発売日: 2013年4月2日
ジャンル: グランジ、ガレージロック、オルタナティブロック
Vanishing Pointは、シアトル出身のグランジバンドMudhoneyの9作目のスタジオアルバムであり、デビューから20年以上経った彼らが、初期のエネルギッシュで攻撃的なサウンドに立ち返った作品である。Mudhoneyはこのアルバムで、初期のグランジシーンの荒々しさとガレージロックの要素を維持しながらも、さらに円熟した一面を見せている。アルバムのタイトル「Vanishing Point」は、1971年のカルト映画を参照しており、アルバム全体に漂う反抗的で攻撃的な雰囲気とリンクしている。
本作では、マーク・アームの荒々しいボーカルとスティーブ・ターナーのファズギターが健在で、Mudhoney特有のノイジーなサウンドが際立っている。皮肉やユーモアを込めたリリックも多く、バンドが年月を経て円熟味を増しつつも、決して鋭さを失っていないことが感じられる。特に「I Like It Small」や「The Only Son of the Widow from Nain」など、ファズギターとパンキッシュなビートが融合した楽曲は、リスナーに強烈なインパクトを与える。
トラックごとの解説
1. Slipping Away
アルバムのオープニングを飾る、力強いリフが印象的なトラック。マーク・アームのボーカルがエネルギッシュで、Mudhoneyらしい荒々しさと勢いが詰まっている。
2. I Like It Small
キャッチーで皮肉の効いたリリックが特徴の楽曲。シンプルでダーティなサウンドが耳に残り、バンドのユーモアと反抗的な精神が感じられる一曲。
3. What to Do with the Neutral
スローで重厚なトラックで、どこかメランコリックな雰囲気が漂う。ファズの効いたギターとゆったりしたリズムが、陰鬱でありながらも引き込まれるサウンドを作り出している。
4. Chardonnay
ワインの「シャルドネ」を皮肉ったユーモラスな歌詞が印象的な曲で、疾走感のあるリズムが軽快。Mudhoneyの遊び心が全面に出た一曲。
5. The Final Course
パンキッシュなビートとノイジーなギターが絡み合うトラックで、ダークな雰囲気が特徴的。アームのボーカルが怒りと情熱に満ちており、アルバムの中でも特にエネルギッシュな楽曲。
6. In This Rubber Tomb
重厚でスローなリズムが特徴の曲で、陰鬱な雰囲気が漂う。シンプルな構成ながらも、ノイズとファズが織り交ぜられ、独特の空気感を生み出している。
7. I Don’t Remember You
キャッチーで疾走感のある楽曲で、パンキッシュなギターリフとエネルギッシュなドラムが印象的。シンプルながらも爽快感のあるサウンドが楽しめる。
8. The Only Son of the Widow from Nain
ダークで重いトラックで、聖書の逸話に基づいた皮肉の効いたリリックが印象的。ギターのリフが徐々に重厚さを増し、ムーディーな雰囲気が漂う。
9. Sing This Song of Joy
シンプルなリズムとポップなメロディが特徴の楽曲で、皮肉交じりのリリックが際立つ。Mudhoneyのダークなユーモアが感じられる軽快な一曲。
10. Douchebags on Parade
アルバムを締めくくる曲で、パンキッシュで皮肉たっぷりのリリックが強烈。エネルギッシュなリズムとアームの攻撃的なボーカルが印象的なフィナーレ。
アルバム総評
Vanishing Pointは、Mudhoneyがキャリアを積み重ねた後もなお、荒削りなエネルギーとユーモアを失わずに保ち続けたことを示す作品である。彼らのサウンドには初期のグランジやガレージロックの影響が色濃く残っており、ファズギターや皮肉交じりのリリックが、今も変わらぬMudhoneyらしさを伝えている。「I Like It Small」や「Chardonnay」など、シンプルでキャッチーな楽曲が多く、アルバム全体に親しみやすさが感じられる一方で、随所にユーモアや皮肉が散りばめられている。Vanishing Pointは、Mudhoneyの原点回帰とも言える一枚であり、彼らの根強いファンにとっても、グランジ好きな新しいリスナーにとっても楽しめるアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bleach by Nirvana
ニルヴァーナの初期作品で、粗削りなサウンドとダークなトーンがMudhoneyと共鳴する。シンプルながらもインパクトの強いサウンドが楽しめる。
Buzz Factory by Screaming Trees
サイケデリックなガレージロックとグランジが融合した作品で、シアトルのグランジシーンを代表する一枚。
Eggnog / Gluey Porch Treatments by Melvins
重厚でスラッジーなサウンドが特徴の作品で、Mudhoneyのヘビーな面が好きなリスナーにおすすめ。
Dry as a Bone by Green River
マーク・アームが在籍していたバンドの作品で、荒削りなパンクとグランジが融合しており、Mudhoneyのルーツが感じられる。
A Love Supreme by Mudhoney
ライブ感あふれるサウンドと、彼らのラフでエネルギッシュなパフォーマンスが詰まったアルバムで、Vanishing Pointのファンにとって必聴の一枚。
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