオアルバムである。
前作『…Like Clockwork』(2013)が暗く内省的で、死と再生をテーマにした重厚な作品だったのに対し、本作は大きく方向を転換し、
“踊れる QOTSA”
を掲げた、刺激的で軽快、かつ挑発的なロックアルバムとなった。
プロデューサーに迎えられたのは、意外すぎる人選――
マーク・ロンソン。
Amy Winehouse、Bruno Mars などを手がけた“ポップの魔術師”であり、
QOTSA の荒々しいロックとは一見反対方向に位置する人物だ。
しかしこの組み合わせこそが、本作の最大の成功要因となった。
ロンソンは
- タイトで跳ねるビート
- 乾いたファンク
- グルーヴの強調
- 低音の整理
を導入し、ジョシュ・オムは - ミニマルなリフ
- 官能的なメロディ
- ニヒリズムとユーモアの混在
- “揺れるロック”という新しい解釈
を提示した。
結果として『Villains』は、
“踊れるのに暗い、軽やかなのに不穏”
という独自の二面性を獲得し、QOTSA のキャリアの中でも特異で、かつ非常に完成度の高いアルバムとなっている。
全曲レビュー
1曲目:Feet Don’t Fail Me
荘厳なシンセで幕を開けたあと、一気にダンスロックの奔流へ突入する見事なオープナー。
“足よ、俺を裏切るな”という歌詞が、不安と昂揚の中を突き進むような感覚を与える。
本作の美学を最も端的に示す一曲。
2曲目:The Way You Used to Do
ヴィランズを代表するファンキー・ロック。
跳ねるビート、艶のあるギター、ポップなのに奇妙なメロディ。
ジョシュ・オムの“セクシーで危険なロックンロール”が炸裂している。
3曲目:Domesticated Animals
重いリフがうねる異様なロック曲。
“飼いならされた動物”というメタファーを通じて、人間の服従や現代社会の管理体制を描く。
QOTSA 本来のダークさが強く出た楽曲。
4曲目:Fortress
アルバムの叙情的ハイライト。
“君の砦になりたい”という優しくも切実なメッセージが込められた、珍しいほど温度の高いバラード。
ロンソンのプロダクションによって透明感ある余白が生まれ、深い余韻が残る。
5曲目:Head Like a Haunted House
スピード感全開のパンク×ロカビリー×サイケの混合体。
幽霊屋敷を駆け抜けるような狂気と遊び心があり、ライブ映えする一曲。
6曲目:Un-Reborn Again
70年代グラムロックのような煌びやかさと退廃が混ざる曲。
“もう一度生まれ直すなんて冗談じゃない”という冷笑が、オムのニヒリズムを象徴する。
7曲目:Hideaway
粘りつくようなミッドテンポのダーク・ファンク。
ムードは怪しく、夜の都会を漂うような不穏さが続く。
QOTSA の“危険な魅力”が凝縮された一曲。
8曲目:The Evil Has Landed
本作中もっともスケールの大きなロック曲。
転調を重ねる構成がドラマティックで、後半の“飛翔”するような展開は鳥肌もの。
“悪(Evil)が着陸した”というタイトルが示す物語性も秀逸。
9曲目:Villains of Circumstance
長尺のエンディング曲。
静けさ・緊張・高まりが美しく連鎖し、
“状況という名の悪役に翻弄される人生”
を詩的に描く。
『…Like Clockwork』の叙情性と『Villains』のグルーヴ美学が融合したような、キャリア屈指の名曲。
総評
『Villains』は、QOTSA のキャリアにおいて
“第二の革命”
といえる重要作である。
その魅力は、
- ロックとダンスの刺激的な融合
- マーク・ロンソンの精密でファンキーなプロダクション
- 乾いたギターと跳ねるリズムの新たな関係性
- 暗いユーモアと都会的退廃
- 叙情バラードと狂気のミックス
にある。
ジョシュ・オムは“俺たちの音は変わっていない、ただ踊れるだけだ”と語ったが、
これは誇張ではなく事実である。
根底には変わらず
ミニマルリフ・砂漠性・ニヒリズム
が息づいており、それを新しい文脈で蘇らせたのが『Villains』だ。
本作は、ロックが“死んだ”と揶揄される2010年代後半において、
ロックはまだ進化できる
という強烈な証明となっている。
おすすめアルバム(5枚)
- …Like Clockwork / Queens of the Stone Age
前作の叙情性と比較することで本作の“軽やかな変化”が分かる。 - Rated R / Queens of the Stone Age
QOTSA の“奇妙でポップ”な側面のルーツ。 - Innerspeaker / Tame Impala
ダンスとロックの中間に位置する美学が共通。 - Arctic Monkeys / AM
夜のテンションとファンク的ビートの導入という共通性が強い。 - David Bowie / Scary Monsters
ポップと実験性、暗さと軽さが共存する点で響き合う。
歌詞の深読みと文化的背景
本作の歌詞は、
- 悪役(Villains)
- 社会の管理
- 都会の退廃
- 暗いユーモア
- 孤独と自虐
を軸にしている。
興味深いのは、
“悪役として生きることの肯定”
がテーマとして浮上している点である。
生き方が時代と合わないことを嘆くのではなく、
“そういう自分を受け入れて、踊って、生きていく”
という開き直りの美学がある。
2010年代後半、ロックはポップやヒップホップの影に隠れつつあった。
その中で QOTSA は、
ロックを捨てず、しかしロックを更新する方法
として“ダンス化”を選んだ。
『Villains』は、その選択が大成功だったことを示す作品である。
引用
- アルバム基本情報(2017年発表、7作目)
- 公開されているトラックリスト
- 2010年代後半ロック/ダンスロックの潮流に基づく一般的知識



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