アルバムレビュー:Waves by Rachel Platten

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

  • 発売日: 2017年10月27日
  • ジャンル: ポップ、ダンス・ポップ、エレクトロポップ、シンガーソングライター

概要

レイチェル・プラッテンの『Waves』は、2017年にリリースされたメジャー第2作にあたるアルバムであり、彼女のキャリアにおいて「Fight Song」の成功後にどのような音楽的方向へ進むかを示した重要な作品である。前作『Wildfire』は、自己肯定や再起をテーマにした大ヒット曲「Fight Song」によって広く知られたが、その一方で、レイチェル・プラッテンのイメージは「励ましのアンセムを歌うシンガー」という枠に強く結びついた。『Waves』は、そのイメージを保ちながらも、より洗練されたポップ・プロダクション、恋愛の揺らぎ、欲望、迷い、成熟した感情表現へと踏み込んだ作品である。

タイトルの「Waves」は、感情の波、人生の変化、恋愛における浮き沈みを象徴している。前作が「立ち上がる」「自分を信じる」という直線的なメッセージを軸にしていたのに対し、本作では感情がより複雑に描かれる。強さだけではなく、ためらい、不安、依存、解放、自己変革が曲ごとに異なる形で表現されている。そのため、『Waves』は単なる応援歌集ではなく、30代のポップ・アーティストが自分の人生や恋愛をより大人の視点から見つめ直したアルバムとして聴くことができる。

音楽的には、2010年代後半のメインストリーム・ポップの特徴が色濃い。シンセサイザー、エレクトロニックなビート、トロピカル・ハウス以降の軽やかなリズム処理、EDM以降のドロップ感、そしてシンガーソングライター的なメロディの親しみやすさが組み合わされている。レイチェル・プラッテンの声は、圧倒的な技巧で聴かせるタイプではなく、明るさ、素直さ、言葉の届きやすさを武器にするタイプである。本作でもその声質は、重すぎないポップ・サウンドの中で、感情の起伏を分かりやすく伝える役割を担っている。

『Waves』の意義は、彼女が「Fight Song」の成功に依存するだけではなく、現代ポップの文脈に自分を更新しようとした点にある。2010年代の女性ポップ・シーンでは、ケイティ・ペリー、テイラー・スウィフト、シーア、エリー・ゴールディング、デミ・ロヴァートなどが、それぞれ自己表現、エレクトロニックなプロダクション、強いメッセージ性を組み合わせていた。レイチェル・プラッテンはその中で、過度に尖ったイメージを作るのではなく、日常的な感情をポップなメロディに落とし込む方向を選んでいる。

また、本作は日本のリスナーにとっても聴きやすいポップ・アルバムである。メロディは明快で、サビは大きく開け、歌詞は比較的ストレートである。J-POPにも通じる感情の分かりやすさがありながら、サウンド面では欧米の2010年代後半のポップ・プロダクションが導入されている。特に、失恋や恋愛の揺れを扱う曲では、日本のポップスにも近い感傷性を感じさせる一方、リズムや音響の処理はよりグローバルなチャート・ポップに近い。

『Waves』は、ポップ・スターとして大きな転換を遂げた作品というより、レイチェル・プラッテンが自分のイメージを広げようとしたアルバムである。自己肯定のメッセージを残しつつ、より身体的で、恋愛的で、時にダンス・ポップ寄りの表現へと向かう。その意味で本作は、「Fight Song」以後の彼女が、単一の成功曲に回収されないために作った、変化と模索の記録と言える。

全曲レビュー

1. Perfect for You

オープニング曲「Perfect for You」は、『Waves』全体の方向性を明確に示す楽曲である。タイトルは「あなたにとって完璧な存在でいる」という意味を思わせるが、実際にはその期待から抜け出そうとする内容を含んでいる。歌詞では、他人の理想像に合わせ続けることへの疲れ、自分を偽ることへの違和感、そして不完全な自分を受け入れる姿勢が描かれる。

