アルバムレビュー:Wicked: The Soundtrack featuring Ariana Grande

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2024年11月22日

ジャンル:ミュージカル、映画音楽、ポップ・オペラ、ブロードウェイ、オーケストラル・ポップ

概要

『Wicked: The Soundtrack』は、映画版『Wicked』のために制作されたサウンドトラックであり、Ariana GrandeがGlinda役として参加した重要な作品である。厳密にはAriana Grande単独名義のアルバムではなく、Cynthia Erivo、Ariana Grandeを中心とするキャスト・アルバム/映画サウンドトラックとして位置づけられる。しかし、Ariana Grandeのキャリアを考えるうえで本作は極めて重要である。なぜなら、彼女がポップ・スターとしてのイメージを超え、ミュージカル・シアターの伝統、クラシカルな発声、演技としての歌唱を正面から担った作品だからである。

『Wicked』は、Stephen Schwartzによる音楽と歌詞を軸にしたブロードウェイ・ミュージカルで、もともとは『オズの魔法使い』の前日譚的な物語として知られている。中心となるのは、のちに「西の悪い魔女」と呼ばれるElphabaと、のちに「良い魔女」と呼ばれるGlindaの関係である。物語は単純な善悪の対立ではなく、偏見、権力、友情、自己認識、社会が作り出すイメージをテーマにしている。

Ariana Grandeが演じるGlindaは、華やかで社交的で、明るく、自己演出に長けた人物である。しかし、その表面の輝きの下には、承認欲求、未熟さ、優しさ、葛藤、変化の可能性がある。Grandeはこの役において、ポップ・ヴォーカリストとしての華やかな高音や装飾的な歌唱をそのまま押し出すのではなく、役柄に沿った声色、発音、コミカルな間、クラシカルな響きを取り入れている。

Ariana Grandeのキャリアは、R&B、ポップ、トラップ、ダンス・ポップ、バラードを横断してきた。『Yours Truly』ではマライア・キャリー以降のポップ/R&B的な歌唱力を示し、『Dangerous Woman』では大人びたポップ・スター像を確立し、『Sweetener』『thank u, next』では内面性と現代的なプロダクションを結びつけた。そうした流れの中で『Wicked』は、彼女のルーツでもあるミュージカル的表現へ回帰する作品であると同時に、ポップ・スターとしての歌唱を演劇的な文脈へ再配置した作品である。

本作のもう一人の中心であるCynthia Erivoは、Elphaba役として圧倒的な歌唱力と劇的表現を担う。Erivoの声は力強く、深く、感情の密度が高い。一方、GrandeのGlindaは軽やかで、明るく、時に技巧的にコミカルでありながら、物語が進むにつれて内面的な陰影を増していく。この二人の対比が、サウンドトラック全体の核となっている。

音楽的には、ブロードウェイ・ミュージカルの構造を保ちながら、映画音楽としてのオーケストレーションや空間的な広がりが加えられている。舞台版の楽曲はすでに広く知られているが、映画版では歌唱の細部、音の配置、アンサンブルの厚み、劇中の感情の流れに合わせたニュアンスが強調される。したがって本作は、単なる舞台版の再録ではなく、映画というメディアに合わせた再解釈として聴くべき作品である。

日本のリスナーにとっては、Ariana Grandeのポップ・ヒットから本作に入る場合、通常のポップ・アルバムとは異なる構造に注意が必要である。ここでは、楽曲は単独のヒット曲としてだけでなく、物語の進行、キャラクターの変化、感情の対比を担う。そのため、歌詞やメロディを単体で味わうだけでなく、ElphabaとGlindaの関係性、Ozという社会の構造、魔女というイメージがどのように作られていくかを意識すると、作品の深みが見えてくる。

全曲レビュー

1. No One Mourns the Wicked

オープニング曲「No One Mourns the Wicked」は、物語の世界観を提示する重要な楽曲である。タイトルは「悪人を悼む者はいない」という意味を持ち、社会が誰かを「悪」と決めつけた後、その人物の死や苦しみをどう扱うかを問いかける。華やかな合唱と祝祭的なムードの中に、強い皮肉が込められている。

Ariana Grande演じるGlindaは、この曲で物語の語り手的な役割を担う。Glindaは人々から称賛される「良い魔女」として登場するが、その立場は決して単純ではない。群衆がElphabaを「悪い魔女」として扱う中で、Glindaはその物語を知る人物として、表面的な祝祭と内面的な複雑さの間に立つ。

