アルバムレビュー:Yellow Submarine by The Beatles

Spotifyジャケット画像

発売日: 1969年1月13日
ジャンル: サイケデリック・ロック、映画音楽、オーケストラ


アニメと現実の狭間で——“ビートルズらしさ”を巡る補遺的作品

Yellow Submarineは、同名アニメ映画のサウンドトラックとして1969年にリリースされたアルバムである。
だがそれは、通常のビートルズ作品とは一線を画す構成を持つ。
全13曲中、バンドによる新曲はわずか4曲。後半の6曲はジョージ・マーティンによるインストゥルメンタルスコアで占められている。

アルバムとしての完成度には賛否あるが、それでも本作にはビートルズのユーモア、サイケデリックな遊び心、そしてファンタジーへの眼差しが詰まっている。
特にジョージ・ハリスンの実験精神と、アニメという媒体との親和性は注目に値する。
純粋な「作品」というより、ビートルズという現象の“側面”を覗き見る窓のような存在なのだ。


全曲レビュー

1. Yellow Submarine

1966年のRevolver収録曲を再録。
リンゴ・スターの素朴な歌声と子ども向けのような世界観が、バンドの多面性を象徴する。

2. Only a Northern Song

ジョージによる皮肉に満ちたサイケ・ナンバー。
契約上の不満を反映した歌詞と、不協和音の応酬が異様な空気を生む。

3. All Together Now

簡素なリズムと合唱による、ビートルズ流の「遊び歌」。
童謡的で親しみやすいが、その裏には多文化的な寓意も感じられる。

4. Hey Bulldog

ジョン主導のロック・チューン。
力強いリフとピアノ、犬の鳴き声まで取り入れた大胆なアレンジが魅力。

5. It’s All Too Much

ジョージによるスピリチュアルなサイケデリック大作。
シタールやエフェクトが重層的に響き、意識の彼方へ誘うような曲調。

6〜13. George Martin – Instrumental Score

映画用に書き下ろされたオーケストラ楽曲群。
幻想的で時にユーモラス、クラシックと映画音楽の中間に位置する。


総評

Yellow Submarineは、音楽作品というよりはマルチメディア時代に向かう“ビートルズとカルチャーの関係性”を象徴した一枚である。
作品全体としての統一感は薄いが、それでも各曲の個性とビジュアルイメージの親和性は高く、ポップカルチャーにおける“拡張する音楽”の先駆と言える。


おすすめアルバム

  • Magical Mystery Tour by The Beatles
    ——サイケデリックなビジュアルと音の融合をより完成された形で提示。
  • The Piper at the Gates of Dawn by Pink Floyd
    ——イギリス的幻想世界を音楽化したサイケの名盤。
  • Wonderwall Music by George Harrison
    ——ジョージによる映画音楽作品。インド音楽と実験の融合。
  • The Point! by Harry Nilsson
    ——アニメとサウンドトラックの高次元融合作品。
  • Pet Sounds by The Beach Boys
    ——映像を伴わずとも映画的世界を音で作り出した奇跡のアルバム。

コメント

タイトルとURLをコピーしました