この曲は、前作の「Fight Song」と同じく自己肯定のテーマを扱っているが、表現の仕方はより現代的で、少しシニカルである。「私はあなたのために完璧ではない」という態度は、単なる前向きさではなく、他人の評価から自分を切り離すための宣言として機能している。自己肯定が明るいスローガンではなく、関係性の中で自分を守るための境界線として描かれている点が重要である。

音楽的には、エレクトロポップの要素が強く、リズムは軽快で、シンセの質感も洗練されている。サビでは開放感がありながら、過度に壮大なバラードにはならず、ダンス・ポップ的な推進力を持っている。レイチェル・プラッテンのヴォーカルは明るく、言葉の輪郭がはっきりしており、歌詞のメッセージを直接的に届ける。

「Perfect for You」は、『Waves』が単に恋愛曲を並べたアルバムではなく、自分自身をどう扱うか、他人の期待とどう距離を取るかをテーマにしていることを示す導入曲である。前作からのファンに対してはレイチェル・プラッテンらしい励ましの要素を残しつつ、サウンド面ではより洗練されたポップへ進んだことを印象づける。

2. Whole Heart

「Whole Heart」は、恋愛における全面的な献身と感情の解放をテーマにした楽曲である。タイトルの通り、心の一部ではなく「全部」を差し出すというイメージが中心にある。歌詞では、慎重に距離を取るのではなく、相手に対して全身で向き合おうとする姿勢が描かれる。

この曲の特徴は、明るく開放的なサウンドである。ビートは軽やかで、シンセやコーラスがポジティブな空気を作り出す。2010年代後半のポップに多く見られる、EDMの影響を受けたビルドアップと、過度に重くならないドロップ感が用いられている。大きなフェス向けのEDMというより、ラジオ・ポップとして聴きやすく調整されたサウンドである。

歌詞のテーマは非常にストレートで、恋愛の高揚感を肯定的に描いている。ただし、レイチェル・プラッテンの歌唱には、少女的な無邪気さだけではなく、大人の女性が自分の選択として愛に踏み込む感覚がある。これは、彼女の年齢やキャリアの成熟とも関係している。恋愛を運命的な幻想としてではなく、恐れを抱えながらも心を開く行為として表現している点が印象的である。

「Whole Heart」は、『Waves』の中でも比較的明るいポップ・ソングであり、アルバムの序盤に前向きな勢いを与える。自己防衛を歌った「Perfect for You」の後にこの曲が置かれることで、自分を守ることと、誰かに心を開くことの両方が本作のテーマであることが示される。

3. Collide

「Collide」は、恋愛における衝突、引力、予測不能な感情のぶつかり合いを描いた楽曲である。タイトルの「collide」は「衝突する」という意味を持つが、ここでは単なる対立ではなく、二人の存在が激しく交わる瞬間を表している。恋愛の中で、理性では制御できない引力に引き寄せられる感覚が中心にある。

音楽的には、やや暗めのエレクトロポップの質感を持つ。ビートはしっかりしているが、全体の空気は軽すぎず、メロディには切なさがある。シンセの音色は洗練されており、現代的なポップの中に少し影を落とす。こうしたサウンドは、2010年代後半のポップにおいてよく見られた、明るさと憂いを同居させる手法である。

歌詞では、相手との関係が安全で穏やかなものではなく、感情を揺さぶるものであることが示される。恋愛は時に安定ではなく、衝突によって自分自身を変えてしまう力を持つ。レイチェル・プラッテンは、その危うさを完全に否定するのではなく、むしろそこに生まれるエネルギーをポップ・ソングとして表現している。

ヴォーカル面では、彼女の声の明るさが曲の暗さを過度に重くしない役割を果たしている。深刻になりすぎず、しかし感情の揺れはしっかり伝える。そのバランスが「Collide」の魅力である。この曲は、『Waves』における恋愛表現が単純な幸福だけではなく、緊張や危うさも含んでいることを示す重要な楽曲である。

