発売日: 2022年3月11日
ジャンル: インディーロック、ダンス・ロック、グレイテスト・ヒッツ
頭に直撃する、グルーヴと知性の20発——フランツ・フェルディナンドという“現代の美学”の集大成
『Hits to the Head』は、Franz Ferdinandが2022年にリリースした初のベスト・アルバムであり、
デビューから約20年のキャリアを総括する形で編まれた、20曲入りのコンパイル作品である。
タイトルの“Hits to the Head”——つまり「頭への一撃」は、
彼らの音楽が常に“身体を揺らしつつ、思考を刺激する”という二重性を持っていたことの象徴であり、
ロックとダンス、快楽と知性、スタイルとアイロニーの交差点を走り続けてきたバンドの美学をそのまま提示している。
収録曲は、『Franz Ferdinand』から『Always Ascending』までの代表曲に加え、
2曲の新曲「Billy Goodbye」「Curious」を含む構成。
どの曲も即効性の高いポップ・センスと、緻密な構造美に貫かれており、
まさに“踊れる名刺”としての機能を果たしている。
注目トラック解説
Take Me Out
言わずと知れたバンドの代表曲。
途中でテンポが変わる構造が印象的で、イントロから終盤まで緊張感が途切れない。
フランツの美学を凝縮したダンスロックの金字塔。
Do You Want To
欲望と皮肉をキラキラしたギターと共に高らかに鳴らすパーティー・アンセム。
陽気なようでどこか虚無感があるのが、いかにも彼ららしい。
No You Girls
クラブとポップの境界線を自在に行き来する一曲。
軽やかだが毒気もある、バンドの“夜”を象徴するナンバー。
Love Illumination
“愛の光”をテーマにしながらも、どこか醒めた視点が光る。
ビートの強さとアート性の融合が絶妙。
Billy Goodbye(新曲)
ノスタルジックなメロディと、別れを明るく歌い上げる“さよならのダンスチューン”。
過去へのまなざしと前進のバランスが心地よい。
Curious(新曲)
シンセ主導のファンキーなグルーヴが特徴の新機軸。
「好奇心」というテーマが、バンドの“変わり続ける姿勢”を体現している。
総評
『Hits to the Head』は、Franz Ferdinandというバンドの魅力を“最も伝わりやすいかたち”で凝縮した、
まさに“入門編にして永久保存版”の一枚である。
キャリアの浮き沈みや音楽的変遷を経ながらも、彼らは一貫して“踊れる知性”と“崩れた美学”を武器に、
ロックの歴史の中に独自の居場所を築いてきた。
新曲を含むこのアルバムは、単なる総集編ではなく、
「今なお変化の途中にある」というバンドの現在地を鮮明に提示しており、
まさに“進行形のベスト盤”と呼ぶにふさわしい。
おすすめアルバム
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Franz Ferdinand / Franz Ferdinand
すべての始まり。ダンスと知性の衝突が鮮烈だったデビュー作。 -
Right Thoughts, Right Words, Right Action / Franz Ferdinand
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同時代に登場したダンス・ロックの代表作。明暗の対比が面白い。 -
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Greatest Hits / LCD Soundsystem
ダンスとインディーの交差点を体現したバンドの集大成。クラブ的側面で共振する。
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