アルバムレビュー:Shakedown Street by Grateful Dead

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1978年11月15日

ジャンル:ジャム・ロック、ファンク・ロック、ディスコ・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロック、サイケデリック・ロック

概要

Grateful Deadの10作目のスタジオ・アルバムであるShakedown Streetは、バンドの長いキャリアの中でも特に時代の空気を強く反映した作品である。1970年代後半、ロックを取り巻く状況は大きく変化していた。パンクは既存のロックの肥大化を批判し、ディスコはダンス・ミュージックとして大衆文化の中心に進出し、ファンクやソウルのリズムはロック・バンドにも大きな影響を与えていた。Grateful Deadは1960年代サンフランシスコ・サイケデリック・シーンを出発点とし、即興演奏とライヴ共同体を核に成長してきたバンドだったが、本作ではその伝統に、当時のディスコ/ファンク的なグルーヴを積極的に接続しようとしている。

本作のプロデューサーを務めたのは、Little FeatのLowell Georgeである。この人選は非常に重要である。Little Featは、ロック、ニューオーリンズR&B、ファンク、カントリー、ブルースを独自に融合したバンドであり、ゆるく粘るグルーヴと高度な演奏力を両立させていた。Grateful DeadとLittle Featは、いずれもアメリカ音楽の多様な伝統をロックの中で再編成するバンドだったが、その方法論は異なっていた。Grateful Deadがライヴにおける長時間の即興と共同体的な拡張を重視したのに対し、Little Featはより曲単位のリズム感、アンサンブルの粘り、都市的なファンク感覚を強く持っていた。Lowell Georgeの参加により、Shakedown StreetはGrateful Deadのディスコグラフィの中でも、よりリズムと質感に意識を向けた作品となっている。

アルバム・タイトル曲「Shakedown Street」は、その象徴である。Grateful Deadの楽曲としては珍しく、明確にファンク/ディスコの影響を感じさせるグルーヴを持ち、のちにライヴでも重要なレパートリーとなった。リスナーや批評家の間では、本作はしばしば「Disco Dead」と呼ばれることもあるが、その表現はやや単純化されている。確かにタイトル曲にはディスコ的な四つ打ち感やファンク的なベースラインがあるが、アルバム全体はディスコ作品ではない。フォーク・バラード、カントリー・ロック、ゴスペル風のコーラス、伝統曲の再解釈、レゲエ的な揺れなどが混在しており、Grateful Deadらしいジャンル横断性は依然として保たれている。

前作Terrapin Stationでは、外部プロデューサーKeith Olsenによる大掛かりなオーケストレーションや合唱が導入され、バンドの神話的・プログレッシブな側面が強調された。それに対してShakedown Streetは、より身体的で、街路感覚のあるアルバムである。タイトルに含まれる「Street」という言葉が示す通り、本作では宇宙的な寓話や壮大な組曲よりも、街角、ダンス、関係のすれ違い、日常の移動、共同体のざわめきが前面に出る。1970年代後半のGrateful Deadが、ライヴ・バンドとして巨大化しながらも、時代のダンス・グルーヴや都市的な音楽感覚を取り込もうとしていたことが分かる。

ただし、本作は発表当時から評価が分かれた作品でもある。Grateful Deadの魅力を長尺即興やアメリカーナ的な歌心に求めるリスナーにとって、ディスコ/ファンク的な要素や整えられたプロダクションは違和感をもたらした。一方で、タイトル曲や「Fire on the Mountain」「I Need a Miracle」などは、のちのライヴで大きく成長し、バンドの重要なレパートリーとなった。つまり本作は、スタジオ・アルバムとしての完成度だけでなく、ライヴでの発展可能性を含めて評価されるべき作品である。

