アルバムレビュー:Second Toughest in the Infants by Underworld

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1996年3月11日

ジャンル:テクノ、プログレッシブ・ハウス、アンビエント・テクノ、ダブ、エレクトロニック、ダンス・ロック

概要

Underworldの『Second Toughest in the Infants』は、1990年代英国エレクトロニック・ミュージックにおける最重要作のひとつであり、彼らの音楽的野心が最も大きなスケールで展開されたアルバムである。1994年の『Dubnobasswithmyheadman』によって、Underworldはテクノ、ハウス、ダブ、アンビエント、ロック的なヴォーカル表現を融合した独自のスタイルを確立した。続く本作では、その方法論をさらに拡張し、長尺構成、複雑なリズム、都市的な詩情、クラブ・ミュージックとしての身体性を、より流動的で壮大な形へ発展させている。

Underworldは、Karl Hyde、Rick Smith、Darren Emersonの3人体制によって黄金期を迎えたグループである。Rick Smithの構築力、Darren EmersonのDJ的なクラブ感覚、Karl Hydeの断片的で詩的なヴォーカルが結びついたことで、Underworldは単なるテクノ・ユニットでも、ロック・バンドでもない存在になった。彼らの音楽は、ダンス・フロアの機能性を持ちながら、アルバムとして聴いた時にも強い物語性と情景性を持つ。本作は、その特性が最も高い密度で表れた作品である。

アルバム・タイトルの『Second Toughest in the Infants』は、Underworldらしく意味がすぐには掴みにくい。直訳すれば「幼児たちの中で2番目にタフ」といった奇妙な言葉になるが、そのナンセンスさ、身体性、都市の落書きのような語感が、作品全体の感覚とよく合っている。Underworldの言葉は、明確なメッセージを伝えるためだけにあるのではない。広告、標識、会話、夢、記憶、クラブの中で聞こえる声、路上の断片が、ビートの上で反復されることで詩になる。その言語感覚は、本作でも非常に重要である。

『Second Toughest in the Infants』の最大の特徴は、長尺曲を中心とした流動的な構成である。冒頭の「Juanita : Kiteless : To Dream of Love」は約16分にわたる組曲的な楽曲であり、アルバムの開始と同時に、リスナーをUnderworldの巨大な音響空間へ引き込む。続く「Banstyle / Sappys Curry」も、前半と後半で表情を変えながら、アンビエント、ダブ、テクノ、都市的な浮遊感をつなぐ。曲は単なるトラックの集合ではなく、変化し続ける意識の流れとして存在している。

このアルバムが発表された1996年は、英国のエレクトロニック・ミュージックが大きく拡張していた時期である。The Chemical BrothersOrbital、Leftfield、The ProdigyThe Future Sound of London、Aphex Twin、Massive Attackなどが、それぞれ異なる方向からクラブ・ミュージック、ロック、アンビエント、ブレイクビーツ、ダブ、トリップホップを横断していた。その中でUnderworldは、特に「声」と「反復」の関係において独自だった。彼らはクラブ・ミュージックの機械的な推進力に、人間の声の不確かさ、都市の断片的な言葉、身体的な疲労や高揚を加えた。

本作の重要性は、エレクトロニック・ミュージックを「アルバムとして聴く」体験へ押し広げた点にもある。クラブ・トラックは本来、DJセットやダンス・フロアの中で機能することが多い。しかしUnderworldは、そうした機能性を保ちながら、家でヘッドフォンを通して聴いても、ひとつの長い夜、ひとつの都市の記憶、ひとつの精神的な旅として成立する音楽を作った。『Second Toughest in the Infants』は、その理想に最も近い作品のひとつである。

キャリア上では、本作は『Dubnobasswithmyheadman』の成功を受けて、Underworldがさらに大胆に自分たちの音楽を広げたアルバムである。後の『Beaucoup Fish』はより曲ごとの輪郭が明確で、ポップな聴きやすさも増すが、『Second Toughest in the Infants』はより深く、長く、流動的で、実験的である。Underworldのアルバムの中でも、特に没入感が強く、クラブ・ミュージックとアンビエント的な意識の流れが最も自然に融合している。

全曲レビュー

1. Juanita : Kiteless : To Dream of Love

冒頭曲「Juanita : Kiteless : To Dream of Love」は、本作の性格を決定づける壮大な長尺トラックである。約16分にわたるこの楽曲は、単一のポップ・ソングというより、複数のセクションが連続する組曲であり、Underworldの構成力、音響設計、リズム感覚、言葉の扱いが高いレベルで結びついている。