音楽的には、ミュージカルらしい大きな導入部であり、合唱、オーケストラ、Glindaの明るい声が重なる。Grandeの歌唱は、ポップ・ソングで見せる滑らかなR&B的フェイクよりも、役柄に合わせた明瞭な発音とクラシカルな響きが重視されている。Glindaの華やかさを表現しながら、その裏にある不安や過去の記憶を完全には隠さない点が重要である。

この曲は、物語の中心テーマである「悪とは誰が決めるのか」を提示している。Elphabaが本当に悪なのか、それとも社会が彼女を悪として作り上げたのか。作品全体は、この問いを軸に展開していく。

2. Dear Old Shiz

「Dear Old Shiz」は、Shiz大学という物語の主要な舞台を紹介する短い楽曲である。大学、若さ、社交、エリート的な空気がコンパクトに提示され、ElphabaとGlindaが出会う環境が整えられる。

この曲は長大なナンバーではないが、物語上は重要である。Shiz大学は、友情と対立、偏見と成長が始まる場所であり、ElphabaとGlindaの関係が形成される出発点である。楽曲の明るさは、学園的な期待感を表している一方で、そこには社会的な序列や外見への評価も潜んでいる。

Ariana GrandeのGlindaは、この大学的な空気と非常に相性がよい。Glindaは周囲の視線を意識し、自分を魅力的に見せることに長けている人物である。そのため、学園的な社交空間は彼女の個性が際立つ場所になる。

音楽的には、ブロードウェイ的な軽快さがあり、物語の大きな導入部として機能する。アルバム全体の中では短い橋渡しのような役割だが、以降の楽曲で展開されるキャラクターの対比を準備している。

3. The Wizard and I

「The Wizard and I」は、Elphabaの自己認識と希望を描く重要曲であり、Cynthia Erivoの歌唱力が大きく発揮される楽曲である。Ariana Grandeが中心ではないが、アルバム全体を理解するうえで欠かせないナンバーである。

この曲でElphabaは、自分の力が認められ、Wizardに受け入れられる未来を夢見る。彼女は周囲から異質な存在として扱われてきたが、その魔法の力によって自分の価値が証明されると信じている。したがってこの曲は、希望の歌であると同時に、承認への渇望の歌でもある。

Erivoの歌唱は、力強い高揚感と内面の痛みを同時に含んでいる。大きな音域の広がりは、Elphabaの可能性の大きさを示す一方で、その希望がどこか危ういものであることも感じさせる。彼女が憧れるWizardは、後に権力の欺瞞と結びついていくため、この曲の明るさには後の展開を考えると皮肉も含まれる。

音楽的には、典型的な「I want song」、つまりミュージカルにおける主人公が自分の願望を表明する曲である。Elphabaが何を求め、何を信じているのかを明確に示すことで、物語の感情的な軸が定まる。

4. What Is This Feeling?

「What Is This Feeling?」は、ElphabaとGlindaの対立をコミカルに描くデュエットであり、Ariana Grandeの演技的歌唱が非常に効果的に表れる楽曲である。タイトルは「この感情は何?」という意味だが、ロマンティックな感情を予感させるような導入から、実際には互いへの強い嫌悪を歌うという構造がユーモラスである。

GrandeのGlindaは、ここで社交的で自己中心的な魅力を発揮する。彼女は自分の価値観や美意識に自信を持っており、Elphabaの存在を受け入れがたいものとして反応する。一方のElphabaも、Glindaの軽薄さや特権的な態度に反発する。二人の声質の対比が、曲の面白さを支えている。

音楽的にはテンポがよく、掛け合いのリズムが重要である。Grandeはここで、ポップ・ヴォーカル的な滑らかさよりも、コメディのタイミング、言葉の立て方、キャラクターとしての誇張を優先している。彼女の声は明るく、華やかで、Glindaの表面的な完璧さを表すが、その過剰さが笑いにもつながる。

歌詞のテーマは、第一印象と偏見である。二人は互いを理解する前に、相手をラベル化する。しかし、この対立こそが後の友情の出発点になる。嫌悪から始まる関係が、やがて深い絆へ変化していくという『Wicked』の核心が、この曲で軽やかに提示されている。

5. Something Bad

「Something Bad」は、Ozの社会に不穏な変化が起きていることを示す楽曲である。動物たちが言葉を奪われ、社会の中で抑圧されていくというテーマが、物語の政治的な側面を前面に出す。