Shakedown Streetは、Grateful Deadが1970年代末の音楽環境に対して、どのように反応したかを示すアルバムである。パンクのように過去を切断するのではなく、ディスコのように完全にダンス・フロアへ向かうのでもなく、彼らは自分たちの雑多な音楽的土壌に、新しいリズムの感覚を取り込んだ。その結果、本作はやや不均質で、時に軽く響く部分もある。しかし、その不均質さこそがGrateful Deadらしい。彼らは一つの様式に収まるバンドではなく、ブルース、フォーク、カントリー、ジャズ、ファンク、レゲエ、サイケデリアを、ライヴとスタジオの中で絶えず変化させてきた。本作は、その変化の一局面を記録した作品である。

全曲レビュー

1. Good Lovin’

アルバム冒頭を飾る「Good Lovin’」は、The OlympicsやThe Young Rascalsのヴァージョンでも知られるR&B/ロックンロールのカバーである。Grateful Deadはこの曲を1960年代からライヴで取り上げており、特にRon “Pigpen” McKernan在籍期には、彼のR&B的な歌唱と観客を巻き込むパフォーマンスによって重要なレパートリーとなっていた。本作ではBob Weirがリード・ヴォーカルを担当し、より軽快で整ったロック・ナンバーとして提示されている。

音楽的には、シンプルなR&Bの構造を保ちながら、Grateful Deadらしいゆるやかなグルーヴが加えられている。オープニング曲としての役割は明確で、アルバムを難解な方向ではなく、親しみやすく身体的なリズムから始めている。ドラムとベースは軽く跳ね、ギターは細かく刻み、全体として明るいパーティー感覚を持つ。

歌詞のテーマは非常に直接的で、愛と身体的な喜びを求める内容である。Grateful DeadのRobert Hunter的な象徴性や神話性はここにはない。むしろ、この曲はR&Bの基本にある、ダンス、欲望、呼びかけ、即時的な快楽をアルバム冒頭に置く役割を果たしている。Shakedown Streetが前作Terrapin Stationの壮大な物語性から離れ、よりリズムと身体へ向かうアルバムであることを示す選曲といえる。

ただし、スタジオ版の「Good Lovin’」は、ライヴでの爆発力に比べるとやや整いすぎた印象もある。Grateful Deadにとってこの曲の本領は、観客とのやり取りや即興的な展開にあった。スタジオ録音ではその熱狂が抑えられているが、その代わりにアルバム全体の軽快な入り口として機能している。

2. France

「France」は、Bob Weir、Mickey Hart、Robert Hunterによる楽曲で、Donna Jean Godchauxがリード・ヴォーカルを担当している。本作の中でも特に異色の曲であり、Grateful Deadの代表的なレパートリーというより、1970年代後半のスタジオ・アルバムならではの試みとして位置づけられる。

音楽的には、カリブ海音楽や軽いレゲエ、ラウンジ的なポップ感覚を思わせる柔らかいリズムが特徴である。バンドの典型的なジャム・ロックとは異なり、曲調は軽く、どこかリゾート的な浮遊感を持つ。Mickey Hartの関与もあり、リズムには通常のロックとは違う揺れがあるが、それは深いトランスへ向かうというより、軽やかな装飾として機能している。

歌詞には、フランスという地名が持つ異国情緒、旅行、ロマンス、距離感が漂う。Robert Hunterの作詞としては比較的軽いトーンであり、Grateful Deadの深い寓話的な詞世界を期待すると、やや肩透かしに感じられるかもしれない。しかし、アルバム全体の中では、タイトル曲の都市的なファンクや「Good Lovin’」のR&B的な陽気さと並び、本作の多面的なリズム感覚を広げる役割を果たしている。

Donna Jeanのヴォーカルは、Grateful Deadの中ではしばしば評価が分かれる要素だが、この曲では彼女の明るく柔らかい声が曲調に合っている。Grateful Deadの中で女性ヴォーカルが前面に出る曲は多くないため、「France」はバンドのカタログの中でも独自の質感を持つ。ただし、ライヴで長く発展した曲ではなく、アルバム内の小さな実験として捉えるのが適切である。