曲は静かな導入から始まり、徐々にビートとシンセの層が増していく。Underworldの長尺曲において重要なのは、単純な盛り上がりではなく、少しずつ音の景色が変化していくことである。この曲でも、リスナーはいつの間にか別の場所へ移動しているような感覚を味わう。始まりと終わりを直線的に結ぶのではなく、いくつもの状態を通過する音楽である。

「Juanita」という名前は、具体的な人物を連想させる。だが、歌詞の中の人物像は明確な物語として描かれるわけではない。Karl Hydeの言葉は、個人名、都市の断片、身体感覚、視覚的なイメージを組み合わせ、聴き手に断片的な印象を残す。Underworldの歌詞は、理解するものというより、通過するものに近い。街を歩いている時に目に入る看板や、聞こえてくる会話の一部のように、意味が完全には閉じない。

「Kiteless」というセクションに入ると、曲はさらに浮遊感を増す。凧がない、あるいは空へ上がる手段を失った状態を連想させる言葉であり、地上と空中の間にある不安定な感覚を呼び起こす。音楽もまた、地面に足がついているようでいて、どこか浮いている。ビートは身体を前へ進めるが、シンセや声は意識を上へ引き上げる。

「To Dream of Love」という言葉は、楽曲全体にロマンティックでありながら不確かな余韻を与える。愛を夢見ることは、愛がまだ現実ではないことも示している。Underworldの音楽において、愛や欲望はしばしば都市の匿名性、クラブの高揚、孤独と結びつく。この曲でも、愛は明確な物語ではなく、夜の中で一瞬見える光のように現れる。

この曲は、アルバムの入口として非常に大胆である。短い導入曲ではなく、最初からリスナーを長い流れの中へ放り込むことで、『Second Toughest in the Infants』が通常のエレクトロニック・アルバム以上の没入体験を目指していることを示している。Underworldの最高峰の長尺トラックのひとつであり、本作の核である。

2. Banstyle / Sappys Curry

「Banstyle / Sappys Curry」は、アルバムの中でも特に音響的な幅の広さを示す楽曲である。タイトルが二つに分かれていることからも分かるように、曲は複数の表情を持つ。前半は穏やかで浮遊感のある音像を中心に進み、後半ではよりリズムや低音の存在感が増していく。Underworldの音楽が、クラブ・トラックとアンビエント的な空間を滑らかに接続できることを示す重要な曲である。

冒頭部分には、夜の空気のような静けさがある。ビートは控えめで、シンセの柔らかい響きが広がる。『Dubnobasswithmyheadman』にも見られた都市の暗さはここにもあるが、本曲ではより広い空間が感じられる。暗さは閉塞感だけではなく、深さとして存在している。

Karl Hydeの声は、ここでも音響の一部として配置される。彼の言葉はストーリーを語るのではなく、音の中に浮かび、消えていく。Underworldのヴォーカルは、曲の感情を説明するのではなく、聴き手の意識を特定の方向へ揺らす役割を持つ。この曲では、声が非常に幽霊的で、都市の記憶のように響く。

後半の「Sappys Curry」的な部分では、リズムの感覚がよりはっきりし、ダブ的な低音や反復が前面に出る。タイトルの奇妙な響きも、Underworldらしい言葉の遊びである。日常的で、意味がありそうで、しかし明確には掴めない。そうした言葉が、低音とリズムの中で独自の質感を持つ。

この曲は、アルバム序盤において重要な緩急を作っている。冒頭曲が巨大な組曲としてリスナーを引き込んだ後、「Banstyle / Sappys Curry」はより深く、漂うような状態へ導く。Underworldがダンス・ミュージックだけでなく、アンビエント的な聴取体験にも優れたグループであることを示す楽曲である。

3. Confusion the Waitress

「Confusion the Waitress」は、タイトルからして非常にUnderworldらしい楽曲である。「混乱」という抽象的な状態に「ウェイトレス」という具体的な人物像を結びつけることで、日常の情景と精神状態が一体化する。Underworldの歌詞では、感情や意識の状態が、しばしば都市の中の人物や物体として現れる。この曲もその典型である。

サウンドは、比較的暗く、ミニマルな反復を基盤としている。ビートは強烈に前へ出るというより、じわじわと空間を支配する。シンセや低音の配置は抑制されているが、曲全体には緊張感がある。踊れる要素はありながらも、明るい解放感ではなく、迷路のような感覚が強い。

歌詞では、混乱、都市の夜、誰かを待つこと、サービス業的な情景、匿名の人物が浮かび上がる。ウェイトレスは、他者に何かを運ぶ存在であり、常に誰かの注文や視線の中にいる人物である。その存在が「混乱」と結びつくことで、都市生活の不安定さや、役割を演じることの疲労が暗示される。

