発売日: 2010年8月3日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、シューゲイズ、アートロック
進化するAutolux——静寂とノイズの狭間で生まれる美学
デビュー作Future Perfect（2004年）から6年の沈黙を破り、Autoluxが放った2ndアルバムTransit Transit。前作の鋭利なノイズとドライなポストパンク的質感を受け継ぎつつも、本作ではよりミニマルでアンビエントなサウンドへとシフトしている。
セルフプロデュースで制作された本作は、ローファイなテクスチャーと洗練された構成が共存し、静寂の中に漂う緊張感が際立つ。メロディとノイズのバランスを探求し続けるAutoluxの進化が、ここではより繊細な形で提示されている。
全曲レビュー
1. Transit Transit
ピアノのループとローファイなエフェクトが絡み合い、アルバムの幕開けを告げる。穏やかなトーンながらも、音の裏側に潜む不安感が印象的。
2. Census
不穏なギターとメロウなボーカルが交差する、Autoluxらしい実験的なトラック。シンプルなビートが反復され、サウンドスケープが少しずつ広がっていく。
3. Highchair
浮遊感のあるギターと、リズムのズレが独特の酩酊感を生み出す。囁くようなボーカルが、楽曲の儚さを引き立てている。
4. Supertoys
アルバムの中では比較的キャッチーなナンバー。歪んだギターと機械的なドラムが絡み合い、ポストパンク的な疾走感を生み出す。
5. Spots
最小限の構成ながらも、ダイナミックな音響効果が特徴的なトラック。静寂の中に潜む緊張感が、アルバム全体のテーマを象徴している。
6. Audience No.2
ミステリアスなメロディラインと、冷ややかなボーカルが印象的。シンプルなドラムパターンが反復され、楽曲全体の不穏な空気感を強調している。
7. Kissproof
エフェクトのかかったギターと、ぼんやりとしたボーカルが溶け合うドリーミーな楽曲。シューゲイズ的なアプローチが際立っている。
8. The Bouncing Wall
ダビーなベースラインと実験的なエフェクトが特徴的。静謐な中にも攻撃的な要素が垣間見える、緻密なサウンドデザインが光る。
9. Heads or Tails
ノイズギターと淡々としたビートが交錯し、ゆっくりと展開するトラック。シンプルながらも深みのあるアレンジが施されている。
総評
Transit Transitは、Future Perfectの激しさとは異なり、より静謐で洗練されたサウンドが際立つ作品だ。ノイズとメロディのバランスが絶妙で、シューゲイズやポストロック的なアプローチが強化されている。
セルフプロデュースによるローファイな質感が、Autoluxの持つ独特のミステリアスな雰囲気をさらに強調しており、音の隙間や間が持つ緊張感が効果的に活かされている。従来のシューゲイズ・ファンはもちろん、RadioheadやPortisheadのような実験的サウンドを好むリスナーにも刺さる作品だ。
おすすめアルバム
- Portishead – Third (2008)
ローファイな質感と実験的なアプローチが共通する、トリップホップの名盤。 - Radiohead – Amnesiac (2001)
ミニマルなサウンドスケープと不穏な雰囲気が、本作と共鳴する。 - Deerhunter – Halcyon Digest (2010)
夢幻的な音像とノスタルジックなメロディが特徴のインディーロック名盤。 - Boris – Flood (2000)
アンビエントとノイズを融合した、圧倒的なサウンド体験。 - Low – Drums and Guns (2007)
静寂とダークな実験性が際立つ、ミニマリズムの極致。
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