3. Shakedown Street

タイトル曲「Shakedown Street」は、本作の中心であり、Grateful Deadの後期ライヴ・レパートリーの中でも重要な曲となった楽曲である。Jerry GarciaとRobert Hunterによるこの曲は、バンドとしては珍しく、明確にファンク/ディスコの影響を取り入れている。Phil Leshのベースライン、ドラムの粘るグルーヴ、ギターのカッティング、Garciaの余裕あるヴォーカルが結びつき、Grateful Deadの音楽に新しい身体性をもたらしている。

音楽的には、従来のGrateful Deadのフォーク/カントリー的なソングライティングとも、長尺サイケデリック・ジャムとも異なる。ここではコード進行よりもリズムの反復が中心であり、ベースとドラムが曲の骨格を作る。ディスコ的な反復性を持ちながらも、完全にダンス・ミュージックとして均質化されているわけではなく、バンド特有のゆるさと隙間が残されている。そのため、曲はクラブ向けの硬いビートではなく、ライヴ会場でゆっくりと広がるファンク・ジャムの原型として機能する。

歌詞のテーマは、街の変化、共同体の衰退、そしてその中にまだ残る可能性である。「You tell me this town ain’t got no heart」という印象的なフレーズは、街にはもう心がないと言われるが、実際にはよく見れば何かが残っている、という二重の視点を持つ。これはGrateful Deadのコミュニティ観とも深く関わる。表面的には衰退し、空洞化し、商業化したように見える場所にも、音楽と人々の集まりによって再び心が宿るという感覚がある。

「Shakedown Street」という言葉は、のちにGrateful Deadのコンサート会場周辺に形成される露店やファン文化の通称としても定着した。つまりこの曲は、単なるアルバム・タイトル曲を超え、Deadhead文化の一部を象徴する言葉となった。街路は商業、祝祭、怪しさ、共同体が交錯する場所であり、Grateful Deadのライヴ文化そのものを表す空間でもある。

スタジオ版は比較的コンパクトだが、ライヴでは大きく拡張され、ファンク・ジャムとして発展した。Grateful Deadが1970年代後半以降のリズム感覚を取り入れつつ、自分たちの即興文化へ接続した代表例であり、本作の存在意義を最も明確に示す一曲である。

4. Serengetti

「Serengetti」は、短いインストゥルメンタル曲であり、Mickey HartとLowell Georgeの関与が感じられるリズム中心の小品である。タイトルはアフリカのセレンゲティを思わせるが、綴りは一般的な「Serengeti」とは異なっており、正確な地理というよりも、異国的な響きやリズムのイメージを喚起する言葉として機能している。

音楽的には、パーカッションとリズムの質感が中心で、通常の歌ものではない。Grateful Deadのディスコグラフィにおいて、こうした短いリズム・トラック的な曲は、Mickey Hartの打楽器や非西洋音楽への関心を反映している。彼はバンドの中でも特にワールド・ミュージック的なリズムや儀式的な音響に関心を持ち、のちのソロ活動やDeadの「Drums」セクションにもその要素を発展させていく。

この曲は、アルバム全体の中で大きなメロディや歌詞を担うものではない。むしろ、前曲「Shakedown Street」のファンク的なグルーヴから、次曲「Fire on the Mountain」へ向かう間に、リズムの空間を一度抽象化する役割を持つ。短いながらも、Shakedown Streetが単なるロック・アルバムではなく、リズムの多様性を意識した作品であることを示している。

ただし、楽曲単体としては断片的であり、Grateful Deadの代表的な魅力を示す曲とは言いにくい。アルバム内のつなぎ、あるいはリズム・スケッチとして捉えるのが自然である。こうした小品が挟まれることで、本作には通常の曲集とは異なる雑多な空気が生まれている。

