アルバムレビュー：Wonky by Orbital

発売日: 2012年4月2日
ジャンル: テクノ、エレクトロ、IDM

Orbitalの復活——90年代テクノの巨匠が再び躍動するアルバム
全曲レビュー
総評
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Orbitalの復活——90年代テクノの巨匠が再び躍動するアルバム

2012年にリリースされたWonkyは、2004年の解散を経て、8年ぶりに発表されたOrbitalの復活作である。90年代に数々の名作を生み出した彼らが、新たな時代のエレクトロニック・ミュージックの流れを吸収しつつも、Orbitalらしいシネマティックなサウンドとダンスフロアのグルーヴを融合させた作品となっている。

本作は、クラブミュージックとしての即効性と、リスニングアルバムとしての奥深さを兼ね備えており、Orbitalの持つメロディックな美学と、現代的なエレクトロ・サウンドが見事に組み合わさっている。特に「New France」や「Never」などの楽曲では、感情的なメロディとシンセの質感が際立ち、彼らの過去作を彷彿とさせる。

また、タイトル曲「Wonky」では、意外な展開としてUKのグライムシーンと接近し、新たな方向性を模索している点も興味深い。

全曲レビュー

1. One Big Moment

アルバムのオープニングを飾る壮大な楽曲。シンセのレイヤーがゆっくりと積み重なり、徐々にビートが入る構成が映画のイントロのような感覚を生む。ダンスフロア向けのグルーヴを持ちつつも、リスニング向けのドラマティックな展開が特徴的。

2. Straight Sun

キックドラムと細かいシンセリフが絡み合うミニマルなテクノトラック。クラブトラックとしての強度を持ちつつ、メロディの繊細さも際立つ。反復されるリズムの中に、じわじわとエモーショナルな要素が加わる。

3. Never

本作のハイライトのひとつ。浮遊感のあるシンセとリズムの柔らかいグルーヴが、Orbitalの過去作にあったアンビエント的な要素を思い起こさせる。メロディが徐々に高まる展開は、彼らの得意とする手法のひとつ。

4. New France (feat. Zola Jesus)

Zola Jesusをフィーチャーした楽曲で、メランコリックなヴォーカルとダンスグルーヴが融合している。壮大なサウンドスケープとエモーショナルなメロディが印象的で、アルバムの中でも最もドラマティックな楽曲のひとつ。

5. Distractions

インダストリアルな要素を取り入れた、ダークで不穏なトラック。アシッドハウスの影響を感じさせるシンセリフが特徴的で、リズムも複雑に変化する。アルバムの中でも異色の存在。

6. Stringy Acid

タイトル通り、クラシックなアシッドハウスの要素を大胆に取り入れた楽曲。90年代初期のレイヴカルチャーを思わせるサウンドながら、現代的なプロダクションが施されている。シンプルなリフの繰り返しが中毒性を生む。

7. Beijing

アンビエント・テクノの影響を強く感じる楽曲。環境音のようなシンセパッドが漂い、ビートは控えめながらも、ゆっくりと展開していく。映画的なサウンドスケープが広がり、リスニング向けの要素が強い。

8. Wonky (feat. Lady Leshurr)

本作で最も異色な楽曲。UKグライムのフィメールMC、Lady Leshurrをフィーチャーし、エレクトロとグライムを融合させた実験的な試み。クラブトラックとしての勢いがありながらも、Orbitalの洗練されたサウンドデザインが活かされている。

9. Where Is It Going?

アルバムを締めくくる楽曲。タイトルが示す通り、未来への疑問を投げかけるようなミステリアスな雰囲気を持つ。ゆったりとしたリズムと幻想的なシンセパッドが美しく、エモーショナルな余韻を残すエンディング。

総評

Wonkyは、Orbitalが8年ぶりに復活した作品であり、過去のサウンドを現代のエレクトロニック・ミュージックと融合させたアルバムである。本作は、90年代のクラシックなテクノの美学と、2010年代のエレクトロやグライムの要素を巧みに融合しており、単なる懐古的な作品ではなく、新たなチャレンジも試みている点が特徴的だ。

特に「New France」や「Never」では、Orbitalらしいメロディックなアプローチが感じられ、一方で「Wonky」では、UKグライムとの融合という新たな方向性も模索している。

Orbitalの伝統的なサウンドが好きなファンにとっては、「Stringy Acid」や「Where Is It Going?」のような楽曲が懐かしく感じられるだろうし、新しいサウンドに興味があるリスナーにとっても、「Wonky」のような楽曲は興味深い挑戦となっている。

Orbitalの復活を祝うにふさわしいアルバムであり、彼らの過去と未来が交差する興味深い作品として高く評価されるべき一枚である。