
発売日: 2001年4月9日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブ・ロック、フォークロック
穏やかに進化するバンドのサウンド——洗練されたメロディとメランコリー
2001年にリリースされたMechanical Wonderは、Ocean Colour Sceneの5作目のスタジオアルバムであり、前作One from the Modern(1999年)で見せたフォークやソウルの要素をさらに発展させた作品である。90年代のブリットポップ黄金期を経て、バンドはより落ち着いたサウンドと洗練されたメロディを重視する方向へと向かっている。
本作では、アコースティックギターを主体としたフォーキーな楽曲が多く、メロウで内省的な雰囲気が漂う。派手なロックアンセムではなく、心に染み入るようなミッドテンポの楽曲が中心となり、バンドの成熟した姿勢が感じられる。シングル「Up on the Downside」や「Mechanical Wonder」は、バンドの特徴的なメロディセンスを活かしつつも、よりリラックスした空気感を持つ楽曲となっている。
ブリットポップの流れが終焉を迎えた2001年という時代背景もあり、本作は派手さやカリスマ性を前面に出すのではなく、長く聴き続けられるようなサウンドを志向したアルバムとなっている。
全曲レビュー
1. Up on the Downside
アルバムの幕開けを飾る、爽やかなメロディとアコースティックギターが心地よいナンバー。90年代のブリットポップ的な要素を残しながらも、サウンドはよりフォークロック寄りになっている。リラックスした雰囲気の中に、ポジティブなエネルギーが感じられる。
2. In My Field
ゆったりとしたテンポのバラードで、ストリングスが楽曲に深みを与えている。歌詞は個人的な回想を綴ったような内容で、アルバムの持つ内省的な雰囲気を強調する。
3. Sail On My Boat
ブルースやフォークの要素を取り入れた、リズミカルな楽曲。軽快なリズムとシンプルなアレンジが心地よく、バンドのオーガニックな側面が前面に出ている。
4. Biggest Thing
ソウルフルな要素を感じさせる楽曲で、70年代のロックの影響が色濃く表れている。オルガンの音色と、スティーヴ・クラドックのギターの絡みが絶妙。
5. We Made It More
静かに始まり、徐々に壮大な展開を見せる楽曲。アコースティックギターとストリングスの組み合わせが美しく、バンドの成熟したサウンドが感じられる。
6. Give Me a Letter
アルバムの中でも特にシンプルなバラード。アコースティックギターとヴォーカルのみの構成が際立ち、サイモン・ファウラーの歌声の魅力が存分に発揮されている。
7. Mechanical Wonder
タイトル曲であり、アルバムのハイライトのひとつ。穏やかなメロディと流れるようなアレンジが心地よく、どこかノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲。バンドの新たな方向性を象徴する一曲でもある。
8. You Are Amazing
シンプルで穏やかなラブソング。フォーク的なアプローチと、リラックスしたムードが特徴的。アルバム全体の流れを和らげる役割を果たしている。
9. If I Gave You My Heart
ジャズやブルースの要素を感じさせるバラード。スムーズなギターと、ゆったりとしたドラムが心地よく、洗練されたアレンジが光る。
10. Can’t Get Back to the Baseline
シンプルなロックンロールナンバーで、70年代のブルースロック的な影響が強い。派手さはないが、バンドのルーツを感じさせる楽曲。
11. Something for Me
アルバムの締めくくりを飾る楽曲で、メロウなメロディと温かみのあるサウンドが印象的。静かにフェードアウトするような終わり方が、アルバム全体の落ち着いた雰囲気と調和している。
総評
Mechanical Wonderは、Ocean Colour Sceneが90年代のブリットポップの流れから脱却し、よりフォークやブルース、ソウルの要素を重視した作品である。ロックのエネルギーを前面に押し出すのではなく、洗練されたアレンジと穏やかなメロディが特徴的なアルバムとなっている。
特に「Up on the Downside」や「Mechanical Wonder」などの楽曲では、彼らの持つメロディセンスが際立ち、「If I Gave You My Heart」や「Give Me a Letter」では、シンプルながらも心に響くバラードを聴かせる。
派手なシングルヒットは少ないものの、アルバム全体の統一感があり、Ocean Colour Sceneの成熟した音楽性を堪能できる作品となっている。90年代の彼らの作品とは異なり、長く聴き続けられるような落ち着いた雰囲気を持つアルバムとして、隠れた名盤としての価値を持つ一枚である。
おすすめアルバム
- Ocean Colour Scene – One from the Modern (1999)
- 本作の前作であり、フォークやエレクトロの要素を取り入れた実験的なアルバム。
- Paul Weller – Wild Wood (1993)
- OCSとも関係が深いポール・ウェラーの名盤。アコースティックなフォークロックの影響が強い。
- The Verve – Urban Hymns (1997)
- オーガニックなロックと壮大なアレンジが特徴の名盤。「Bitter Sweet Symphony」収録。
- Gomez – Liquid Skin (1999)
- フォーク、ブルース、ロックを融合させた実験的なサウンドのアルバム。
- Travis – The Man Who (1999)
- 穏やかなメロディと叙情的な歌詞が際立つUKロックの名作。
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