5. Fire on the Mountain

「Fire on the Mountain」は、Mickey HartとRobert Hunterによる楽曲で、Grateful Deadのライヴ・レパートリーの中でも非常に重要な曲である。スタジオ版は比較的穏やかで、ゆったりとしたグルーヴを持つが、ライヴではしばしば「Scarlet Begonias」と組み合わされ、「Scarlet > Fire」という流れで大きく発展した。Grateful Dead後期の代表的なジャム・ペアリングの一つであり、本作収録曲の中でも特に長く愛された楽曲である。

音楽的には、レゲエやファンクの影響を含む緩やかなリズムが特徴である。強く疾走するのではなく、浮遊するように進む。Garciaのヴォーカルは軽やかで、ギターも細かいフレーズを漂わせるように弾かれる。Phil Leshのベースは、リズムの中で自由に動きながら、曲に独特の浮遊感を与えている。Mickey Hart作曲らしく、リズムの反復が曲の中心にあり、歌はその上をゆるやかに流れていく。

歌詞は、山の火、危険、警告、音楽家の運命、時間の流れといったイメージを含む。Robert Hunterの詞は、ここでも一義的な物語を語るのではなく、象徴的なフレーズを重ねている。「Fire on the mountain」という言葉は、遠くに見える危機、内側から燃えるエネルギー、あるいは祝祭の炎としても解釈できる。曲調は穏やかだが、歌詞にはどこか不穏な気配がある。

この曲の魅力は、強いメッセージを押し出すのではなく、リズムとメロディの反復によって聴き手をゆっくりと巻き込む点にある。スタジオ版はライヴ版に比べて短く、やや控えめだが、曲の基本的な美しさはよく示されている。特にGarciaの歌とギターは、派手ではないが非常に柔らかく、曲全体に温度を与えている。

アルバムの中では、「Shakedown Street」と並んで、本作のリズム志向を代表する曲である。ファンク/ディスコ的なタイトル曲に対し、「Fire on the Mountain」はよりレゲエ的でゆるやかなグルーヴを持ち、Grateful Deadのリズム感覚の幅を示している。

6. I Need a Miracle

「I Need a Miracle」は、Bob WeirとJohn Perry Barlowによる楽曲で、アルバム後半にエネルギーを与えるロック・ナンバーである。後にライヴでも頻繁に演奏され、特にテンポの速い力強い曲として、セットの流れに勢いをつける役割を果たした。タイトルの「奇跡が必要だ」という言葉は、切迫感とユーモアを同時に持つ。

音楽的には、ファンクやディスコ的なゆるいグルーヴとは異なり、よりストレートなロックの推進力が前面に出ている。Bob Weirのヴォーカルは勢いがあり、ギターも鋭く刻まれる。ドラムは強く、曲全体がライヴ向きのダイナミズムを持つ。Grateful Deadの中でWeirは、Garciaの柔らかく流れるメロディとは対照的に、リズムと角度のあるロック感覚を担うことが多いが、この曲はその代表例である。

歌詞は、欲望、ロマンス、過剰な期待、救済への願望を半ば冗談めかして描いている。WeirとBarlowの楽曲には、しばしばアメリカ的な男臭さ、滑稽な自意識、ロックンロール的な誇張が含まれる。この曲でも、奇跡を求める語り手は切実でありながら、どこか大げさでユーモラスでもある。

「I Need a Miracle」は、深遠なGrateful Deadを求める聴き手にとっては軽く感じられるかもしれない。しかし、バンドのライヴにおいては、こうした直線的なロック曲が重要な役割を果たしていた。長いジャムや内省的なバラードだけではなく、観客を一気に引き上げる曲が必要だった。この曲は、その機能を明確に担っている。

7. From the Heart of Me

「From the Heart of Me」は、Donna Jean Godchauxが作詞・作曲し、リード・ヴォーカルを担当した楽曲である。本作の中でも特に柔らかく、内省的な位置を占める曲であり、Grateful Deadのカタログの中ではやや珍しい女性視点のバラードとして聴くことができる。