4. Keep Up

「Keep Up」は、タイトルが示す通り、相手に対して「ついてこられるか」と問いかけるような、エネルギッシュで自信に満ちた楽曲である。ここでのレイチェル・プラッテンは、励ましの語り手というより、自分のペースで進む女性像を提示している。恋愛や人間関係の中で相手に合わせるのではなく、自分の速度や欲望を隠さない姿勢が中心にある。

音楽的には、リズムの強さが際立つダンス・ポップである。ビートは前面に出ており、シンセや加工されたコーラスが楽曲に現代的な質感を与える。サビはキャッチーで、ライブやクラブ的な空間でも機能しやすい構造を持つ。前作のアコースティック寄りの親しみやすさから一歩進み、より都会的で身体的なポップへ接近している。

歌詞では、自己主張とスピード感が重要である。相手に選ばれる存在として待つのではなく、自分が主導権を握る。この点は、2010年代の女性ポップ・アーティストに広く見られたテーマともつながる。テイラー・スウィフトやデミ・ロヴァート、ケリー・クラークソンらが示してきたように、現代ポップにおける女性像は、受け身の恋愛対象ではなく、自分の意志と欲望を持つ主体として描かれることが増えていた。

レイチェル・プラッテンの歌唱は、強さを出しながらも攻撃的になりすぎない。彼女の声には親しみやすさがあるため、「Keep Up」は挑発的でありながらもポップな聴きやすさを保っている。アルバム全体の中では、自己解放とダンス性を担う曲であり、『Waves』がより身体的なサウンドへ向かっていることを示している。

5. Broken Glass

「Broken Glass」は、『Waves』の中でも特に象徴的なメッセージ性を持つ楽曲である。タイトルの「割れたガラス」は、痛み、危険、過去の傷を示すと同時に、それを踏み越えて進む強さを表している。歌詞では、困難や批判、傷ついた経験を乗り越え、自分の道を進む姿勢が描かれる。

この曲は、レイチェル・プラッテンの代表的なテーマである自己肯定と再起を、よりダンス・ポップ的な形に変換した楽曲である。「Fight Song」がピアノを軸にしたアンセムとして広がっていく曲だったのに対し、「Broken Glass」はリズムの軽快さとポップなフックによって前向きさを表現する。サウンドは明るく、コーラスも開放的で、聴き手に高揚感を与える作りになっている。

歌詞の内容は、他人に傷つけられても、その破片の上で踊るように前へ進むというイメージを持つ。ここで重要なのは、痛みをなかったことにするのではなく、それを自分の力に変える点である。割れたガラスは危険なものだが、その上を進むという表現は、逆境の中で自分の足場を作る行為として解釈できる。

音楽的には、ポップな明るさの中に、わずかな緊張感がある。ビートは弾むように進み、メロディは覚えやすい。レイチェル・プラッテンの声は、過剰にドラマティックではなく、まっすぐなメッセージを自然に届ける。そのため、「Broken Glass」は大きな応援歌でありながら、重苦しさよりも前進する軽やかさが印象に残る。

この曲は、『Waves』の中で前作からの継続性を最も強く感じさせる楽曲である。自己肯定、再起、傷を力に変えるというテーマは、彼女のパブリック・イメージと結びついている。ただし、サウンド面ではより現代的で、前作との差別化も図られている。

6. Shivers

「Shivers」は、身体的な反応としての恋愛感情を描いた楽曲である。タイトルの「shivers」は、寒気、震え、ぞくぞくする感覚を意味する。ここでは恐怖というより、相手に触れたときや近づいたときに生まれる強い感覚、恋愛や欲望が身体に直接作用する瞬間がテーマになっている。

音楽的には、やや官能的なエレクトロポップの方向性を持つ。ビートは抑制されながらも身体的で、シンセの音色は曲全体に滑らかな質感を与える。『Waves』の中では、レイチェル・プラッテンがより大人のポップ表現に接近した曲と言える。前作の明るく健全なイメージから一歩踏み出し、恋愛の身体性を表現している点が特徴である。

