アルバムレビュー:Lust Lust Lust by The Raveonettes

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2007年11月12日 ジャンル:Indie Rock / Noise Pop / Shoegaze

概要

デンマーク出身のデュオ、The Raveonettesが2007年に発表した3作目のスタジオ・アルバム。前作『Pretty in Black』では50〜60年代のポップスやロックンロールへの愛情を比較的明瞭な音で示していたが、本作ではそこから再びノイズへ踏み込み、ギターの歪み、フィードバック、電子的なビートを前面に押し出している。Sune Rose WagnerとSharin Fooの男女ボーカルが作る甘いハーモニーは変わらないものの、その周囲を覆う音は以前より暗く、ざらついている。

録音の中心となったのはWagnerとFoo自身であり、制作も二人が主導した。The Jesus and Mary Chainを思わせるフィードバック・ノイズと、The Ronettesなどのガール・グループに通じる簡潔なメロディという、彼らが初期から持っていた二つの要素がここではより密接に結びついている。ただし単なる60年代ポップスの再現ではなく、ドラムマシンの硬い反復や、音像を曖昧にする大量の残響によって、2000年代のインディー・ロックとして組み直されている点が特徴だ。

タイトル通り歌詞には欲望や性的な緊張が頻繁に現れるが、それらは幸福な恋愛として描かれない。誘惑と孤独、快楽と後悔、親密さと距離感が同じ場所にあり、明るく覚えやすいメロディとの落差を作っている。12曲を約40分にまとめた構成も引き締まっており、ノイズ・ポップという彼らの基本形を、暗さと統一感の面で突き詰めた作品である。

全曲レビュー

1. 「Aly, Walk with Me」

低く反復するギターと機械的なビートから始まり、音数を抑えたまま不穏な空気を作るオープニング曲。男女の声は感情を強く押し出さず、同じ場所を漂うように重なるため、その背後で膨らんでいく歪みがいっそう大きく感じられる。後半ではギター・ノイズが壁のように広がり、甘いメロディと荒れた音響という本作の基本的な対比を最初の一曲で示している。

2. 「Hallucinations」

タイトルが示す幻覚的な感覚を、残響の深いボーカルとぼやけたギターで表現する。旋律そのものは簡潔で親しみやすいが、声と楽器の境界が曖昧になるようなミックスによって、目の前の景色が少しずつ歪んでいくように聞こえる。前曲の重いノイズを引き継ぎながら、こちらではポップなメロディをより前に出し、本作が騒音だけに頼った作品ではないことを早い段階で伝える。

3. 「Lust」

乾いたビートと反復するギターを土台に、欲望を冷静に眺めるようなボーカルが乗る。タイトルは直接的だが、演奏には官能的な暖かさよりも距離感があり、欲望そのものより、それに取りつかれた状態の空虚さを描いているようにも読める。短いフレーズを繰り返す構成も効果的で、何かから抜け出せず同じ場所を回っている感覚を強めている。

4. 「Dead Sound」

本作の中でも特にメロディの輪郭がはっきりした曲で、軽快に刻むビートと明るいコーラスが前へ進む勢いを作る。しかしギターには常にざらついた歪みが残り、爽快なポップソングには完全にはならない。死や消失を連想させる言葉と甘い歌声の組み合わせもThe Raveonettesらしく、60年代風の親しみやすさを暗い題材へ自然に接続している。

5. 「Black Satin」

太い低音と硬質なリズムによって、それまで以上に身体的なグルーヴを押し出す。ギターは細かなフレーズを聴かせるより、歪んだ音の塊としてリズムに絡み、Sharin Fooの抑えた歌声との対照を作る。黒いサテンという触覚的なイメージも含め、欲望を直接説明するのではなく、色や質感によって性的な緊張を感じさせる書き方が曲のサウンドによく合っている。

6. 「Blush」

前半のノイズを少し引かせ、柔らかなボーカルとシンプルな旋律を中心に置いた一曲。甘さのあるメロディには古いガール・グループ的な感触がある一方、背後のギターは輪郭をぼかすように鳴り続け、懐古的なポップスには収まらない。「赤面」を意味する題名も、露骨な欲望を扱う周囲の曲とは異なる、ためらいや親密さを思わせる。アルバム前半の密度をいったん緩める役割も果たしている。

7. 「Expelled from Love」

恋愛から「追放された」という強い題名に対して、歌唱は驚くほど落ち着いている。悲しみを大声で表現するのではなく、男女の声を淡々と重ねることで、関係が終わった後に残る感覚を冷たく見せている。ドラムの一定した反復と霞んだギターもその感情を支え、劇的な失恋歌ではなく、感覚が麻痺した後の時間を描くような曲になっている。

8. 「You Want the Candy」

短く覚えやすいフレーズと弾むビートが中心となり、アルバム後半に明快なポップ感を持ち込む。キャンディーという甘いイメージには誘惑や欲望を重ねて読むことができ、無邪気な言葉と性的な含みが同居するところは50〜60年代のポップソングを現代的にひねったようでもある。ノイズを残しながらも旋律を埋没させず、The Raveonettesの作曲の簡潔さがよく分かる。