音楽的には、フォーク・ロックやソフト・ロックに近い穏やかな質感を持つ。派手な即興や強いリズムではなく、メロディと声が中心である。Donna Jeanのヴォーカルは、曲の親密さを強調し、GarciaやWeirとは異なる感情の温度をアルバムに加えている。バンドの演奏も控えめで、歌を支えることに徹している。

歌詞のテーマは、心からの語り、愛情、つながり、誠実さである。タイトル通り、外向きのロックンロール的な身振りではなく、内側から出てくる感情を伝えようとする曲である。Shakedown Street全体の中では、タイトル曲や「Fire on the Mountain」がリズムの反復による身体性を担うのに対し、この曲は感情の静かな面を担っている。

ただし、Grateful Deadの代表曲として語られることは少ない。バンドの本質的な強みである即興性やHunter/Garciaの象徴的な歌詞世界からはやや外れており、アルバム内でも小品的な印象を残す。しかし、この曲があることで、本作は単にファンクやディスコへの接近だけでなく、メンバーそれぞれの個性が反映された作品であることが分かる。

8. Stagger Lee

「Stagger Lee」は、アメリカ民衆音楽の中で長く歌い継がれてきた伝説的な物語を、Jerry GarciaとRobert Hunterが再構成した楽曲である。Stagger Lee、またはStack O’ Leeとして知られるこの物語は、殺人、賭博、酒場、暴力、アウトローの神話を含み、ブルース、フォーク、ジャズ、ロックなど多くのジャンルで取り上げられてきた。Grateful Dead版は、その伝統をHunterらしい語り口で再解釈している。

音楽的には、軽快なカントリー/フォーク・ロック調で、アルバム後半にアメリカーナ的な感覚を取り戻す役割を果たす。Garciaのヴォーカルは語り部のように自然で、ギターも物語を運ぶように柔らかく鳴る。ファンクやディスコ的な本作のイメージとは異なり、この曲はGrateful Deadが古いアメリカ音楽の物語を現代のロックとして再生するバンドであることを改めて示している。

歌詞は、Stagger LeeとBilly DeLyonの物語を中心に展開するが、HunterはそこにDelia DeLyonという女性の視点と行動を加え、伝統的なアウトロー・バラッドに新しい角度を与えている。暴力的な男性同士の対立だけでなく、その暴力に対して女性がどのように応答するかが描かれる点が重要である。これにより、古い物語は単なる犯罪譚ではなく、復讐、正義、ジェンダー、民衆的な語りの再編成として響く。

「Stagger Lee」は、本作の中で最もRobert Hunterらしい物語性を持つ曲の一つである。American BeautyやWorkingman’s Deadに見られるアメリカ民話的な感覚が、1978年の本作にもまだ生きていることを示している。アルバムのリズム志向の中に、Grateful Deadの根源的な語りの伝統を差し込む重要曲である。

9. All New Minglewood Blues

「All New Minglewood Blues」は、Noah Lewisの「Minglewood Blues」を基にした楽曲で、Grateful Deadはデビュー作にも「New, New Minglewood Blues」として取り上げていた。本作ではBob Weirのヴォーカルを中心に、より力強く、洗練されたロック・ブルースとして再録されている。デビュー作から約10年を経たバンドの変化を示す意味でも興味深い曲である。

音楽的には、初期の荒削りなガレージ・ブルースに比べ、演奏はかなり引き締まっている。Weirのヴォーカルは自信に満ち、バンド全体もライヴで鍛えられたグルーヴを持つ。ギターはブルース的な泥臭さを残しながらも、スタジオ録音として整理されている。Lowell Georgeのプロデュースもあり、曲は過度に粗くならず、しなやかなロック・ナンバーとして仕上がっている。

歌詞は、放浪者、酒場、女性、トラブルといったブルースの伝統的なモチーフを持つ。Minglewoodという言葉は、現実の場所であると同時に、ブルース的な神話空間でもある。Grateful Deadは、この曲を通じて古いアメリカ音楽のアウトロー的な語りを、自分たちのライヴ文化の中に取り込んできた。