Karl Hydeの声は、ここで少し不穏に響く。彼は感情を大きく歌い上げるのではなく、言葉の断片を配置し、聴き手に状況を想像させる。Underworldの音楽における「混乱」は、音のカオスではなく、秩序だった反復の中で精神が少しずつ揺らぐ状態として描かれる。この曲はその感覚をよく表している。

「Confusion the Waitress」は、アルバムの中盤に緊張感を与える曲である。長尺の流れの中で、都市的な不安と人物の影が現れ、作品により人間的な陰影を加えている。

4. Rowla

「Rowla」は、本作の中でも特にクラブ・トラックとしての強度が高い楽曲である。硬質なビート、反復するシンセ、低音の圧力によって、曲は非常に身体的に機能する。前曲までの流動的でアンビエントな要素から、ここではよりダンス・フロアへ焦点が移る。

この曲では、Underworldのミニマルな構成力が光る。音の要素は多すぎないが、反復の中で徐々にエネルギーが増していく。テクノの魅力は、同じフレーズが続くことで単調になるのではなく、聴き手の身体と意識がその反復に入り込み、細かな変化に敏感になるところにある。「Rowla」はその快楽を非常に明快に示す曲である。

ヴォーカルの要素は比較的抑えられており、トラックそのものの推進力が中心にある。Karl Hydeの言葉が全面に出る曲と比べると、この曲ではUnderworldのインストゥルメンタル的な強さが際立つ。Rick SmithとDarren Emersonのトラックメイキングが、ダンス・ミュージックとして高い完成度を持っていることが分かる。

タイトルの「Rowla」は意味が固定しにくい言葉であり、音としての響きが強い。Underworldの曲名には、こうした意味以前の語感が多く使われる。言葉が具体的な説明から離れ、音の一部になる。この曲でもタイトルはイメージを限定するのではなく、曲の身体的な推進力と結びつく。

「Rowla」は、アルバムのダンス・ミュージックとしての中核を担う楽曲である。長尺で詩的な曲が多い本作の中で、より純粋にビートと反復の快楽を提示する重要なトラックである。

5. Pearls Girl

「Pearls Girl」は、Underworldの代表曲のひとつであり、本作の中でも最も強い疾走感を持つ楽曲である。高速で進むビート、鋭いシンセ、断片的なヴォーカルが組み合わされ、曲全体が夜の高速道路を走るようなエネルギーを持つ。『Second Toughest in the Infants』の中で最も即効性があり、クラブ・アンセムとしての力も大きい。

タイトルの「Pearls Girl」は、真珠の少女、あるいは真珠をまとった女性を連想させる。だが、ここでも明確な人物像が描かれるわけではない。Underworldにおける人物名や人物イメージは、物語の登場人物というより、都市の中に一瞬現れる象徴である。Pearls Girlは、欲望、光、装飾、都市の夜の中の女性像として浮かび上がる。

Karl Hydeの歌詞は、スピード感のある断片で構成されている。車、風景、都市、身体、名前、言葉の切れ端が、ビートに乗って次々に流れる。意味を追うというより、その速度そのものを体験する曲である。言葉は高速で移動する視界の一部になり、聴き手はそれを完全には捉えられない。その捉えきれなさが、曲の魅力でもある。

音楽的には、ブレイクビーツ的な推進力とテクノの反復が結びついている。ドラムとベースは非常にタイトで、シンセは曲全体に緊張感を与える。Underworldの楽曲の中でも、身体を前へ押し出す力が特に強い。クラブでの機能性はもちろん、アルバムの流れの中でも大きなピークを作る。

「Pearls Girl」は、本作の高揚を代表する楽曲である。Underworldの詩的な言葉、都市の速度、クラブ・ミュージックの身体性が、最も直接的な形で結びついている。『Second Toughest in the Infants』を象徴する一曲であり、1990年代エレクトロニック・ミュージックの名トラックでもある。

6. Air Towel

「Air Towel」は、アルバム後半に配置された、やや不思議な質感を持つ楽曲である。タイトルの「Air Towel」は、公共トイレなどにあるハンドドライヤーを連想させる日常的な言葉であり、Underworldらしい都市の断片性を示している。非常に具体的で、少し無機質で、しかし音としては奇妙な響きを持つ。

サウンドは、前曲「Pearls Girl」の疾走感とは異なり、より細かい音の配置と反復が中心になる。ビートはあるが、曲全体は少し乾いていて、機械的な空間を感じさせる。公共空間、駅、クラブのトイレ、深夜の施設のような、都市の裏側のイメージが浮かぶ。

