アルバムレビュー:Straight Shooter by Bad Company

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発売日: 1975年4月2日
ジャンル: ハードロック、ブルースロック、アリーナロック


“まっすぐ”に響く哀愁と力強さ——ロック黄金期の真芯を撃ち抜いた第2章

Straight Shooter』は、1975年にリリースされたBad Companyのセカンド・アルバムであり、デビュー作で確立した骨太なサウンドと感情の深みをさらに洗練させた作品である。
アルバムタイトルに込められた“ストレートな語り口”のとおり、本作ではシンプルな構成の中に、力強さと人間味が凝縮されたナンバーが並ぶ。

本作はまた、アメリカ市場においての成功を決定づけた作品でもあり、全米アルバムチャートで3位を記録。
Feel Like Makin’ Love」「Shooting Star」といった名曲を生み、ハードロックにおける「抒情性のバランス感覚」を提示した一枚として、現在も高い評価を得ている。


全曲レビュー

1. Good Lovin’ Gone Bad

アルバム冒頭を飾るのは、勢いのあるギターリフとロジャースのシャウトが炸裂する痛快なロックンロール。
恋愛の苦みを痛快にぶっ飛ばすような潔さが爽快。シングルとしても人気。

2. Feel Like Makin’ Love

バッド・カンパニーを代表するラブバラードにして、ハードロックとアコースティックの融合が見事な名曲。
サビで炸裂するギターのダイナミズムと、ロジャースの甘くも力強い歌唱が印象的。
「静」と「動」の美学が詰まったロック・クラシック。

3. Weep No More

サイモン・カークによるコンポジション。
ゴスペル調のコーラスとピアノが柔らかな温度感を添える、異色ながらも深い情感を持った一曲。
メンバー各人の音楽的引き出しの広さが垣間見える。

4. Shooting Star

名曲中の名曲。一人の若者の夢と破滅を描いた、ロック・ヒーローへのレクイエム。
“Johnny”という架空の人物に託された、70年代のロックスター神話の光と影が物語調で綴られる。
アコースティック・ギターの鳴りとドラマチックな展開が絶妙。

5. Deal with the Preacher

ブルージーなギターとソウルフルなシャウトが炸裂する、ライブ映え必至のロックナンバー。
宗教的イメージを絡めながらも、信念や道徳との葛藤を“取引”になぞらえる視点がユニーク。

6. Wild Fire Woman

スピード感あふれるブギー調のロック。
“手に負えない女”をテーマにしたロックの王道的主題を、軽快なリズムとラルフスのギターが盛り上げる。ライブの定番曲。

7. Anna

アルバム内では比較的穏やかなナンバー。
パーソナルで哀感のあるラブソングで、ロジャースの包み込むようなボーカルが際立つ。
アレンジは控えめながら、感情のディテールに満ちている。

8. Call on Me

ラストを飾るのは、力強くも優しいメッセージが込められたミディアム・テンポのロックバラード。
“必要なときは呼んでくれ”という、男の友情や愛情を感じさせる温かな楽曲。


総評

Straight Shooter』は、Bad Companyが“男のロック”という様式を確立したデビュー作をさらに深化・洗練させた名作である。
激しいだけではなく、しっかりと心に触れるバラードや、物語性を帯びたドラマチックな構成も随所に織り込まれており、70年代ロックの懐の深さを感じさせる。

ポール・ロジャースの歌声には、泥臭さとエレガンス、強さと哀しみが同居しており、それを包み込むようなバンドの演奏も実に美しい。
“まっすぐ”という言葉がこれほどよく似合うアルバムはない。
誠実に、力強く、情熱を音に変えた一枚——それが『Straight Shooter』である。


おすすめアルバム

  • Free『Highway』
     ロジャースとカークのルーツ。静かな情熱と渋さに満ちた一枚。
  • Rod Stewart『Every Picture Tells a Story』
     物語性のあるロックとソウルフルなボーカルが共鳴。
  • The Faces『Ooh La La』
     無骨で味わい深いブリティッシュ・ロックの粋。
  • Lynyrd SkynyrdSecond Helping
     ドラマ性と骨太なロックの融合。アメリカンな“Straight Shooter”。
  • ZZ Top『Tres Hombres』
     ブルースに根ざしたグルーヴと男臭さを持つ名盤。

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