この曲は、ポップな魅力よりも物語上の機能が強い。『Wicked』は、友情や自己発見の物語であると同時に、権力がどのように少数者を抑圧し、誰かを悪として作り上げるかを描く作品でもある。「Something Bad」は、その社会的な不気味さを示す。

音楽的には、やや陰影が濃く、これまでの学園的な明るさとは異なる雰囲気を持つ。言葉を奪われるというテーマは、声を持つことの重要性と直結している。ミュージカルという形式において、歌うことは自己表現そのものであるため、声を奪われることは存在を奪われることに等しい。

Ariana GrandeのGlindaが中心ではないが、この曲で提示される社会の不穏さは、後にGlinda自身の立場にも影響を与える。彼女は表面的には体制の側に立つ人物として見られやすいが、物語が進むにつれて、その立場の複雑さが明らかになる。

6. Dancing Through Life

「Dancing Through Life」は、Fiyeroを中心に、人生を深刻に考えすぎず、踊るようにやり過ごす姿勢を描く楽曲である。軽快で魅力的なナンバーだが、その表面の楽しさの下には、無責任さや空虚さも含まれている。

この曲における「踊る」は、人生を楽しむことの象徴であると同時に、現実から目をそらす行為でもある。Fiyeroは魅力的で社交的だが、深く考えないことを美徳のように振る舞う。Glindaにとっても、この曲の社交的な空気は非常に自然な居場所である。

GrandeのGlindaは、この楽曲の周辺で、華やかな社交の世界に属する人物として機能する。彼女は場を読む力があり、周囲に合わせ、自分を美しく見せる。その一方で、Elphabaとの関係を通じて、そうした表面的な世界だけでは満たされない変化へ向かっていく。

音楽的には、軽快なリズムと舞踏的な展開が特徴である。アルバム全体の中では、物語に動きと華やかさを与える楽曲であり、青春的な浮遊感を担う。しかし、後の展開を考えると、この軽さは単なる楽しさではなく、未成熟な世界観としても機能している。

7. Popular

「Popular」は、Ariana Grande演じるGlindaの代表曲であり、本サウンドトラックにおける彼女の最大の見せ場のひとつである。タイトル通り、人気者になること、外見や振る舞いを整えること、社会的に好かれることがテーマになっている。

この曲の面白さは、表面的には軽い自己啓発ソングのように聴こえながら、実際にはGlindaの価値観や社会性を鋭く表している点にある。GlindaはElphabaを助けようとしているが、その助け方はあくまで自分の価値観に基づいている。つまり、外見を変え、振る舞いを変え、周囲に好かれるようになればよい、という発想である。

Ariana Grandeの歌唱は、この曲で非常に巧みである。クラシカルな高音、コメディ的な発音、軽やかな装飾、台詞に近いニュアンスが混ざり合い、Glindaの過剰な可愛らしさと自己陶酔が表現されている。Grandeはここで、自身のポップ・スターとしての華やかさを利用しながらも、それを役柄の中に収めている。

歌詞のテーマは、人気という社会的な力である。人気は単なる表面的なものに見えるが、実際には人の扱われ方を左右する。Glindaはその力を熟知している。一方で、Elphabaはその価値観に簡単にはなじめない。この曲は、二人の違いをコミカルに描きながら、社会が外見や印象によって人を評価する構造を示している。

「Popular」は、Ariana Grandeの持つ明るさ、声の透明感、演技的センスが非常に効果的に使われた楽曲であり、本作における彼女の存在感を決定づけている。

8. I’m Not That Girl

「I’m Not That Girl」は、Elphabaの内面を静かに描くバラードである。華やかなナンバーが多い中で、この曲は抑制された感情が中心になっており、自己認識と諦めがテーマになっている。

Elphabaは、自分が恋愛物語の中で選ばれる「その女の子」ではないと感じている。ここには、外見へのコンプレックス、社会からの疎外、Glindaとの対比、そして自分には幸福が似合わないという痛みがある。華やかなGlindaと違い、Elphabaは自分を祝福される存在として想像できない。

音楽的には、静かで内省的なメロディが中心であり、Erivoの歌唱は大きく張り上げるよりも、感情を抑えた表現が重要になる。この抑制によって、Elphabaの孤独がより鮮明に伝わる。

Ariana GrandeのGlindaは直接中心にはいないが、この曲の背景にはGlindaの存在が大きい。Glindaは社会的に愛される人物であり、Elphabaが「自分はそうではない」と感じる対象でもある。この対比が、二人の関係の複雑さを深めている。