Underworldの魅力は、こうした一見取るに足らない日常の物体や場面を、音楽の中で詩的なものに変える点にある。「Air Towel」という言葉は、普通なら美しいタイトルではない。しかし、Underworldの文脈では、都市生活の具体的な断片として機能する。クラブや街の中で、身体が水に濡れ、風で乾かされ、機械音を聞く。そのような身体的な記憶が、曲の中に滲む。

この曲は、アルバムの中で大きなアンセムではないが、作品の都市的な質感を支える重要なトラックである。Underworldの音楽が、壮大な高揚だけでなく、都市の細部、機械音、日常の隙間にも耳を向けていることを示している。

7. Blueski

「Blueski」は、本作の中でも比較的短く、穏やかな楽曲である。タイトルは「Blue Sky」を崩したようにも見え、青空のイメージと、どこか言葉のずれを含むUnderworldらしい表記が共存している。アルバム全体が夜や都市の暗さを多く含む中で、この曲は一時的に空を見上げるような感覚をもたらす。

サウンドは、アコースティックな質感や柔らかな響きがあり、強いビートよりも余韻が重視されている。Underworldはクラブ・トラックのイメージが強いが、彼らのアルバムにはこうした静かで空間的な楽曲が重要な役割を果たしている。「Blueski」は、長い夜の中で一瞬だけ見える青空のような曲である。

Karl Hydeの声は、ここではより親密で、柔らかく響く。歌詞は断片的ながら、重く沈むというより、少し開かれた感覚を持つ。タイトルに含まれる「blue」は、青空の明るさと、憂鬱の両方を連想させる。Underworldの音楽において、光は常に影と共に存在する。この曲にも、穏やかさの中に微かな寂しさがある。

「Blueski」は、アルバム終盤において重要な呼吸の役割を持つ。激しいビートや長尺の構成を通過した後、リスナーに一度空気を入れ替えさせる。アルバム全体のダイナミクスを考えるうえで欠かせない曲である。

8. Stagger

ラスト曲「Stagger」は、アルバムを静かに、しかし深い余韻を持って閉じる楽曲である。タイトルの「Stagger」は、よろめく、ふらつく、時間差で進むといった意味を持つ。長い夜、クラブ、移動、疲労、高揚を通過した後に、身体がまっすぐ進めず、少し遅れながら歩くような感覚がある。

サウンドは抑制され、ビートも過度に強くない。アルバムの最後に大きな爆発を置くのではなく、疲労と余韻の中で終わる構成になっている。これはUnderworldらしい終わり方である。彼らの音楽は、ピークの快楽だけでなく、その後の沈静、明け方の感情、音が消えた後の身体を描く。

Karl Hydeの声は、ここで非常に人間的に響く。長いアルバムの中で断片的な言葉を放ってきた声が、最後には疲れ、揺れ、静かに残る。歌詞は明確な結論を提示しないが、アルバム全体を通して描かれてきた都市の夜と身体の旅が、ここで終着するように感じられる。

「Stagger」は、終曲として非常に優れている。『Second Toughest in the Infants』は「Juanita : Kiteless : To Dream of Love」で壮大に始まり、「Pearls Girl」で大きな疾走を見せ、最後に「Stagger」でよろめくように終わる。この構成は、クラブの一夜、長距離移動、精神的な高揚と疲労を一つのアルバム体験として描いている。終わった後にも、ビートの残響と都市の光がしばらく残るような楽曲である。

総評

『Second Toughest in the Infants』は、Underworldのディスコグラフィの中でも最も野心的で、最も没入感の強いアルバムのひとつである。『Dubnobasswithmyheadman』で確立されたテクノ、ハウス、ダブ、アンビエント、ロック的ヴォーカルの融合を、より長尺で、より流動的で、より複雑な構成へ発展させている。アルバム全体がひとつの長い流れとして設計されており、曲ごとの独立性よりも、音楽体験としての連続性が重視されている。

本作の最大の魅力は、クラブ・ミュージックの身体性と、アンビエント的な意識の流れが自然に共存している点にある。「Rowla」や「Pearls Girl」は明確に身体を動かすトラックであり、ダンス・フロアでの強度を持つ。一方で、「Banstyle / Sappys Curry」「Blueski」「Stagger」では、音の余白や感情の沈み込みが重要になる。この両者を分けるのではなく、一つの夜の中で連続させるところに、Underworldのアルバム作家としての力がある。

