アルバムレビュー：Warrior by Kesha

アルバムレビュー

2025.03.15

発売日: 2012年11月30日
ジャンル: エレクトロポップ、ダンス・ポップ、グラムロック

快楽主義の進化—野生的な戦士の誕生
全曲レビュー
総評
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快楽主義の進化—野生的な戦士の誕生

2012年、Keshaは2ndアルバムWarriorで、Animalの無軌道なパーティー感を引き継ぎながらも、より音楽的な幅を広げた作品をリリースした。本作ではエレクトロポップに加え、グラムロックや80年代ロックの影響を強く感じさせる楽曲が散りばめられており、彼女自身のアーティスト性の進化が見て取れる。

リードシングル「Die Young」は、軽快なアコースティックギターのリフとダンサブルなビートが融合したキャッチーな楽曲で、前作の「Tik Tok」の流れを汲みながらも、より成熟したサウンドになっている。また、プロデューサー陣にはDr. Luke、Max Martin、Benny Blancoといったヒットメーカーに加え、ロック界のレジェンドIggy Popが参加しており、パンクやロックの要素を強化している点も特徴的だ。

全曲レビュー

1. Warrior

アルバムの幕開けを飾るタイトル曲。エレクトロとロックの融合が印象的で、「私は戦士」という自己肯定感に満ちた歌詞が、アルバム全体のテーマを象徴している。

2. Die Young

リードシングルとして大ヒットしたダンスチューン。「若いうちに人生を楽しもう」というテーマが、彼女の無邪気な快楽主義を体現している。アコースティックギターとエレクトロサウンドの組み合わせが新鮮。

3. C’mon

シンセポップの軽快なメロディと、遊び心のある歌詞が魅力的な楽曲。パーティーソングの要素を持ちながらも、キュートな雰囲気が漂う。

4. Thinking of You

ロック色の強いアップテンポな楽曲。過去の恋を振り切るような強気なリリックが特徴的で、彼女のアグレッシブな一面を見せる。

5. Crazy Kids

ヒップホップの要素を取り入れたトラックで、独特のリズム感がクセになる。リミックス版ではwill.i.amが参加し、よりクラブ向けの仕上がりになった。

6. Wherever You Are

シンセウェーブ的なサウンドを取り入れた楽曲。浮遊感のあるメロディが特徴的で、アルバムの中でも異色のトラック。

7. Dirty Love (feat. Iggy Pop)

Iggy Popとのコラボによる、パンク色の強いロックンロール・ナンバー。これまでのKeshaの音楽にはなかった生々しいロックのグルーヴが炸裂している。

8. Wonderland

フォーク調のバラードで、ノスタルジックな雰囲気が漂う。Keshaのヴォーカルがシンプルに響き、彼女の音楽的な多様性を感じさせる。

9. Only Wanna Dance with You

ロックバンドThe Strokesのメンバーが関わったこともあり、インディーロックのテイストが強い楽曲。エレクトロポップをベースにしながらも、バンドサウンドとの融合が新鮮。

10. Supernatural

エレクトロハウスの要素を取り入れたダンスナンバー。ミステリアスな雰囲気と中毒性のあるメロディが印象的。

11. All That Matters (The Beautiful Life)

シンセポップの王道を行く楽曲で、ポジティブなメッセージが詰まったアンセム。煌びやかなサウンドが耳に残る。

12. Love Into the Light

アルバムのラストを飾るバラードで、前作Animalの「Animal」と同じく、エモーショナルな締めくくりとなっている。

総評

Warriorは、Keshaのパーティー・クイーンとしてのキャラクターを維持しつつ、より音楽的な実験と進化を遂げたアルバムだ。特にロックやパンクの要素を取り入れた点が大きく、単なるエレクトロポップ・アーティストにとどまらないことを証明した。

また、本作は彼女のアイデンティティの強化を感じさせる作品でもあり、「私は戦士であり、自由を求める存在である」というメッセージが全体を通じて伝わってくる。プロダクション面では、より厚みのあるサウンドに仕上がっており、シンプルなパーティーチューン以上の深みを持つ楽曲が多い。

商業的には前作Animalほどの爆発的な成功には至らなかったが、Keshaのアーティストとしての成長を示す重要な作品であり、彼女のキャリアの中でも特異な位置を占めるアルバムとなった。