9. One Short Day

「One Short Day」は、Emerald Cityへの到着を描く華やかな楽曲である。ElphabaとGlindaが共に都市を訪れ、夢のような時間を過ごす場面であり、二人の友情が明るく表れるナンバーである。

音楽的には、祝祭感、都市のきらめき、ブロードウェイ的な華やかさが前面に出ている。合唱やオーケストレーションも豊かで、物語の中でも視覚的・音楽的に大きな転換点となる。ここでは、Emerald Cityが希望と可能性の場所として描かれる。

Ariana GrandeのGlindaは、この曲でElphabaと並び立つ存在として機能する。序盤では対立していた二人が、ここでは共に興奮し、同じ景色を見ている。この変化が重要である。GlindaとElphabaの友情は、単に互いを理解したというだけではなく、異なる価値観を持つ二人が一時的に同じ夢を共有することによって深まる。

しかし、Emerald Cityの輝きは後に疑わしいものになる。Wizardの権力、Ozの政治的欺瞞、社会の抑圧が明らかになるにつれて、この曲の明るさにも皮肉が生まれる。希望に満ちた都市の光が、同時に幻想でもあるという点が、『Wicked』らしい複雑さである。

10. A Sentimental Man

「A Sentimental Man」は、Wizardの人物像を示す楽曲である。彼は自分を温かく、感傷的で、父性的な存在として提示する。しかし、その言葉が本当の優しさなのか、権力者の自己演出なのかは慎重に聴く必要がある。

この曲は短く、音楽的にも控えめだが、物語上は重要である。WizardはElphabaにとって憧れの対象であり、社会的承認の象徴だった。しかし、彼の人物像が明らかになるにつれて、Elphabaの希望は大きく揺らぐ。

歌詞のテーマは、権力者が自分をどう語るかである。自分は感傷的で、優しい人間だと語ることは、必ずしも実際の行動の正しさを保証しない。『Wicked』は、善悪のイメージがどのように作られるかを描く作品であり、この曲もその一部である。

Ariana GrandeのGlindaにとっても、Wizardの存在は重要である。Glindaは社会的な承認や体制の中での成功に近い場所にいる人物であり、Wizardの権力構造と無関係ではいられない。この曲は、後のGlindaの選択にも影響を与える背景を作っている。

11. Defying Gravity

「Defying Gravity」は、『Wicked』を象徴する楽曲であり、ミュージカル史においても非常に重要なナンバーである。タイトルは「重力に逆らう」という意味を持ち、Elphabaが社会の期待、権力、恐れ、与えられた役割を拒否し、自分自身の道を選ぶ瞬間を描いている。

Cynthia Erivoの歌唱は、この曲で圧倒的な力を発揮する。高音の解放感、言葉の強さ、感情の上昇が、Elphabaの決断と完全に結びついている。単なるショーストップ・ナンバーではなく、物語上の決定的な転換点である。

Ariana GrandeのGlindaも、この曲で非常に重要な役割を担う。GlindaはElphabaと共に行くこともできたが、最終的には異なる道を選ぶ。この選択は、単なる臆病さだけでは説明できない。Glindaは社会の中で生きる人物であり、Elphabaのように完全に外へ飛び出すことができない。その弱さと現実感が、二人の関係を複雑にしている。

音楽的には、序盤の対話的な構造から、次第に大きな高揚へ向かう。オーケストラ、メロディ、リズム、声が一体となり、解放の瞬間を作る。ここでの「飛ぶ」という行為は、魔法の描写であると同時に、自己決定の象徴である。

歌詞のテーマは、他者に決められた自分を拒否することである。Elphabaは、社会から悪と呼ばれることを恐れず、自分の信じる道を選ぶ。その結果、彼女は孤独になる。しかし、その孤独の中に自由がある。「Defying Gravity」は、ミュージカルの枠を超えて、自己解放のアンセムとして強く機能している。

総評

『Wicked: The Soundtrack』は、Ariana Grandeのキャリアにおいて非常に重要な作品である。彼女はここで、ポップ・スターとしての歌唱力をそのまま提示するのではなく、Glindaという役を通じて、ミュージカル的な発声、演技、コメディ、台詞と歌の接続、キャラクターの成長を表現している。特に「Popular」における技巧とユーモアの融合、「No One Mourns the Wicked」での語り手としての複雑さ、「Defying Gravity」におけるGlindaの葛藤は、彼女の表現者としての幅を示している。