Karl Hydeのヴォーカルと歌詞は、本作でも決定的な役割を果たしている。彼の言葉は、通常の歌詞のようにストーリーを語らない。個人名、都市の断片、日常の物、身体感覚、意味がずれたフレーズが、ビートの中で反復され、解体され、再び意味を持つ。これは、都市生活の意識そのものに近い。街を歩いている時、人はすべての看板や声を完全に理解しているわけではない。しかし、それらは確実に意識へ流れ込み、感情を作る。Hydeの歌詞は、その状態を音楽化している。

音楽的には、Rick SmithとDarren Emersonの役割も非常に大きい。Smithの構築力によって、長尺曲は単なる引き伸ばしではなく、時間の中で変化する建築物のように成立している。Emersonのクラブ的感覚によって、どれほど実験的であっても、音楽は身体性を失わない。この3人体制だからこそ、本作のようなバランスが成立した。Underworldの黄金期を語るうえで、本作は欠かせない。

『Beaucoup Fish』と比較すると、本作はより難解で、よりアルバム全体として聴かれるべき作品である。『Beaucoup Fish』には「Jumbo」「King of Snake」「Moaner」のような、曲ごとの輪郭が明確なトラックが多い。一方、『Second Toughest in the Infants』は、曲単位よりも流れとしての魅力が強い。冒頭から終曲まで、リスナーは一つの長い夜を通過するように聴くことになる。

1990年代の英国エレクトロニック・ミュージック史においても、本作は非常に重要である。クラブ・ミュージックをアルバム芸術として成立させる試みは、Orbital、Leftfield、The Chemical Brothers、The Future Sound of Londonなどにも見られたが、Underworldはそこにロック的な声と都市の詩を加えた。彼らの音楽は、機械的でありながら人間的で、反復的でありながらドラマティックで、抽象的でありながら具体的な都市の匂いを持つ。本作はその特徴が最も濃く表れた作品である。

日本のリスナーにとって、『Second Toughest in the Infants』はUnderworldの中でもやや入りにくい作品かもしれない。冒頭から長尺曲が続き、歌詞も分かりやすい物語ではなく、曲の構成も通常のポップ・ソングとは異なる。しかし、テクノやハウスに詳しくなくても、夜の都市を移動する感覚、長いビートに身体を委ねる感覚、言葉が意味を超えて流れていく感覚として聴けば、本作の魅力は伝わりやすい。特にヘッドフォンで通して聴くことで、アルバムの空間性と流動性がより明確になる。

総合的に見て、『Second Toughest in the Infants』は、Underworldの最高傑作候補のひとつであり、1990年代エレクトロニック・ミュージックの到達点の一つである。即効性よりも没入感、ポップな分かりやすさよりも流動する構成、単発のアンセムよりも長い音楽体験を重視した作品である。Underworldは本作で、クラブ・ミュージックが単なるダンスのための音ではなく、都市、身体、言葉、記憶、疲労、愛を描く巨大な表現形式になりうることを証明した。

おすすめアルバム

1. Underworld『Dubnobasswithmyheadman』

1994年発表の代表作。『Second Toughest in the Infants』の前提となるアルバムであり、Underworldがテクノ、ハウス、ダブ、アンビエント、ロック的ヴォーカルを融合したスタイルを確立した作品である。本作よりもダークで湿度が高く、Underworldの原点を理解するうえで欠かせない。

2. Underworld『Beaucoup Fish』

1999年発表のアルバム。『Second Toughest in the Infants』よりも曲ごとの輪郭が明確で、ポップな聴きやすさとクラブ・トラックとしての強度が共存している。「Jumbo」「King of Snake」「Moaner」などを収録し、Underworld入門としても適している。

3. Orbital『In Sides』

1996年発表のエレクトロニック・ミュージックの名盤。テクノ、アンビエント、長尺構成、メロディックな展開が高い完成度で結びついている。Underworldとはヴォーカルの扱いが異なるが、クラブ・ミュージックをアルバムとして深く聴かせる点で強く共通する。

4. Leftfield『Leftism』

1995年発表の英国エレクトロニック・ミュージックの重要作。ハウス、ダブ、レゲエ、テクノ、ブレイクビーツを横断し、クラブ・ミュージックをアルバム表現へ拡張した作品である。Underworldと同時代の英国クラブ・カルチャーを理解するうえで非常に関連性が高い。

5. The Future Sound of London『Lifeforms』

1994年発表のアンビエント/エレクトロニック作品。クラブ・ミュージックの機能性から離れ、音響空間や意識の流れを重視したアルバムである。『Second Toughest in the Infants』のアンビエント的な没入感や長尺構成を別の角度から理解するために適した作品である。

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