発売日: 2024年4月12日
ジャンル: インディーポップ、オルタナティヴロック、ポップロック
概要
『I’m Doing It Again Baby!』は、ノルウェーのシンガーソングライターgirl in red（Marie Ulven）が2024年にリリースしたセカンドアルバムであり、
デビュー作『If I Could Make It Go Quiet』で築いた個人的な語り口を、さらにスケールアップさせた力強い作品である。
本作では、引き続き自己探求や愛、不安といったテーマが中心に据えられているものの、
音楽的にはより開放的でダイナミックなサウンドへと進化を遂げている。
ロック色を強めたギターリフ、ドライビングなリズム、そして時折見せるドリーミーな側面が絶妙に交錯し、
girl in redの持ち味である「感情のむき出しさ」が、より堂々とした形で表現されている。
プロデュースはMarie自身に加え、Matias Tellezやアメリカの敏腕プロデューサーたちが参加。
リリース直後から、ポップシーンにおける新たな飛躍を感じさせる作品として高い評価を受けた。
全曲レビュー
1. I’m Back
短いイントロダクション。
力強く宣言するようなサウンドが、girl in redの”再出発”を高らかに告げる。
2. DOING IT AGAIN BABY
アルバムタイトル曲。
弾けるようなエネルギーと開放感に満ちたポップロックナンバー。
「またやってやる！」というリフレインが、自己肯定感の高まりを象徴する。
3. Too Much
愛に対して抱く”重すぎる感情”を、ダイナミックなロックサウンドで表現。
感情の洪水のようなボーカルと、切れ味の良いギターが印象的。
4. Phantom Pain
失った関係に対する”幻肢痛”のような感覚を描くバラード。
淡く漂うシンセと、Marieの脆くも力強い歌声が胸を打つ。
5. Pick Me
切実な愛情への渇望と、承認欲求のもろさをストレートに歌ったポップナンバー。
跳ねるようなビートとエモーショナルなメロディが絶妙に絡み合う。
6. Ugly Side
自己嫌悪と愛の両立をテーマにしたダークなロックチューン。
重たいギターリフと内省的なリリックが、じわじわと心に浸透していく。
7. You Need Me Now?
鋭い皮肉を込めたポップロック曲。
手遅れになってから戻ってくる人への苛立ちと、そこに潜むまだ消えない愛情を巧みに描く。
8. New Love
未来への希望を歌った美しいバラード。
ストリングスとギターが織りなす温かなサウンドに包まれて、
Marieの声が静かに、しかし確かにリスナーの心を震わせる。
9. A Night To Remember
過ぎ去った夜の輝きを追憶するノスタルジックなポップソング。
軽快なリズムと切ないリリックのバランスが絶妙である。
10. I Just Wanna Love You
アルバム後半を彩る、素直なラブソング。
複雑な感情を一度脇に置き、ただ愛したいという衝動をストレートに歌い上げる。
11. Bonus Track: doing it again (reprise)
タイトル曲のアンビエントなリプライズ。
浮遊感のあるサウンドとともに、アルバム全体のテーマ──愛、再生、希望──を静かに反芻する。
総評
『I’m Doing It Again Baby!』は、girl in redの成長と変化、そして彼女自身の”核”を失わない強さを感じさせる作品である。
音楽的には前作以上にオープンでエネルギッシュ。
ロック、ポップ、ドリームポップ的な要素を自在に行き来しながら、
一貫して「自分自身をまるごと肯定する」姿勢が貫かれている。
リリックも、恋愛、孤独、自己受容といったテーマをさらに深く掘り下げ、
ときに激しく、ときに優しく、聴く者に”生きること”の痛みと喜びをダイレクトに伝えてくる。
特に、タイトル曲「DOING IT AGAIN BABY」や「Too Much」では、
感情の爆発を躊躇せずに表現しており、girl in redが単なるインディーアイコンではなく、
本物の”ロックアーティスト”として羽ばたいたことを強く印象づける。
『I’m Doing It Again Baby!』は、痛みを抱えたまま、それでも前を向こうとするすべての人に、
力強いエールを送るアルバムである。
おすすめアルバム（5枚）
- Beabadoobee『Beatopia』
ドリーミーなギターサウンドとパーソナルなリリックがgirl in redと共鳴する。 - MUNA『MUNA』
愛、アイデンティティ、自己受容をテーマにしたエネルギッシュなポップ作品。 - Phoebe Bridgers『Stranger in the Alps』
内省と痛みを美しく描き出すソングライティングが共通している。 - Clairo『Sling』
繊細な感情表現と、オーガニックなサウンドアプローチが響き合う。 - Wolf Alice『Blue Weekend』
ロックとドリームポップの間を自在に行き来するサウンドが近い感触を持つ。
ファンや評論家の反応
リリース直後から、『I’m Doing It Again Baby!』は各国メディアで高評価を獲得。
特に「エネルギッシュでありながら、繊細さを失わない」「girl in redの新たなフェーズの幕開けを感じさせる」といった賛辞が寄せられた。
また、SNS上では、「このアルバムに救われた」「前向きになれる」という声も多く、
リスナーにとっても、単なる”聴く”を超えた”寄り添う”作品となっていることがうかがえる。
girl in redは、このアルバムを通じて、ポップシーンの中心から、
より広いロック／オルタナティヴシーンへと飛び立とうとしているのだ。
コメント