発売日: 1998年5月25日
ジャンル: ポップ、アダルト・コンテンポラリー、ソフト・ロック、ティーン・ポップ
概要
『Where We Belong』は、ボーイゾーンが1998年にリリースした3枚目のスタジオ・アルバムであり、彼らの音楽的成熟とキャリアの絶頂を象徴する決定的作品である。
本作では前作『A Different Beat』で築いたオリジナリティと音楽的幅をさらに深化させ、グループ自らが楽曲制作に関与したトラックが多数収録されており、
“アイドル”から“アーティスト”への転換が本格的に結実したアルバムとなっている。
最大のヒット曲「No Matter What」は、アンドリュー・ロイド＝ウェバーの舞台『Whistle Down the Wind』の挿入歌であり、宗教的象徴性を持ちながらも普遍的な愛を歌った壮大なバラード。
この曲は全英シングルチャート6週連続1位という快挙を達成し、グループの知名度を世界的なものへと押し上げた。
全体的にバラード中心の構成で、感情豊かなストリングスやピアノを軸にしたアダルト・コンテンポラリーなサウンドが印象的。
1990年代後半のポップシーンにおいて、“安心して聴ける大人のボーイズグループ”という地位を確立した作品である。
全曲レビュー
1. Picture of You
コミカルなMVも話題となった軽快なアップテンポ・ナンバー。映画『Mr. Bean’s Holiday』の主題歌としても使用され、グループのポップな側面を強調したヒット曲。
2. Baby Can I Hold You
トレイシー・チャップマンのバラードをカバー。原曲の繊細さを残しつつ、ボーイゾーンならではのハーモニーが加わり、温もりある再解釈が光る。
3. All That I Need
アルバムのリードシングル。ミディアムテンポの愛の誓いを歌うバラードで、ローナン・キーティングの情感豊かなボーカルが印象的。全英チャート1位を記録。
4. Must Have Been High
アメリカン・カントリーロックの要素を感じさせる新機軸。失恋をテーマにしたリリックが、アルバムの中で異彩を放つ。
5. And I
ピアノとストリングスを主軸にした穏やかなラブソング。メンバー全員の歌声が丁寧に織り交ぜられた、グループの団結を感じる佳曲。
6. That’s How Love Goes
軽快なギターとリズムで展開するポップ・チューン。恋愛の浮き沈みを優しく描いた、聞き心地の良いナンバー。
7. Where Did You Go?
孤独と喪失を描いた、感情の波が大きいバラード。ドラマティックな展開が印象的で、ライブでの人気も高い。
8. I’m Learning
自己成長と愛の学びをテーマにした、静かで温かいバラード。歌詞に込められた人生観が、グループの成熟を物語る。
9. One Kiss at a Time
ラテン風味のギターが効いたエレガントな曲。恋人との日常の愛情を一つひとつ積み上げていく様子が詩的に表現されている。
10. While the World Is Going Crazy
“世界が騒がしくても、君のそばでは穏やかになれる”というテーマ。バンドサウンド寄りの構成で、新たな一面を見せている。
11. This Is Where I Belong
アルバムタイトルにも呼応する、自己肯定と帰属意識をテーマにした曲。メンバー自身の人生観やグループへの想いが滲む。
12. Will Be Yours
夜の静けさに合うようなロマンチックなナンバー。ピアノを中心としたアレンジがボーカルを引き立てる。
13. Good Conversation
軽やかなアコースティック・ポップ。カジュアルなやりとりの中に温かさが漂う、日常系ラブソング。
14. You Flew Away
別れの瞬間を静かに描く、しっとりとしたエンディング。繊細なボーカルとアコースティック・ギターが心に残る。
15. I Love the Way You Love Me（ボーナストラック）
John Michael Montgomeryの名曲カバー。アメリカーナとUKポップの融合とも言える完成度で、本作の雰囲気を総括するような一曲。
16. No Matter What
アルバムの象徴ともいえる大ヒット曲。
舞台音楽をルーツに持つ荘厳なアレンジと、メンバーのハーモニーが圧巻。愛と信仰、信頼をテーマにした“永遠の名曲”。
総評
『Where We Belong』は、ボーイゾーンが“ポップアイドル”から“成熟した音楽グループ”へと完全に脱皮した決定的作品であり、
同時に1990年代UKポップの叙情性とハーモニーの美学を凝縮した集大成的アルバムである。
恋愛、信頼、喪失、家族、人生──
そうした普遍的なテーマが、穏やかなアレンジと感情豊かな歌唱によって誠実に描かれており、聴き手の心にそっと寄り添う。
また、グループ内のボーカルバランスも円熟し、特にローナン・キーティングとスティーヴン・ゲイトリーの対比は、今作で最も魅力的に響く。
『Where We Belong』とは、ボーイゾーン自身の立ち位置だけでなく、リスナー一人ひとりの“居場所”に語りかけるような、
優しくて力強いメッセージそのものなのだ。
おすすめアルバム（5枚）
- Westlife『World of Our Own』
ボーイゾーンの系譜を受け継いだグループによる成熟したポップバラード集。 - Take That『Beautiful World』
再結成後の大人のポップグループ像。『Where We Belong』の延長にある作品。 - Backstreet Boys『Never Gone』
ティーンアイドルから脱却し、バラード中心の構成へと移行した作品。 - Savage Garden『Affirmation』
愛と人生をテーマにした叙情的ポップ。UKポップとは違う空気ながら、精神性が近い。 -
Josh Groban『Closer』
クラシカルなアプローチで愛と信仰を歌うヴォーカル・ポップ。『No Matter What』の文脈と通じる。
後続作品とのつながり
このアルバムをもって、ボーイゾーンのオリジナルアルバム制作は一旦一区切りとなり、メンバーはそれぞれソロ活動や俳優業へと展開。
しかし、この作品で示された音楽性と信頼は、再結成後の活動にも確実に生かされていく。
『Where We Belong』は、ボーイゾーンの“現在地”を伝えるだけでなく、
“これからもこの場所にいるよ”という、変わらぬ約束を聴き手と交わしたアルバムである。
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