アルバムレビュー:Pleasure One by Heaven 17

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1986年11月17日

ジャンル:Synth-Pop / Sophisti-Pop / Funk / Soul

概要

Pleasure Oneは、Heaven 17が1986年に発表した4作目のスタジオアルバムである。Martyn Ware、Ian Craig Marsh、Glenn Gregoryからなるグループは、初期にはシンセサイザーとリズムマシンを前面に出し、企業社会や消費文化への皮肉をダンサブルな電子音楽へ組み込んでいた。本作ではその方法から大きく踏み出し、生ドラム、ベース、ギター、ホーンなど人間が演奏する楽器を積極的に取り入れて、ソウルやファンクに近いバンドサウンドを作っている。

変化は電子楽器を捨てたというより、電子音と生演奏の境界を目立たなくした点にある。初期作品ではシーケンサーの反復が曲の骨格を作っていたのに対し、ここではベースやドラムが細かな強弱を付け、ホーンがボーカルへ応答することで、リズムがより柔軟に動く。Gregoryの低く滑らかな声も、無機質な電子音の上で冷たく響く初期とは違い、厚いコーラスやソウル的なアレンジの中心へ置かれている。

1980年代半ばには、英国のシンセポップ勢の多くがファンク、ソウル、ジャズを吸収しながらより豪華なスタジオサウンドへ移っていた。Pleasure Oneもその流れと重なるが、Heaven 17の場合はデビュー当初からブラックミュージックへの関心が強かったため、方向転換は唐突ではない。機械でファンクを再構成していたグループが、今度は生身の演奏家を交えてそのグルーヴを作り直した作品と捉えると、本作の位置がよく分かる。

全曲レビュー

1. 「Contenders」

力強いドラム、弾むベース、ホーンを組み合わせたイントロから、従来のHeaven 17とは違う肉体的なサウンドを提示する。Gregoryの歌唱は低い声の落ち着きを保ちながら、サビではバックボーカルとともに大きく開き、電子ポップというよりソウルレビューに近い高揚を作る。タイトルが示す競争や対立の感覚に対して演奏は堂々としており、勝敗をめぐる社会的な緊張も感じさせる。アルバムの新しい楽器編成を最初にまとめて聞かせる、明快なオープニングだ。

2. 「Trouble」

短く切るギターとベースの動きが中心となり、ファンク色をさらに強める。リズムは完全に一定の機械的反復ではなく、ドラムのアクセントが微妙に位置を変えるため、演奏には前へ転がる感覚がある。Gregoryは「trouble」という直接的な言葉を余裕のある声で歌い、題材の緊張と歌唱の滑らかさに対照を作る。初期Heaven 17ならシンセのパターンが担っていた細かな運動を、ここではベース、ギター、ホーンが分担しているのがポイントである。

3. 「Somebody」

人とのつながりを求める感情を前面に置き、政治や社会を観察する初期の冷たい視点から、より個人的な領域へ入っていく。Gregoryの低音はこうしたソウル寄りの曲と相性がよく、言葉を強く押し出すより、長めの音符を滑らかにつないで感情を作る。伴奏もボーカルの周囲へコーラスや鍵盤を重ね、サビに入ると視界が広がるように音を厚くする。豪華な制作ながら、中心にあるのは非常に単純な「誰かを必要とする」という感情である。

4. 「If I Were You」

立場を入れ替えるという仮定を使い、相手との距離や判断を見直す歌である。演奏は前曲より引き締まり、リズムセクションが一定のグルーヴを維持する上へ、ホーンやシンセが短いアクセントを置く。Gregoryの歌唱には相手へ助言するような落ち着きがある一方、その言葉が本当に届くのかという微妙な距離も残る。Heaven 17らしい理性的なボーカルと、温度の高いソウル/ファンクの伴奏がうまく共存している。

5. 「Low Society」

題名には「上流社会」を反転させたような皮肉があり、Heaven 17が初期から得意としてきた階級や社会的地位への関心を思わせる。音楽は説教臭くならず、太いベースとホーンを使ったファンクとして軽快に進むため、批評的な視線と娯楽性が同じ場所にある。Gregoryも怒鳴るのではなく、少し芝居がかった余裕を保って言葉を運ぶ。アルバムが人間関係中心へ軟化しただけではなく、以前の社会観察も形を変えて残っていることが分かる曲だ。

6. 「Red」

タイトルの強い色彩感に似合い、演奏にも熱量がある。ホーンとリズム隊が短いフレーズを交換し、鍵盤がその隙間を埋めることで、単一のシンセパターンでは得られない細かな動きが生まれる。Gregoryの声はそれらの楽器より低い位置に落ち着き、賑やかな伴奏の中で曲の軸として機能する。中盤までに確立した生演奏中心のサウンドを、より色鮮やかなアレンジで聞かせる一曲である。

