
発売日: 2006年1月23日
ジャンル: インディー・ロック、ガレージ・ロック、ポストパンク・リバイバル
- 21世紀のロックンロール・レヴォリューション——Arctic Monkeysの衝撃的デビュー
- 全曲レビュー
- 1. The View from the Afternoon
- 2. I Bet You Look Good on the Dancefloor
- 3. Fake Tales of San Francisco
- 4. Dancing Shoes
- 5. You Probably Couldn’t See for the Lights but You Were Staring Straight at Me
- 6. Still Take You Home
- 7. Riot Van
- 8. Red Light Indicates Doors Are Secured
- 9. Mardy Bum
- 10. Perhaps Vampires Is a Bit Strong But…
- 11. When the Sun Goes Down
- 12. From the Ritz to the Rubble
- 13. A Certain Romance
- 総評
- おすすめアルバム
21世紀のロックンロール・レヴォリューション——Arctic Monkeysの衝撃的デビュー
イギリス・シェフィールド出身のArctic Monkeysが2006年に発表したデビューアルバムWhatever People Say I Am, That’s What I’m Notは、UKロック史において最も爆発的なデビュー作のひとつだ。本作は、リリース初週で36万枚を売り上げ、当時のイギリスにおけるデビューアルバムの最速売上記録を樹立した。
本作の特徴は、鋭利なギターリフ、疾走感のあるドラム、そしてフロントマンのアレックス・ターナーのウィットに富んだリリックにある。ナイトライフ、若者文化、都会の混沌をリアルに描写した歌詞は、シェフィールドのストリートの光景をそのままサウンドに落とし込んだかのような生々しさを持っている。The StrokesやThe Libertinesといった2000年代のガレージ・ロック・リバイバルの影響を受けながらも、彼ら独自のUKローカルな視点と語り口が際立つ作品となっている。
全曲レビュー
1. The View from the Afternoon
アルバムの幕開けを飾る、エネルギッシュなトラック。鋭いギターリフと、マット・ヘルダースのタイトなドラムが炸裂する。歌詞は夜の街を彷徨う若者の視点を描き、ナイトライフの興奮と無謀さを表現している。
2. I Bet You Look Good on the Dancefloor
シングルとして大ヒットした代表曲。ガレージ・ロックとポストパンクの要素を融合させた、圧倒的な勢いのあるナンバー。タイトル通り、ダンスフロアの熱気とカオスを描写した歌詞が印象的。
3. Fake Tales of San Francisco
シェフィールドのバンドシーンを皮肉る歌詞が特徴の楽曲。アメリカ文化に憧れながらも、地元のリアリティを忘れたバンドマンたちへの痛烈な批判が込められている。楽曲自体はブルージーなリフが絡む、ロックンロールな仕上がり。
4. Dancing Shoes
リズミカルなギターと跳ねるようなドラムが特徴の一曲。歌詞は、クラブで異性にアプローチしようとするが躊躇する若者の心理を巧みに描いている。アレックス・ターナーの観察眼が光る一曲。
5. You Probably Couldn’t See for the Lights but You Were Staring Straight at Me
ライブ感のある疾走感が特徴的な楽曲。歌詞は、ナイトクラブでの緊張感と自意識過剰な瞬間を描いており、バンド初期のユーモアと皮肉が感じられる。
6. Still Take You Home
荒々しいギターリフとアグレッシブなビートが印象的。歌詞では、バーで出会った女性に対する複雑な感情をシニカルに描いており、ターナーのストーリーテリングが冴え渡る。
7. Riot Van
アルバムの中では異色のスローテンポな楽曲。ティーンエイジャーのいたずらや警察との対峙を、ユーモラスかつシニカルに描写している。ギターのシンプルなアルペジオが曲の雰囲気を引き立てる。
8. Red Light Indicates Doors Are Secured
タクシーに乗る若者たちの視点から、夜の終わりを描いた楽曲。疾走感のあるリズムと、バンドのタイトな演奏が際立つ。
9. Mardy Bum
アルバムの中でも特にメロディアスな楽曲で、恋人との口論をテーマにした歌詞が印象的。シニカルなユーモアがありながらも、どこか甘酸っぱい感情がにじみ出る名曲。
10. Perhaps Vampires Is a Bit Strong But…
ヘビーなリフが印象的な楽曲で、バンドに対して懐疑的な人々への反論を込めた歌詞が特徴。アルバムの中では異質なダークなムードを持つ一曲。
11. When the Sun Goes Down
シングルカットされた、UKインディー・ロック史に残る名曲。売春や社会の闇を描いた歌詞が衝撃的で、アレックス・ターナーの鋭いリリックセンスが光る。イントロの穏やかなギターと、後半の爆発的な展開が印象的。
12. From the Ritz to the Rubble
クラブのドアマンとのやりとりを描いた楽曲。トリッキーなギターリフと、ダイナミックなリズムチェンジが特徴的。夜遊びの混沌と理不尽さを描いたリアルなストーリーが展開される。
13. A Certain Romance
アルバムの締めくくりを飾る名曲。地元の若者文化を批判しつつも、そこに根付くアイデンティティを肯定するような複雑な感情が描かれる。ギターのアルペジオから始まり、終盤に向けてエモーショナルに盛り上がる構成が素晴らしい。
総評
Whatever People Say I Am, That’s What I’m Notは、UKインディー・ロックの新時代を告げる歴史的なデビュー作だ。ガレージ・ロックの荒々しさと、UKロック特有の鋭いリリックを融合させ、シェフィールドのナイトライフをリアルに描いた。
このアルバムは、単なるロックアルバムではなく、2000年代の若者文化のドキュメントでもある。鋭い視点とリアルな語り口、シンプルながらもエネルギッシュな演奏が融合し、リリースから20年近く経った今でも色褪せることのない名盤として君臨している。
おすすめアルバム
- The Strokes – Is This It (2001)
ガレージ・ロック・リバイバルの金字塔。Arctic Monkeysにも大きな影響を与えた作品。 - The Libertines – Up the Bracket (2002)
UKインディー・ロックの混沌と美学を象徴する名盤。 - Franz Ferdinand – Franz Ferdinand (2004)
キャッチーでダンサブルなUKロックの代表作。 - The Cribs – Men’s Needs, Women’s Needs, Whatever (2007)
ガレージ・ロックとUKパンクのエネルギーが炸裂するアルバム。 - Bloc Party – Silent Alarm (2005)
ポストパンク・リバイバルの代表作で、Arctic Monkeysと同時代のシーンを築いた。
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