発売日: 1986年9月25日
ジャンル: アートポップ、アヴァンギャルド、電子音楽
アルバム全体の印象
「Home of the Brave」は、ローリー・アンダーソンが1986年に発表したライブアルバムで、同名のコンサートフィルムのサウンドトラックとして制作された。本作は、彼女のパフォーマンスアートの中心的な要素を凝縮し、音楽的にもビジュアル的にも壮大なスケールで展開されている。映画としての「Home of the Brave」は、映像、ダンス、パフォーマンス、音楽を融合させた一大プロジェクトであり、アルバムではその音楽的な核心が楽しめる。
アルバムには、彼女の代表曲のライブアレンジや、この作品のために書き下ろされた新曲が収録されている。彼女の詩的な語りやシンセサイザー、ヴォコーダーを駆使したサウンドは、アートとポップスの境界を模索する挑戦的な姿勢を示している。また、ギタリストのエイドリアン・ブリューなどの豪華な参加ミュージシャンが、楽曲にさらなる奥行きを与えている。
「Home of the Brave」は、ローリー・アンダーソンの多面的な才能が結集したアルバムであり、彼女のライブパフォーマンスを音楽だけで追体験できる貴重な一枚である。
各曲解説
1. Smoke Rings
アルバムのオープニングを飾る、ミニマルな電子音とローリーの語りが中心の楽曲。静かな語り口がリスナーを作品の世界に引き込む。
2. White Lily
詩的で神秘的な語りが中心の短いトラック。緊張感と静けさが同居する独特の雰囲気が印象的。
3. Late Show
ポップでありながらも実験的なトラックで、リズミカルな語りとエイドリアン・ブリューのギターが際立つ一曲。
4. Talk Normal
冷静な語りと緊張感のあるサウンドが特徴的。テクノロジーと人間のコミュニケーションに関するテーマが込められている。
5. Language Is a Virus
前作「Mister Heartbreak」にも収録された代表曲で、ライブバージョンではエネルギーがさらに高まり、エイドリアン・ブリューのギターがダイナミックなアクセントを加えている。
6. Radar
短いインストゥルメンタルで、電子音とパーカッションが織りなす実験的なサウンドスケープが楽しめる。
7. Sharkey’s Night
ウィリアム・S・バロウズの語りが際立つ楽曲で、映画的な雰囲気と実験的なサウンドが融合している。
8. Credit Racket
軽快なリズムとシニカルな歌詞が特徴の楽曲。経済や資本主義社会を皮肉った内容が込められている。
9. Tightrope
壮大なフィナーレを飾る楽曲で、アルバム全体のテーマを反映した深い歌詞とドラマチックなサウンドが融合している。
アルバム総評
「Home of the Brave」は、ローリー・アンダーソンのパフォーマンスアートと音楽の融合を象徴する作品であり、ライブアルバムとしてだけでなく、独立した音楽作品としても高い完成度を誇る。彼女の詩的な語りと未来的なサウンドデザインが、1980年代のアートポップの最前線を示している。
特に「Language Is a Virus」や「Late Show」のような楽曲では、彼女のポップセンスと実験性が巧みに融合しており、エイドリアン・ブリューら参加ミュージシャンの卓越した演奏が楽曲にさらなる深みを加えている。本作は、ローリー・アンダーソンのパフォーマンスアートの全貌を知る上で欠かせない一枚であり、1980年代の音楽シーンにおける重要な作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Mister Heartbreak」 by Laurie Anderson
本作のスタジオバージョンともいえるアルバムで、「Language Is a Virus」などの楽曲を含む。
「Big Science」 by Laurie Anderson
デビュー作で、彼女の詩的な語りと電子音楽の融合を堪能できる。
「Remain in Light」 by Talking Heads
多層的なリズムと実験的なサウンドが特徴で、アンダーソンの作品と通じる部分が多い。
「Scary Monsters (and Super Creeps)」 by David Bowie
アヴァンギャルドなサウンドとポップスの融合が特徴の作品で、「Home of the Brave」のファンにおすすめ。
「The Dreaming」 by Kate Bush
革新的なサウンドとシュールな歌詞が印象的なアルバムで、アートポップ好きにぴったりの一枚。
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