歌詞では、相手の存在が理屈を超えて自分に影響を与える様子が描かれる。恋愛は言葉や約束だけで成り立つものではなく、身体の反応や空気の変化としても現れる。「Shivers」はその感覚を、過度に露骨ではなく、ポップな表現の範囲で描いている。レイチェル・プラッテンの声の清潔感があるため、曲は官能的でありながらも上品に保たれている。

ヴォーカルの処理も重要である。声は前面に出ながら、周囲のエレクトロニックな音と溶け合い、感情が波のように広がる印象を作る。タイトル通り、細かな震えや揺らぎを音響的にも表現しようとしている。

「Shivers」は、『Waves』のテーマである感情の波を、身体感覚の面から示す曲である。自己肯定や励ましだけではなく、恋愛の緊張、欲望、触覚的な感覚を取り込むことで、レイチェル・プラッテンの表現の幅を広げている。

7. Loose Ends

「Loose Ends」は、未解決の問題、整理しきれない関係、心の中に残る曖昧さをテーマにした楽曲である。タイトルの「loose ends」は、物事の未処理の部分、結び目がほどけたままの状態を意味する。恋愛や人生において、すべてがきれいに完結するわけではなく、曖昧なまま残る感情があるという視点が描かれている。

この曲は、アルバムの中でも比較的内省的な性格を持つ。サウンドはポップでありながら、メロディには切なさがあり、ビートも過度に派手ではない。シンセやリズムの処理は現代的だが、曲の核にはシンガーソングライター的な感情表現がある。レイチェル・プラッテンの強みである、分かりやすいメロディと感情の直接性がよく出ている。

歌詞では、終わったはずの関係や、整理したはずの感情がまだ残っている状態が描かれる。人間関係は、明確な結末を迎えるとは限らない。別れた後も思い出や後悔、言えなかった言葉が残り、それが日常の中でふと浮かび上がる。「Loose Ends」は、そうした感情の残響を扱っている。

レイチェル・プラッテンの歌唱は、ここでは大きく叫ぶよりも、言葉のニュアンスを丁寧に伝える方向に向かう。彼女の声には明るさがあるため、曲全体は沈み込みすぎないが、その分、日常的な切なさが自然に伝わる。これは日本のリスナーにも受け入れやすい感情表現である。

「Loose Ends」は、『Waves』の中で、感情の不完全さを象徴する楽曲である。完璧な自己肯定や明快な恋愛の勝利ではなく、整理しきれないものを抱えたまま生きる感覚が描かれている点で、本作の成熟した側面を担っている。

8. Labels

「Labels」は、人に貼られるラベル、すなわち肩書き、偏見、分類、他者からの決めつけをテーマにした楽曲である。レイチェル・プラッテンにとって、このテーマはキャリア上の文脈とも結びつく。「Fight Song」の成功によって、彼女は励ましのアンセムを歌うシンガーという明確なイメージを得た一方、そのイメージに縛られる可能性もあった。「Labels」は、そうした分類から自由になろうとする意識を反映している。

歌詞では、人は一つの言葉やイメージでは説明できない存在であることが示される。強い、弱い、成功者、敗者、恋人、元恋人、ポップ・シンガー、応援歌の人。そうしたラベルは便利である一方、人間の複雑さを削ぎ落としてしまう。レイチェル・プラッテンは、この曲で他者の期待や分類に対する違和感を表明している。

音楽的には、現代的なポップの構造を持ちながら、歌詞のメッセージを中心に据えた作りである。ビートは軽快で、シンセの音色も明るいが、内容には自己定義への強い意志がある。サビでは、ラベルに縛られないという主張がキャッチーなメロディに乗せられ、聴き手に分かりやすく届く。

この曲は、2010年代のポップにおけるアイデンティティのテーマともつながる。SNSやメディアによって人が瞬時に分類され、評価される時代において、自分が何者であるかを他人に決めさせないというメッセージは、多くのポップ・アーティストに共有されていた。レイチェル・プラッテンは、そのテーマを過度に難解にせず、親しみやすいポップ・ソングとして提示している。