9. 「Blitzed」

曲名通り、ぼんやりと酩酊したような音像を持つ。ボーカルは深い残響の中に置かれ、ギターも明確な輪郭を示さず、複数の音が重なった霞として広がっていく。それでも一定のビートが下で鳴り続けるため完全には漂流せず、夢のような上層と機械的な下層が分かれて聞こえる。後半へ進むにつれて強まる倦怠感を、音響そのもので示した曲である。

10. 「Sad Transmission」

比較的軽いテンポと耳に残る旋律を持ちながら、題名や歌詞から伝わる感情は寂しい。声を遠くへ飛ばすような残響処理は、誰かにメッセージを送っているのに距離が縮まらないという題名のイメージともよく重なる。ギターのノイズもここでは攻撃的に前へ出るのではなく、通信に混じる雑音のように周囲を覆い、孤独を音の距離として感じさせる。

11. 「With My Eyes Closed」

タイトルの「目を閉じたまま」という状態に合わせるように、サウンドも外界から切り離された感触を持つ。男女のハーモニーが中心にあり、その周囲でギターが長く尾を引くため、演奏の境界線がゆっくり溶けていく。終盤に置かれたことで、それまで繰り返されてきた欲望や誘惑の動きが弱まり、より内側へ沈んでいく場面として機能している。

12. 「The Beat Dies」

アルバムを閉じるのは、題名からして終幕を意識させる曲である。ビートは存在するものの祝祭的な高揚には向かわず、ボーカルとギターの残響が次第に余韻を強めていく。ここまで欲望を駆動力としてきた作品が、その先にある疲労や静けさへ到達するような曲順になっているのが面白い。大げさなクライマックスを作らず、熱が冷めた後の感触を残してアルバムを終える。

総評

Lust Lust Lustの強みは、The Raveonettesが以前から使ってきた要素を増やすのではなく、限られた材料を徹底して組み合わせていることにある。甘い男女ハーモニー、単純で強いメロディ、反復するビート、歪んだギターという基本構造は多くの曲で共通している。それでも、ノイズを巨大化させる曲、旋律を前面に置く曲、残響によって輪郭を消す曲と焦点を変えることで、同じ音色の中に起伏を作っている。

特に面白いのは、古いポップスの形式を使いながら、そこにある安心感を意図的に壊している点だ。50〜60年代のポップスを思わせるメロディなら本来はもっと明るく響きそうだが、低く硬いビートやフィードバックが周囲を覆うことで、親しみやすさの裏側に不安が残る。The Jesus and Mary Chain以降のノイズ・ポップと共通する発想ではあるものの、男女の声をほぼ無表情に重ねるThe Raveonettes独特の歌唱が、より冷たい質感を加えている。

歌詞でも同様に、欲望は単純な快楽として扱われない。誰かを求める気持ちは誘惑、喪失、孤独と隣り合わせであり、相手へ近づこうとするほど距離が目立つような場面が多い。その感覚を歌詞だけで説明せず、声を遠くに配置したミックスや、同じ場所を回り続けるリズムによって聞かせていることが、本作の統一感につながっている。

一方で、音色とテンポの範囲を意図的に狭くしているため、中盤以降を単調に感じる聴き手はいるだろう。しかし、その均質さは弱点であると同時に作品の狙いでもある。曲ごとの派手な変化より、約40分を通じて同じ暗い空間を維持することを選んだアルバムだからだ。初期のロックンロール志向と後年のより洗練されたドリーム・ポップ的な音作りの間にあり、The Raveonettesのノイズ、メロディ、退廃的なムードが特に濃い形でまとまった一枚である。

おすすめアルバム

Pretty in Black by The Raveonettes

前作では本作よりも60年代ポップスやロックンロールの輪郭が明瞭で、ゲストも交えた華やかな作りになっている。そこから『Lust Lust Lust』がどれだけ暗く閉じた音へ移ったかを比較しやすい。

Psychocandy by The Jesus and Mary Chain

甘いポップ・メロディを大量のフィードバック・ノイズで覆う方法を代表する1985年作。The Raveonettesとの直接的な音の共通点だけでなく、騒音と親しみやすさを両立させる発想をたどるうえでも適している。

Primary Colours by The Horrors

2009年の作品で、ノイズ、反復するリズム、サイケデリックな音響をポップソングへまとめている。同じ2000年代後半のインディー・ロックが、過去のノイズ・ロックをどう更新したかを別方向から確認できる。

Souvlaki by Slowdive

ギターを個々のフレーズより大きな音の層として扱い、残響の深い歌声と組み合わせたシューゲイズの代表作。本作より穏やかで広がりのある音だが、声とギターの境界を曖昧にする感覚には共通点がある。

In and Out of Control by The Raveonettes

本作に続く2009年作。ノイズの暗い密度をやや抑え、より明快なポップ・メロディとリズムを前面に出している。『Lust Lust Lust』で完成度を高めた男女ハーモニーを保ちながら、次の段階へ進んだ変化が分かりやすい。

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