
1. 曲の概要
“Steppin’ Out“は、**John Mayall & the Bluesbreakers(ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ)**が1966年にリリースしたアルバム『Blues Breakers with Eric Clapton』に収録された、インストゥルメンタル・ブルースロックの名曲です。
この楽曲は元々、シカゴ・ブルースの伝説的なギタリスト**メンフィス・スリム(Memphis Slim)**が書いた楽曲ですが、**フレディ・キング(Freddie King)**がインストゥルメンタル・ブルースとして再解釈し、1961年に発表しました。
その後、エリック・クラプトンがブルースブレイカーズ時代にこの曲をカバーし、ギター主導のブルースロック・ナンバーとして再構築。彼の激しいリードギターと洗練されたフレーズによって、後のブルース・ロック・ギタリストに多大な影響を与える作品となりました。
2. 楽曲の背景とサウンドの特徴
“Steppin’ Out”は、12小節のブルース進行に基づいたシンプルな楽曲ですが、そこにエリック・クラプトンの凄まじいギタープレイが加わることで、極めて攻撃的かつ情熱的な演奏に仕上がっています。
この曲のブルースブレイカーズ版は、**クラプトンがマーシャル・アンプとギブソン・レスポールを駆使した「Beanoトーン」**で演奏しており、以降のロックギターサウンドに大きな影響を与えました。
✅ クラプトンのギター・スタイル
- 冒頭から炸裂する速弾きフレーズ
- クラプトンはこの曲で、ブルースではあまり聞かれなかったスピード感のあるリードフレーズを展開。
- クランチの効いたマーシャル・トーン
- 甘くも攻撃的な「Beanoトーン」は、この曲のドライブ感を引き上げる重要な要素。
- スライドとチョーキングを駆使したダイナミックなプレイ
- 単なるスローブルースとは違い、クラプトンは非常にアグレッシブなアプローチを取っている。
✅ リズムセクションのグルーヴ
- ジャック・ブルース(Jack Bruce)のタイトなベースライン(ライブ版では特に顕著)
- ジョン・メイオールの控えめなオルガンが、全体のトーンを支えている
- ドラムはシャッフルビートを基本としつつ、曲全体にドライブ感を与えている
これらの要素が絡み合い、単なるブルースではなく、**「ロックと融合したエネルギッシュなブルース」**へと進化しているのが特徴です。
3. 楽曲の構成
“Steppin’ Out”は、基本的にAAB形式の12小節ブルース進行を基盤としながらも、ギターのフレーズが非常にリッチでダイナミックに展開する点が特徴的です。
- イントロ: ギターのリードフレーズが炸裂し、テンポの速いブルース・グルーヴが形成される
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メインリフ: ジャンプ・ブルース的なメロディアスなギターフレーズが繰り返される
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ソロパート: クラプトンのスピード感あるフレーズとチョーキングが炸裂し、次々にダイナミックな展開を見せる
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エンディング: 緊張感を持たせたままフェードアウトする形で締めくくられる
4. “Steppin’ Out”が持つ影響と重要性
“Steppin’ Out”は、ブルースとロックを結びつけた歴史的なギター・インストゥルメンタルのひとつとして評価されており、特に以下のような点で重要な役割を果たしました。
- ブリティッシュ・ブルース・ロックの発展に貢献
- エリック・クラプトンの「ギター・ゴッド」時代の幕開けとも言える楽曲。
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このスタイルは、後にクリーム(Cream)、フリートウッド・マック(初期)、レッド・ツェッペリンなどに受け継がれる。
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ギター・ヒーロー文化の誕生
- クラプトンの超絶技巧と感情表現の両立が、のちのギター・ヒーローたちに影響を与えた。
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ジミー・ペイジ(Led Zeppelin)、ピーター・グリーン(Fleetwood Mac)、ゲイリー・ムーアなどが影響を受けたギター・アプローチ。
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インストゥルメンタル・ブルースの可能性を広げた
- フレディ・キングの原曲を超えたロック的な解釈が、ブルースの新しいスタイルを生み出した。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Hideaway” by John Mayall & the Bluesbreakers
- 同じくフレディ・キングの影響を受けたインストナンバー。
- “Crossroads” by Cream
- クラプトンのブルース・ロックの神髄が詰まった名演。
- “I’m Tore Down” by Freddie King
- ブルースのグルーヴ感を味わえるフレディ・キングの名曲。
- “Messin’ with the Kid” by Junior Wells & Buddy Guy
- 速いテンポのエネルギッシュなブルース・チューン。
- “Still Got the Blues” by Gary Moore
- クラプトンの影響を受けた後世のギタリストによる名演。
6. 『Steppin’ Out』のユニークな特徴
✅ ギター・ヒーロー文化の礎を築いた超絶インストゥルメンタル
✅ ブルースを超えたロック的な攻撃的ギタープレイ
✅ レスポール+マーシャル・アンプによるBeanoトーンの最良の例
✅ クラプトンのスピード感あるリードプレイが炸裂
✅ のちのクリーム、レッド・ツェッペリンなどのギターサウンドの先駆けとなる
結論
“Steppin’ Out“は、エリック・クラプトンがブルース・ロック・ギタリストとしての地位を確立した決定的なインストゥルメンタル楽曲であり、その影響力は計り知れません。
ブルースの持つ哀愁を保ちつつ、ロックの攻撃性とスピード感を加えたこの楽曲は、のちのギター・ヒーローたちの手本となり、ロック・ギターの進化の出発点のひとつとなりました。
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