発売日: 1995年4月11日
ジャンル: インディー・ロック、ローファイ、オルタナティブ・ロック
ペイヴメントの3作目のアルバムWowee Zoweeは、前作の成功からさらに一歩進んだ大胆な作品であり、自由奔放でジャンルを超えたサウンドが詰まった実験的な一枚だ。アルバム全体を通して、ガレージロックやカントリー、パンク、フォークなど、さまざまなスタイルが交錯しており、曲ごとに異なる顔を持つ。スティーヴン・マルクマスの気まぐれなボーカルスタイルや、カジュアルで予測不可能な曲展開は、一貫した方向性から外れることで、自由でリスキーな魅力を持っている。リスナーを混乱させながらも、緩さと革新性が融合したWowee Zoweeは、ペイヴメントの独自の音楽性が存分に表現された一枚として、今もなお評価が高い。
各曲解説
- We Dance
静かでメロディアスなバラード調でアルバムをスタートさせる。優しいギターとリラックスしたボーカルが、次に待つカオスへの幕開けを感じさせる不思議な一曲。 - Rattled by the Rush
ローファイで歪んだギターと、不規則なリズムが印象的な曲。キャッチーながらもラフな演奏が、ペイヴメントの奔放さを表現している。 - Black Out
ゆったりとしたテンポとメランコリックなメロディが特徴の曲で、マルクマスのボーカルが淡々と物語を語る。どこか神秘的で幻想的な雰囲気が漂う。 - Brinx Job
テンポの速いパンク調のナンバーで、シンプルでありながらもエネルギッシュなギターリフが曲を引っ張る。短くもインパクトの強い一曲。 - Grounded
メランコリックでありながらも美しいギターメロディが印象的で、アルバムの中でも特にドラマチックな展開を見せる楽曲。歌詞には若干の皮肉が込められている。 - Serpentine Pad
パンクの影響を感じさせる激しいナンバーで、荒々しいギターと力強いボーカルが際立っている。ペイヴメントのアグレッシブな一面が楽しめる。 - Motion Suggests
リズムの変化が豊富で、自由なアプローチが感じられる曲。実験的な構成が魅力で、ペイヴメントの遊び心が詰まっている。 - Father to a Sister of Thought
カントリーテイストのギターが目立つ一曲で、ペイヴメントの多様な音楽性が表現されている。メロディアスで軽やかな雰囲気が心地よい。 - Extradition
短くも鋭いギターとボーカルが際立つパンク調の一曲。シンプルながらも、力強いエネルギーが溢れる。 - Best Friend’s Arm
不協和音と混沌としたリズムが絡み合い、不安定なサウンドが特徴の曲。アルバム全体の中でも特に実験的で、バンドの自由なアプローチが感じられる。 - Grave Architecture
混沌としたギターとダークなメロディが印象的なナンバー。ポストパンクの影響を感じさせる独特のムードが漂う。 - AT&T
キャッチーなメロディが特徴の一曲で、ノスタルジックな雰囲気が漂う。アルバムの中でも特にポップで、聴きやすい楽曲の一つ。 - Flux = Rad
激しいパンクナンバーで、荒々しいギターとボーカルが突き刺さる。エネルギッシュでアグレッシブな一曲。 - Fight This Generation
ダークで重厚なサウンドと、マルクマスの語るようなボーカルが特徴的。静かで内省的なムードが漂い、アルバムのクライマックスを彩る。 - Kennel District
バンドメンバーのスコット・カンバーグがボーカルを担当するキャッチーな曲。明るいメロディが特徴で、ペイヴメントの多彩なスタイルを楽しめる。 - Pueblo
静かなイントロから徐々に盛り上がる、アンビエントな雰囲気が印象的。ミニマルなアプローチが特徴で、夢のような空気感を生み出している。 - Half a Canyon
不穏でエクスペリメンタルな曲で、ノイズとメロディが不安定に絡み合う。ペイヴメントの実験的な一面が際立つトラック。 - Western Homes
アルバムを締めくくる穏やかなナンバー。ゆるやかに流れるメロディが、アルバム全体を通して続いた混沌に安らぎをもたらし、心地よい余韻を残す。
アルバム総評
Wowee Zoweeは、ペイヴメントがその音楽性を解き放ち、様々なジャンルを自在に行き来した実験的なアルバムである。ローファイなサウンドはそのままに、カントリーやパンク、フォークなどの影響を取り入れ、ジャンルの枠を超えた自由なアプローチが魅力。曲ごとに異なるスタイルが楽しめるため、まとまりに欠けると感じるリスナーもいるかもしれないが、その気まぐれな音楽性が逆にペイヴメントの個性として光っている。バンドの多様なスタイルとユーモアに富んだ歌詞が詰まったこの作品は、彼らのクリエイティブなピークを示す一枚として、インディーロックファンにとっても必聴のアルバムである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beck – Odelay
ジャンルを越えたサウンドと実験的なアプローチが特徴のアルバムで、ペイヴメントの自由奔放な音楽性に共通する部分が多い。
Guided by Voices – Alien Lanes
ローファイでキャッチーな楽曲が詰まった作品で、ペイヴメントのファンにも共感を呼ぶ。短い曲が次々と展開するスタイルが似ている。
Yo La Tengo – I Can Hear the Heart Beating as One
多様なジャンルを取り入れたインディーロックの名作で、ペイヴメント同様、自由なサウンドが楽しめるアルバム。
The Velvet Underground – The Velvet Underground & Nico
実験的で自由なアプローチと、シンプルながらも深い音楽性が特徴。ペイヴメントのルーツとしても共通点が多い。
Silver Jews – American Water
ペイヴメントのメンバーも関わった作品で、アメリカーナとインディーロックが融合した美しいアルバム。マルクマスのボーカルスタイルと共通する部分がある。
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