「Labels」は、『Waves』における自己認識の曲である。恋愛や感情の波を描くアルバムの中で、この曲はより社会的・キャリア的な視点を加えている。レイチェル・プラッテンが自分自身のイメージを更新しようとする姿勢がよく表れた一曲である。

9. Loveback

「Loveback」は、失われた愛を取り戻そうとする感情をテーマにした楽曲である。タイトルは「love」と「back」を組み合わせた言葉であり、愛を返してほしい、関係を元に戻したい、あるいは自分の中に愛を取り戻したいという複数の意味を含んでいる。『Waves』の中でも、恋愛の喪失感と再生の願いが交差する曲である。

音楽的には、メロディアスなポップ・ソングで、感情の起伏が分かりやすく構成されている。ビートは現代的だが、楽曲の中心には歌がある。レイチェル・プラッテンの声は、ここでやや切実さを帯び、サビでは感情が大きく広がる。彼女の歌唱は過度に技巧的ではないが、その分、言葉の素直さが前面に出る。

歌詞では、関係が壊れた後の後悔や、もう一度愛を取り戻したいという願いが描かれる。ただし、この曲は単純な復縁の歌に限定されない。愛を失った後、自分自身の中にあった温かさや信じる力を回復したいという意味にも読める。『Waves』全体が感情の揺れをテーマにしていることを考えると、「Loveback」は、失ったものをどう受け止め、どう再び心を開くかを扱っていると言える。

プロダクションは過度に重くならず、ポップとしての明快さを保っている。失恋の曲でありながら、完全な悲しみに沈むのではなく、どこかに前へ進もうとする力が残されている。これはレイチェル・プラッテンの音楽に一貫する特徴である。困難や喪失を扱っても、最終的には聴き手に希望を残す。

「Loveback」は、本作の中で感情的な中心のひとつを担う曲である。自己肯定や強さだけではなく、失った愛を求める弱さも描くことで、アルバム全体に人間的な奥行きを与えている。

10. Hands

「Hands」は、つながり、支え、触れること、助け合いをテーマにした楽曲である。タイトルの「hands」は、身体的な手であると同時に、誰かを支える行為、救いを差し伸べる行為、共同体的な連帯を象徴している。レイチェル・プラッテンの音楽において、こうした人と人とのつながりは重要なテーマであり、「Hands」はその流れにある曲である。

音楽的には、温かさのあるポップ・ソングである。エレクトロニックな要素を含みながらも、冷たい印象にはならず、コーラスやメロディが人間的な広がりを作る。サウンドは大きく開けており、ライブで観客と共有することを意識したような構成を持つ。彼女の声の明るさと相性がよく、アルバム終盤に温かい空気をもたらす。

歌詞では、孤独や不安の中で誰かの手を求める感情、あるいは自分が誰かに手を差し伸べる姿勢が描かれる。これは、前作から続くレイチェル・プラッテンの応援歌的な側面に近い。ただし、「Fight Song」が個人の内側から湧き上がる力を歌っていたのに対し、「Hands」はより関係性や支え合いに焦点を当てている。

この曲の魅力は、メッセージの普遍性にある。恋愛、友情、家族、社会的な連帯など、さまざまな文脈で解釈できる。ポップ・ミュージックは個人的な感情を扱いながら、多くの人が自分の状況に重ねられる余白を持つことが重要である。「Hands」はその意味で、アルバムの中でも広い共感性を持つ曲である。

「Hands」は、『Waves』の終盤において、感情の波を一人で乗り越えるのではなく、他者とのつながりの中で受け止めるという視点を提示する。自己肯定と連帯が結びつくことで、レイチェル・プラッテンらしいポジティブなメッセージが再び浮かび上がる。

11. Fooling You

「Fooling You」は、自分自身や相手を欺くこと、関係の中で本音を隠すことをテーマにした楽曲である。タイトルは「あなたをだましている」という意味を持つが、歌詞の解釈としては、相手を欺くと同時に、自分自身をも欺いている状態が含まれている。恋愛において、本当は気持ちが変化しているのに、それを認められない状況が描かれている。

