発売日: 1990年4月19日
ジャンル: ポストハードコア、オルタナティブロック
アルバム全体の印象
『Repeater』は、Fugaziの初のフルアルバムであり、ポストハードコアというジャンルを定義付けた歴史的作品だ。このアルバムは、バンドの持つ政治的、社会的なメッセージを鮮烈な音楽表現を通じて伝えており、エネルギッシュな演奏と鋭い歌詞が特徴である。
Fugaziは、DCハードコアの伝統を受け継ぎながら、単なる暴力性や怒りを超えた知的で構造的な楽曲を作り上げた。『Repeater』では、硬質なギターワーク、タイトなリズムセクション、そしてリーダーのIan MacKayeとGuy Picciottoによるダイナミックなツインボーカルが見事に融合している。
歌詞には消費主義、社会的不平等、環境問題などがテーマとして盛り込まれており、鋭い批評性を持ちながらもリスナーにアクティブなメッセージを送っている。このアルバムはDIY精神を象徴する作品でもあり、Fugaziのインディーロック界における不動の地位を確立した。
トラックごとの解説
1. Turnover
アルバムの幕開けを飾る曲で、繰り返されるギターリフが不穏な雰囲気を醸し出す。歌詞は、消費主義とそれに伴う無意味なルーチンを批判している。
2. Repeater
タイトル曲であり、アルバムの核となる楽曲。攻撃的なギターと強烈なリズムセクションが特徴的で、「You say I need a job, I’ve got my own business」という歌詞が労働と搾取をテーマに鋭く切り込む。
3. Brendan #1
ドラマーBrendan Cantyのパワフルなリズムが主役となる楽曲。鋭いリフと緊張感のあるボーカルが印象的で、Fugaziの音楽的エッジを感じさせる一曲だ。
4. Merchandise
Fugaziの代表曲の一つで、商業主義を痛烈に批判する歌詞が核心を突く。「You are not what you own」というフレーズが、バンドの反消費主義的な姿勢を象徴している。
5. Blueprint
静と動を行き来するダイナミックな構成が特徴的な楽曲。社会の不平等と破壊的な構造を描きながら、聴き手を考えさせる力強いトラックだ。
6. Sieve-Fisted Find
複雑なリズムとハードなギターリフが交差する楽曲。攻撃的な音と内省的な歌詞が混ざり合い、アルバムの多面的な魅力を引き立てている。
7. Greed
重厚で鋭いリフが楽曲全体を支える。タイトル通り「貪欲」がテーマであり、権力と欲望の腐敗を描いている。
8. Two Beats Off
緊張感のあるリズムと、ピッチカットのボーカルが特徴的な楽曲。歌詞は不安と社会的疎外感を描写している。
9. Styrofoam
環境問題をテーマにした楽曲で、鋭い歌詞が聴き手の意識を刺激する。スピード感のある演奏と鋭利なリフが印象的。
10. Reprovisional
ピカピカと輝くギターリフとリズミカルなベースラインが際立つ。再構築を意味するタイトルが示すように、壊れたシステムへの対抗を歌う内容が特徴だ。
11. Shut the Door
アルバムを締めくくる長尺の楽曲で、ゆっくりとしたビートと重厚なギターが印象的。歌詞は疎外感や孤独をテーマにしており、アルバム全体を象徴する壮大なラストを飾っている。
アルバム総評
『Repeater』は、ポストハードコアのジャンルを代表するだけでなく、90年代インディーロック全体に影響を与えた革新的なアルバムだ。力強いメッセージ性、タイトな演奏、そしてDIY精神が見事に結集している。
バンドの鋭い批評精神とエネルギーに満ちたパフォーマンスは、リスナーに社会の不条理や個人の責任を考えさせるきっかけを提供する。『Repeater』は、音楽的にも思想的にも、今なお重要な意義を持つ作品であり、多くのリスナーに響き続けるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
13 Songs by Fugazi
Fugaziの初期EPをまとめた作品で、『Repeater』と同じく鋭いメッセージとタイトな演奏が楽しめる。
Double Nickels on the Dime by Minutemen
政治的でユーモアに富んだ歌詞と自由なアプローチが特徴の名盤。
Zen Arcade by Hüsker Dü
ポストハードコアとメロディアスな楽曲が融合した作品で、Fugaziファンにもおすすめ。
End on End by Rites of Spring
Fugaziのメンバーが以前在籍していたバンドの作品で、エモとハードコアの原点を探れる。
Entertainment! by Gang of Four
鋭い政治的メッセージとタイトなリズムが特徴で、Fugaziに影響を与えたポストパンクの名盤。
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