本作の中心は、Ariana Grandeだけではなく、Cynthia Erivoとの対比にある。ErivoのElphabaは、力強く、痛みを抱え、社会に抗う存在である。一方、GrandeのGlindaは、華やかで、愛され、社交的でありながら、内面に未熟さと葛藤を抱えている。この二人の関係が、作品全体の感情的な軸を作っている。二人は対立し、影響し合い、友情を育み、最終的には異なる道を選ぶ。その過程が音楽によって丁寧に描かれている。

音楽的には、本作はブロードウェイ・ミュージカルの伝統を映画音楽として再構成した作品である。楽曲は単独のポップ・ソングとして楽しめるものもあるが、本来は物語の流れの中で意味を持つ。したがって、アルバムとして聴く場合も、キャラクターの変化や場面の意味を意識することが重要である。

『Wicked』のテーマは、善悪の境界、社会的なラベル、偏見、権力、友情、自己決定である。Elphabaは「悪い魔女」と呼ばれるが、その悪は本当に彼女の本質なのか。Glindaは「良い魔女」と呼ばれるが、その善はどのように作られるのか。この作品は、名前や評判が人をどう形作るのかを問いかける。

Ariana Grandeにとって、Glinda役は非常に意味深い。Grande自身もまた、長年にわたってポップ・スターとして強いイメージの中に置かれてきたアーティストである。可愛らしさ、華やかさ、完璧な高音、ポップ・アイコンとしての存在感。そのイメージを持つ彼女が、Glindaという「見られること」「愛されること」「良い存在として振る舞うこと」を意識する役を演じることには、メタ的な響きもある。

本作は、Ariana Grandeの歌唱力を再確認する作品であると同時に、彼女が声を役柄に奉仕させることができる表現者であることを示す作品でもある。ポップ・アルバムでは、声は本人の感情やブランドを中心に機能する。しかしミュージカルでは、声はキャラクター、物語、場面、相手役との関係のために使われる。Grandeはその違いを理解し、Glindaとしての声を作り上げている。

日本のリスナーにとっては、Ariana Grandeのポップ作品から入る場合、本作はやや異なる聴き方を求める。ビートやプロダクションの新しさではなく、旋律、歌詞、演技、物語上の機能を聴く作品である。一方、ミュージカル・ファンにとっては、GrandeがどのようにGlindaを解釈し、Cynthia ErivoのElphabaと対比を作っているかが大きな聴きどころになる。

『Wicked: The Soundtrack』は、Ariana Grandeのキャリアを広げる作品であり、ポップとミュージカルの接点を示す重要なサウンドトラックである。華やかさ、技巧、物語性、社会的テーマが結びつき、単なる映画音楽を超えて、現代の音楽ファンにも届く作品になっている。

おすすめアルバム

1. Ariana Grande – Yours Truly

Ariana Grandeの初期キャリアを理解するうえで重要なデビュー・アルバムである。R&B、ドゥーワップ、ポップを基盤に、彼女の高い歌唱力とクラシカルなメロディ感覚が表れている。『Wicked』でのGlinda的な明るさや、装飾的な高音の基礎を知るうえで有効な作品である。

2. Ariana Grande – Sweetener

Ariana Grandeがポップ・スターとしてより個人的で柔軟な表現へ進んだアルバムである。Pharrell Williamsらのプロダクションにより、R&B、ポップ、実験的な音作りが混ざり合っている。『Wicked』とはジャンルが異なるが、声のコントロールや感情表現の幅を理解するうえで重要である。

3. Ariana Grande – eternal sunshine

内省的なポップ・アルバムとして、Ariana Grandeの成熟したヴォーカル表現を確認できる作品である。『Wicked』での演劇的な歌唱とは異なり、こちらでは個人的な感情と現代的なポップ・プロダクションが中心になる。彼女の声がポップ文脈でどのように機能するかを比較して聴くと興味深い。

4. Original Broadway Cast – Wicked

映画版サウンドトラックの原点となるブロードウェイ版キャスト録音である。Idina MenzelとKristin ChenowethによるElphabaとGlindaの解釈は、作品の基準として非常に重要である。映画版のCynthia ErivoとAriana Grandeの歌唱を理解するためにも、比較対象として欠かせない。

5. Cynthia Erivo – Ch. 1 Vs. 1

Cynthia Erivoのソロ・アーティストとしての表現を知るための作品である。『Wicked』ではElphabaとして圧倒的な劇的歌唱を担うが、ソロ作品ではソウル、R&B、ポップを横断する繊細な歌唱も聴ける。『Wicked』におけるErivoの声の深みを理解するうえで有効である。

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