音楽的には、やや抑制されたポップ・バラード寄りの質感を持つ。派手なダンス・ポップではなく、感情の陰影を伝えるメロディが中心である。プロダクションは現代的だが、曲の核にはピアノやヴォーカルを中心としたシンガーソングライター的な感覚がある。レイチェル・プラッテンの声は、ここでより繊細に響く。

歌詞のテーマは、自己認識の難しさである。人はしばしば、相手を傷つけないため、関係を壊さないため、あるいは自分の不安を直視しないために、真実を曖昧にする。しかし、その曖昧さはやがて関係に歪みを生む。「Fooling You」は、その心理を過度にドラマ化せず、比較的静かなトーンで描いている。

この曲は、『Waves』の中で感情的な誠実さを問う役割を持つ。アルバム全体では、愛に飛び込むこと、傷を越えること、自分を守ることが歌われてきたが、この曲では、自分の本音を認めることの難しさが焦点となる。レイチェル・プラッテンの表現は、強さだけでなく、迷いや後ろめたさも含むことで、より成熟したものになっている。

「Fooling You」は、派手なシングル向きの曲ではないかもしれないが、アルバムの感情的なバランスを整える重要な楽曲である。ポップな表面の下にある不安や自己欺瞞を描くことで、『Waves』のタイトルにふさわしい揺らぎを加えている。

12. Good Life

「Good Life」は、アルバムの締めくくりとして、人生を肯定する視点を提示する楽曲である。タイトルは「良い人生」を意味するが、ここでの「good」は、完璧で問題のない人生という意味ではない。むしろ、困難や迷い、傷、揺れを含んだうえで、それでも人生を肯定するという態度が重要である。

音楽的には、明るく開放的なポップ・ソングであり、アルバムの終盤にふさわしい広がりを持つ。メロディは親しみやすく、サビでは前向きな感情が大きく広がる。エレクトロニックな要素を含みながらも、曲全体は温かく、レイチェル・プラッテンの声が持つポジティブな質感を活かしている。

歌詞では、人生の中にある喜び、小さな幸せ、感謝の感覚が描かれる。『Waves』では、他人の期待からの解放、恋愛の衝突、傷、未解決の感情、失った愛、自己欺瞞など、さまざまな揺らぎが扱われてきた。その最後に「Good Life」が置かれることで、アルバムは単純な楽観主義ではなく、揺れを経験した後の肯定へと着地する。

この曲の重要性は、レイチェル・プラッテンのアーティスト像を再確認させる点にある。彼女は暗さや複雑さを取り入れても、最終的には聴き手に希望を残すタイプのポップ・アーティストである。「Good Life」は、その姿勢を自然に示している。大きなドラマを作るというより、日々の中で前を向く感覚をポップに表現している。

「Good Life」は、『Waves』というアルバムのテーマをまとめる楽曲である。人生や感情は波のように変化するが、その波に飲み込まれるだけではなく、そこに意味を見出していく。レイチェル・プラッテンの音楽が持つ親しみやすさと前向きさが、最後に素直な形で表れている。

総評

『Waves』は、レイチェル・プラッテンが「Fight Song」の成功後に、自身のポップ・アーティストとしての幅を広げようとしたアルバムである。前作『Wildfire』が、自己肯定のアンセムを中心にした明快なポップ作品だったのに対し、本作では恋愛、欲望、傷、自己欺瞞、他者からのラベル、人生の肯定といったテーマがより多面的に扱われている。

音楽的には、2010年代後半のメインストリーム・ポップの影響が明確である。エレクトロポップ、ダンス・ポップ、シンセ・ポップ、EDM以降のビート処理が導入され、サウンドは前作よりも洗練されている。特に「Perfect for You」「Broken Glass」「Keep Up」などでは、キャッチーなメロディと現代的なプロダクションが組み合わされ、レイチェル・プラッテンの声をより都会的な文脈に置いている。