本作における再録の意義は、Grateful Deadが自らの過去のレパートリーを更新し続けるバンドだったことを示す点にある。曲は固定されたものではなく、時代、編成、演奏環境によって姿を変える。この「All New Minglewood Blues」は、1967年の若いサイケデリック・ブルース・バンドだったGrateful Deadが、1978年にはより成熟したライヴ・ロック・バンドへ変化していたことを示す録音である。

10. If I Had the World to Give

アルバム最後を飾る「If I Had the World to Give」は、Jerry GarciaとRobert Hunterによるバラードであり、本作の中でも特に美しく、静かな余韻を持つ楽曲である。ファンクやディスコの印象が強いShakedown Streetの最後に、このような繊細なGarcia/Hunterのバラードが置かれていることは重要である。アルバムは最終的に、Grateful Deadの中心にある歌心へ戻ってくる。

音楽的には、ゆったりとしたテンポ、柔らかいコード進行、Garciaの穏やかなヴォーカルが中心である。派手な演奏はなく、曲全体は控えめに進む。Garciaのギターは少ない音数で感情を補い、バンドの演奏も歌の余白を大切にしている。Grateful Deadのバラードには、しばしば時間が止まるような静けさがあるが、この曲にもその性質がある。

歌詞のテーマは、愛する相手に世界を与えたいという、非常に純粋で大きな願望である。しかし、Hunterの歌詞は単なる甘いラヴ・ソングにはならない。世界を与えることは不可能であり、その不可能性を知りながら、それでも何かを捧げたいという感情が曲の核心にある。ここには、愛の過剰さと限界が同時に表れている。

この曲は、Grateful Deadのライヴではごく限られた回数しか演奏されなかったため、スタジオ録音としての存在感が特に強い。ライヴで大きく育った「Shakedown Street」や「Fire on the Mountain」とは異なり、この曲はアルバム内で完結した静かな宝石のような位置にある。

アルバムの終曲として、「If I Had the World to Give」は本作の多様な要素を穏やかに閉じる。街路のグルーヴ、R&Bの軽快さ、ファンクの反復、ブルースの伝統、民話的な物語を経て、最後に残るのはGarciaの声による、儚い献身の歌である。Shakedown Streetが時代のリズムへ接近した作品でありながら、最終的にはGrateful Deadの深い情緒を失っていないことを示す重要な終曲である。

総評

Shakedown Streetは、Grateful Deadのスタジオ・アルバムの中でも評価が分かれやすい作品である。American Beautyのようなソングライティングの完成度、Live/Deadのような即興の深さ、Blues for Allahのような実験性、Terrapin Stationのような神話的スケールを期待すると、本作はやや軽く、不均質に感じられるかもしれない。しかし、本作の価値は、1970年代後半の音楽的環境にGrateful Deadがどう反応したかを記録している点にある。

タイトル曲「Shakedown Street」は、バンドがファンク/ディスコ的なグルーヴを自分たちの音楽へ取り込んだ成功例である。スタジオ版はコンパクトだが、ライヴでは大きく成長し、Deadhead文化の象徴的な言葉にまでなった。「Fire on the Mountain」もまた、スタジオでは控えめながら、ライヴで「Scarlet Begonias」と結びつき、後期Grateful Deadを代表するジャムの一つとなった。このように、本作の重要曲は、アルバムの中だけで完結するのではなく、ライヴでの変化を含めて評価されるべきである。

一方で、「France」や「Serengetti」のような曲は、Grateful Deadの中心的な魅力からはやや外れており、アルバム全体の統一感を弱めているとも言える。しかし、それらの曲もまた、本作がリズムや異国的な質感に関心を向けた作品であることを示している。Grateful Deadは常に成功だけを収めたバンドではなく、時に不器用で、時に時代の流行とぎこちなく接続しながら、自分たちの音楽を広げていった。その過程が、本作には率直に表れている。

