発売日: 2012年5月15日
ジャンル: ポップ、ファンク、エレクトロポップ、ロック
ポップの枠を超えた挑戦作、エネルギッシュで自由な自己表現
Adam Lambertの2ndアルバムTrespassingは、デビュー作For Your Entertainmentのグラムロック的なスタイルを進化させ、ファンクやエレクトロポップ、ロックを融合させたエネルギッシュな作品に仕上がっている。
本作は全米アルバムチャート（Billboard 200）で1位を獲得し、オープンリー・ゲイのアーティストとして初めてチャートトップに輝く歴史的なアルバムとなった。前作と比較すると、ポップ寄りのプロダクションが洗練され、ダンサブルな楽曲が増えているが、一方で内省的なバラードやシリアスなテーマの曲も収録されており、Adam Lambertの多面的なアーティスト性が存分に発揮されている。
プロデューサーにはPharrell Williams、Dr. Luke、Bruno Mars、Nile Rodgers、Sam Sparroなど、ポップ・R&B界のトップクリエイターが参加し、彼の音楽性をより多彩なものへと押し広げた。
全曲レビュー
- Trespassing
- Pharrell Williamsがプロデュースした、ファンキーでエネルギッシュなオープニングトラック。Queenの影響を感じさせる、堂々としたアンセム的な楽曲。
- Cuckoo
- ハイテンションなエレクトロポップ。狂気じみた自由奔放な歌詞と、アップビートなリズムが融合し、ライブ映えするナンバー。
- Shady
- Nile RodgersとSam Sparroが手掛けたファンクチューン。ギターのカッティングとグルーヴィーなベースラインが際立つ、大人のセクシーさを感じさせる曲。
- Never Close Our Eyes
- Bruno Marsが作曲したダンサブルなエレクトロポップ。未来志向の歌詞と疾走感のあるメロディが特徴的で、シングルカットされた。
- Kickin’ In
- Pharrellとの再タッグによる、ディスコ・ファンク風のパーティーチューン。80年代のポップソウルを現代風にアップデートしたサウンド。
- Naked Love
- シンプルなラブソングで、ギターとシンセのバランスが絶妙なポップナンバー。キャッチーで爽やかな雰囲気が際立つ。
- Pop That Lock
- ダンスフロア向けのエレクトロポップ。シンセのビートが強調され、クラブ映えするアレンジが施されている。
- Better Than I Know Myself
- エモーショナルなバラードで、愛と自己破壊をテーマにした歌詞が心に響く。Adamの圧倒的なボーカルが際立つ楽曲。
- Broken English
- エレクトロ要素を取り入れたダークなバラード。ミステリアスな雰囲気と切なげな歌詞が、アルバムの中でも異色の存在感を放つ。
- Underneath
- 美しく幻想的なバラード。Adamの繊細なボーカルと壮大なアレンジが、聴く者の感情を揺さぶる。アルバムのハイライトのひとつ。
- Chokehold
- ダークなトーンのロックバラードで、恋愛の束縛と痛みを描いた歌詞が印象的。Adamのディープな表現力が光る楽曲。
- Outlaws of Love
- LGBTQ+をテーマにした内省的なバラード。社会の偏見と自己受容を描いた歌詞が感動的で、アルバムの中でも最もパーソナルな楽曲。
総評
Trespassingは、デビュー作と比較してよりパーソナルな要素が強くなり、ポップ、ファンク、エレクトロ、ロックの要素を巧みに融合させた作品となっている。特に「Trespassing」「Cuckoo」「Shady」などは、自由と自信に満ちたダンサブルなナンバーであり、一方で「Better Than I Know Myself」や「Outlaws of Love」では、内面の葛藤や感情の機微を表現している。
本作の大きな特徴は、ポップスの枠にとどまらず、ダンスミュージックとロックを行き来するサウンドの多様性にある。Pharrell WilliamsやNile RodgersといったファンクやR&Bのレジェンドとのコラボレーションが、彼の音楽性に新たな次元を加えており、ポップシンガーとしての枠を超えたアーティスト性を確立することに成功した。
また、LGBTQ+コミュニティに対するメッセージ性も強く、タイトル曲「Trespassing」や「Outlaws of Love」は、マイノリティとしての自己肯定や社会への挑戦を象徴する楽曲としても重要な意味を持つ。
デビュー作を超えた音楽的冒険と、Adam Lambertの確固たるアイデンティティを示したアルバムであり、ポップ・ロック・ダンスファンの誰もが楽しめる作品に仕上がっている。
おすすめアルバム
- Bruno Mars – Unorthodox Jukebox (2012)
- 「Never Close Our Eyes」を提供したBruno Marsの作品。ファンクやポップのバランスがTrespassingと共通している。
- Lady Gaga – Born This Way (2011)
- LGBTQ+のテーマを強く打ち出したポップアルバム。Adam Lambertのスタイルと共通点が多い。
- Scissor Sisters – Night Work (2010)
- ダンサブルなファンクとポップの融合。Adam Lambertのグラムロック的なアプローチと親和性が高い。
- Queen – Hot Space (1982)
- Queenのファンクとダンスミュージックを取り入れた異色作。Adamのサウンドのルーツとしての影響を感じさせる。
- Nile Rodgers & Chic – It’s About Time (2018)
- Trespassingのファンク路線と共通するサウンドを持つ。ディスコと現代ポップの融合が魅力。
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- Trespassingのファンク路線と共通するサウンドを持つ。ディスコと現代ポップの融合が魅力。
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