一方で、本作の核にあるのは、やはり彼女のシンガーソングライター的な分かりやすさである。レイチェル・プラッテンの歌詞は抽象的な詩というより、日常的な感情を直接的に伝えるタイプである。そのため、楽曲のメッセージは明快で、日本のリスナーにも理解しやすい。英語詞を細かく追わなくても、サビの高揚感や声の明るさから、感情の方向性が伝わる作りになっている。

本作の評価において重要なのは、『Waves』が「Fight Song」の再現を目指しただけの作品ではないという点である。もちろん、「Broken Glass」や「Hands」のように、前向きなメッセージを持つ曲はある。しかし、アルバム全体では、より恋愛的で、身体的で、迷いを含んだ表現が多い。これは、レイチェル・プラッテンが自分の成功イメージを更新しようとした結果であり、アーティストとしての成熟を示している。

ただし、アルバムとしては、強烈な個性や実験性よりも、親しみやすいポップとしての完成度を重視している。サウンドは時代のトレンドに沿っており、突出して革新的というより、2010年代後半のチャート・ポップの中で彼女の個性をどう生かすかに焦点がある。そのため、前衛的なポップやオルタナティブな表現を求めるリスナーにはやや穏当に聴こえる可能性がある。一方で、明快なメロディ、ポジティブなメッセージ、感情の分かりやすさを重視するリスナーには、非常に聴きやすい作品である。

『Waves』というタイトルは、本作の内容を的確に表している。強さと弱さ、前進と迷い、愛と喪失、自立とつながりが、波のように交互に現れる。レイチェル・プラッテンは、その揺れを劇的な物語としてではなく、日常的な感情の変化として描いている。そこに本作の特徴がある。

総じて『Waves』は、レイチェル・プラッテンのメジャー・ポップ・アーティストとしての第2段階を示すアルバムである。大ヒット曲の影にとどまらず、より多面的な女性ポップ作品へと進もうとした意欲作であり、2010年代後半のエレクトロポップ/ダンス・ポップの文脈の中で、彼女の誠実で親しみやすい歌声を活かした作品として評価できる。

おすすめアルバム

1. Rachel Platten – Wildfire(2016)

「Fight Song」を収録したレイチェル・プラッテンの代表作。自己肯定、再起、希望をテーマにした楽曲が中心で、『Waves』よりもシンガーソングライター的な明快さが強い。『Waves』で彼女を知ったリスナーが、前作の方向性を確認するうえで最適な作品である。

2. Sara Bareilles – The Blessed Unrest(2013)

ピアノを基調としたシンガーソングライター性と、現代的なポップ感覚を両立した作品。言葉の明快さ、メロディの親しみやすさ、自己肯定のテーマという点で、レイチェル・プラッテンと共通する部分がある。よりアコースティックで作家性の強い女性ポップを聴きたい場合に関連性が高い。

3. Kelly Clarkson – Stronger(2011)

力強いヴォーカルと自己肯定的なメッセージを軸にしたポップ・ロック/ダンス・ポップ作品。タイトル曲「Stronger (What Doesn’t Kill You)」に代表されるように、逆境を力に変えるテーマが明確で、「Broken Glass」や「Perfect for You」と近い精神性を持つ。

4. Ellie Goulding – Delirium(2015)

エレクトロポップとダンス・ポップを大きく取り入れた作品で、2010年代中盤の欧米ポップのサウンドを理解するうえで重要なアルバム。シンセの質感、ビートの軽さ、感情的なメロディの扱いにおいて、『Waves』と比較しやすい。より幻想的でエレクトロニックな女性ポップを聴きたいリスナーに適している。

5. Sia – This Is Acting(2016)

大きなサビ、強い感情表現、ポップ・アンセムとしての完成度が際立つ作品。シーアは作曲家としても多くのポップ・スターに楽曲を提供しており、2010年代のメインストリーム・ポップの構造を知るうえで重要である。『Waves』の持つ大きなメロディや自己肯定的な感情表現と親和性が高い。

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