Lowell Georgeのプロデュースは、アルバムにしなやかさとグルーヴ感を与えている一方で、Grateful Dead本来の広がりを完全に引き出したとは言い切れない。Little Feat的な粘りを期待すると、やや中途半端に感じられる部分もある。しかし、タイトル曲や「All New Minglewood Blues」などでは、リズムの整理とロック・バンドとしてのまとまりが効果的に働いている。

歌詞面では、Robert Hunterの力が特に「Shakedown Street」「Fire on the Mountain」「Stagger Lee」「If I Had the World to Give」で発揮されている。「Shakedown Street」では街の心をめぐる共同体的な視点が示され、「Fire on the Mountain」では危機と祝祭が重なり、「Stagger Lee」では古いアメリカ民衆音楽の物語が再構成される。そして「If I Had the World to Give」では、愛と限界をめぐる静かなバラードが提示される。これらの曲は、本作が単なる「ディスコに接近したアルバム」ではないことを示している。

日本のリスナーにとってShakedown Streetは、Grateful Deadの代表作として最初に聴くべき作品ではないかもしれない。しかし、バンドの全体像を理解するうえでは非常に興味深いアルバムである。1970年代後半のディスコ、ファンク、レゲエ、ロックの交差点で、Grateful Deadが自分たちなりの応答を試みた作品だからである。特に、後のライヴ音源とあわせて聴くと、スタジオ版の素材がどのように成長したかが分かり、本作の評価はより立体的になる。

総合的に見て、Shakedown StreetはGrateful Deadの「変化のアルバム」である。完成された傑作というより、時代のリズムを吸収しようとする過程の記録であり、成功と迷いが同居している。街には心がないと言われても、よく見ればまだ何かが残っている。タイトル曲のその視点は、アルバム全体にも当てはまる。表面的には散漫に見える部分の奥に、Grateful Deadらしい共同体感覚、リズムへの好奇心、古いアメリカ音楽への愛、そしてGarcia/Hunterの静かな歌心が確かに息づいている。

おすすめアルバム

1. Grateful Dead – Terrapin Station(1977年)

Shakedown Street直前のスタジオ・アルバムであり、外部プロデューサーを迎えた70年代後半のGrateful Deadを理解するうえで重要な作品である。タイトル組曲では、オーケストレーションや合唱を用いた壮大な構築性が前面に出ており、Shakedown Streetの街路的・リズム的な方向性とは対照的である。

2. Grateful Dead – Blues for Allah(1975年)

1970年代中期のGrateful Deadが、ジャズ・ロック、変則的な構成、リズムの実験に踏み込んだ重要作である。「Help on the Way」「Slipknot!」「Franklin’s Tower」の流れは、後の「Shakedown Street」や「Fire on the Mountain」に通じるグルーヴと即興性を理解するうえで有効である。

3. Grateful Dead – Go to Heaven(1980年)

Shakedown Streetの後に発表されたスタジオ・アルバムで、より80年代的な明快さやポップ性が前面に出ている。Brent Mydland加入後の新しいバンド・サウンドを示す作品であり、70年代後半から80年代初頭へのGrateful Deadの変化を追ううえで重要である。

4. Little Feat – Dixie Chicken(1973年)

Shakedown StreetのプロデューサーであるLowell Georgeが率いたLittle Featの代表作である。ニューオーリンズR&B、ファンク、カントリー、ロックが粘りのあるグルーヴで融合しており、Shakedown Streetにおけるリズム志向やアメリカ音楽の雑多な融合を理解するための関連作として重要である。

5. Grateful Dead – Reckoning(1981年)

1980年のアコースティック・ライヴを収録した作品であり、Shakedown Streetとは対照的に、Grateful Deadのフォーク、カントリー、ブルース的な原点を味わえるアルバムである。ファンク/ディスコ的な本作と比較することで、バンドが持つ音楽的な幅の広さがより明確になる。

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