7. 「Look at Me」

タイトルそのものが相手の注意を求める直接的な呼びかけになっており、歌詞の視点も社会全体より一対一の関係へ向かう。Gregoryの声を前面へ置きながら、バックボーカルが応答することで、主旋律だけでは作れないソウル的な厚みを加えている。リズムは軽快だが急がず、ベースの動きを十分に聞かせるテンポが選ばれている。Heaven 17のポップ性を、電子的な仕掛けより歌とアンサンブルによって成立させた曲だ。

8. 「Move Out」

題名の命令形に合わせ、リズムにも押し出しの強さが戻る。ベースとドラムが曲を前進させ、ホーンやギターが拍の隙間へ鋭く入るため、実際のテンポ以上に忙しく感じられる。Gregoryのボーカルもここでは滑らかさだけでなく強いアクセントを使い、伴奏の切れ味へ合わせている。アルバム終盤で再びファンクの身体性を強調し、バラード寄りの曲だけに流れないよう全体を引き締めている。

9. 「Free」

最終曲は「自由」という大きな言葉を掲げながら、単純な勝利宣言にはしない。Gregoryの声を中心に演奏が徐々に広がり、バックボーカルや楽器が加わることで、個人的な言葉が集団的な響きへ変わっていく。アルバムを通して聞かれたソウル的な人間の声と、生楽器によるグルーヴがここで自然にまとまる。初期の冷たい電子音へ戻って閉じるのではなく、本作で獲得した温かく開放的な音を最後まで維持したエンディングである。

総評

Pleasure OneをHeaven 17のディスコグラフィーで特徴づけているのは、電子音楽からソウル/ファンクへ「転向」したことではなく、以前は機械で作っていたグルーヴを人間の演奏へ置き換えたことである。初期作品にもブラックミュージックの影響は強かったが、そこではリズムマシンやシンセベースを使ってファンクを人工的に再構築する面白さがあった。本作では生のベース、ドラム、ギター、ホーンが前へ出るため、同じ関心がまったく違う手触りを持つ。

この変化によって最も恩恵を受けたのはGlenn Gregoryの歌である。もともと低く豊かな声を持つ彼は、初期には冷たい電子音との対比によって独特の存在感を作っていた。本作では逆に、コーラスやホーンと同じ温度の中へ入り、ソウルシンガー的な滑らかさを強く聞かせる。ボーカルが孤立しているのではなく、他の演奏者とのやり取りによって曲が動くようになった点は大きな変化だ。

一方で、初期Heaven 17の魅力だった奇妙なシンセの音色や、機械的な反復が生む冷たさは後退している。1986年らしい豪華で磨かれた制作は曲を豊かにする反面、Penthouse and PavementやThe Luxury Gapにあった鋭い違和感を薄めてもいる。そのため電子ポップとしての独創性を基準にすれば初期作品ほど強烈ではない。しかし、生演奏を増やしても単なる伝統的ソウルの模倣にならず、Heaven 17らしい整理されたアレンジを維持しているところに本作の長所がある。

結果としてPleasure Oneは、1980年代前半のシンセポップから後半の洗練されたポップへ移るHeaven 17を記録した転換作となった。電子楽器と人間、白人英国ポップとアメリカのソウル/ファンクという、彼らが最初から扱っていた関係を別の比率で組み直したアルバムである。初期の緊張感より演奏の豊かさを選んだことで、グループが単一のシンセポップ様式に依存していなかったことを明確に示している。

おすすめアルバム

How Men Are by Heaven 17

1984年の前作で、電子的な骨格を保ちながらソウル、ファンク、ジャズ的なアレンジを拡大している。Pleasure Oneで生演奏が前面へ出るまでの変化を追ううえで、最も直接的な橋渡しとなる作品だ。

Penthouse and Pavement by Heaven 17

1981年のデビュー作。機械的な電子音とファンクへの関心、企業社会への皮肉を鋭く結びつけている。Pleasure Oneと比較すると、同じグルーヴ志向が初期にはどれほど人工的な音で表現されていたかが分かる。

The Luxury Gap by Heaven 17

「Temptation」を含む1983年作で、実験的なシンセポップと大きなソウルボーカルの接続に成功した作品。Pleasure Oneの豊かな歌とアレンジへ進むための基本形が、より電子的な形で完成している。

Cupid & Psyche 85 by Scritti Politti

ファンクとソウルを最先端のデジタル制作へ取り込んだ1985年作。Heaven 17がPleasure Oneで生演奏へ重心を移したのとは対照的だが、英国ニューウェーブから洗練されたブラックミュージック志向のポップへ進んだ点で比較しやすい。

Music for the Masses by Depeche Mode

電子音を維持しながら1980年代後半の大きなスタジオサウンドへ発展した作品。生演奏へ向かったPleasure Oneとは別の道を選んでおり、初期シンセポップ勢が時代の変化にどう対応したかを対照的に聞くことができる。

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