(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang by Heaven 17(1981)楽曲解説

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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1. 歌詞の概要

「(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang」は、Heaven 17が1981年に発表したデビュー・シングルであり、後に1stアルバム『Penthouse and Pavement』にも収録された、ポリティカルな内容とダンサブルなサウンドを大胆に融合させた楽曲である。タイトルの通り、「ファシスト的なグルーヴなんていらない」と、80年代初頭の政治的風潮に対する明確な拒絶と風刺を含んだプロテスト・ソングでありながら、エレクトロ・ファンク調の軽快なリズムで構築されている点が極めてユニークである。

楽曲の語り口は辛辣で風刺的だが、攻撃的ではない。むしろ、シンセとベースラインが交差するディスコ的なサウンドにのせて、「踊りながら抵抗せよ」とでも言いたげなスタンスが貫かれている。
歌詞では、アメリカのロナルド・レーガン政権や、右傾化する社会的風潮への懸念、さらには戦争、差別、独裁、検閲といった時代の不安がストレートに言及されており、ポップ・ソングの形式を借りながらも、明らかに社会批評としてのメッセージを持った作品である。

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2. 歌詞のバックグラウンド

Heaven 17は、元The Human Leagueのメンバーであったマーティン・ウェアとイアン・クレイグ・マーシュがグレン・グレゴリーをボーカルに迎えて結成したユニットで、シンセポップに明確な政治意識を持ち込んだ先駆者的存在である。

「(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang」は、当時のイギリスおよびアメリカに広がりつつあった保守回帰の政治ムード――特にマーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンという二人の強硬保守派リーダーに対する鋭い批判が根底にある。

本曲がリリースされた1981年は、イギリス国内で失業率や労働争議が激化し、国民の分断が進行していた時期でもあり、楽曲に込められた「ファシスト的なノリ(Groove Thang)」という表現は、単なる政治体制だけでなく、それを無批判に受け入れてしまうカルチャー全体をも皮肉っている。

この曲は、その政治的メッセージゆえにBBCによって放送禁止処分を受けたことで知られ、その事実自体がさらに“言論の自由”や“検閲”というテーマを際立たせることとなった。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、本作の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を添える。

Brothers, sisters, we don’t need this fascist groove thang
→ 兄弟姉妹よ、こんなファシストのノリはもうごめんだ

Democrats are out of power / Across that great wide ocean
→ あの広い海の向こうでは、民主主義は力を失っている

Ronald Reagan’s got the traction / Fascist god in motion
→ ロナルド・レーガンが勢いを増している ファシストの神が動き出した

Evil men with racist views / Spreading all across the land
→ 人種差別的な思想を持った悪しき者たちが この国中に広がっていく

Don’t turn back, don’t look away / We’re gonna have our say
→ 振り返るな、目をそらすな 僕らは意見を言い続けるんだ

引用元:Genius Lyrics – Heaven 17 “(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang”

このように、直接的な政治批判とメディア風刺、さらには抑圧に対するカウンターの精神が、ラップのようなテンポ感で次々と放たれていく。

4. 歌詞の考察

「(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang」は、ポップソングの枠を超えて明確な政治声明としての機能を果たしている。
そしてその語りは、リスナーを扇動するのではなく、むしろ「思考せよ」「目を逸らすな」と、知的な参加を促してくる。

この曲の面白さは、あえて“踊れる”グルーヴの中に、反ファシズムのメッセージを織り交ぜていることにある。
この構造はまさに、権力がいかにエンターテインメントや大衆文化に侵食するかを逆手に取り、それに対して“音楽”という手段で反撃する姿勢そのものだ。

また、“ファシスト”という言葉を比喩的に用いながらも、その具体性――例えばロナルド・レーガンへの名指し、メディア操作、社会的不公正――は極めてリアルで、現代におけるポップソングでは見られないほど明確な問題意識がある。

このような曲が商業的にリリースされたという事実、そして放送禁止という措置を受けたことは、同時代の音楽シーンにとっても非常に異例な出来事であり、“サウンドで抗議する”というポップカルチャーの力学のあり方を示す重要なドキュメントとも言える。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Two Tribes by Frankie Goes to Hollywood
    冷戦期の核戦争をテーマにした、政治色の強いダンス・アンセム。

  • Shipbuilding by Elvis Costello
    フォーク・バラードのかたちで描かれる、戦争と経済の陰惨な結びつき。
  • Panic by The Smiths
    無関心なラジオ文化への怒りをストレートにぶつけた、英国社会批評ソング。

  • Fight the Power by Public Enemy
    音楽史に残るブラック・パワーの象徴。怒りと誇りに満ちたヒップホップの金字塔。

  • Ghost Town by The Specials
    不況と暴動のイギリス社会をダブのサウンドで描いた、リアリズムと風刺の傑作。

6. “踊りながら抵抗せよ”というメッセージの最前線

「(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang」は、Heaven 17というユニットの持つ知的ポップ精神と社会批評性が、最も明確なかたちで現れた作品である。

この曲は、政治的言論が萎縮し、情報が過剰に管理されていく時代において、“歌うこと”そのものがひとつの反抗となりうるという事実を体現している。
しかもそれを、怒鳴るのでも、泣き叫ぶのでもなく、“踊れるビート”の上で冷静に突きつけるという構造こそが、本作最大の鮮やかさである。

現代のポップミュージックがしばしば社会性を避ける傾向にあるなかで、「Fascist Groove Thang」は、音楽と言葉が真に意味を持つためには、何に抗うべきかを明確にすべきだという問いを、今なお突きつけてくる。

それは、“踊ること”と“考えること”の融合。
ポップであることをやめずに、鋭くあること。
この曲は、その可能性をいまも高らかに鳴り響かせている。

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