
発売日: 1987年1月19日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、メロディック・パンク、ポスト・ハードコア
終わりゆく創造の炎——“倉庫”に詰め込まれた最後の物語たち
Warehouse: Songs and Storiesは、Hüsker Düが残した最後のスタジオ・アルバムであり、バンドの創造的頂点と崩壊の境界線に位置する集大成的な作品である。
全20曲・約70分に及ぶこの二枚組には、Bob MouldとGrant Hartの二人が書いた“個々の物語”が詰め込まれており、タイトルにある“倉庫”のように、それぞれの視点と世界観が詰まっている。
本作では、ハードコアの残響が遠ざかる一方、メロディとアレンジの多様性が一気に開花。
ギター・サウンドは明るく洗練され、ポップ性が高まりながらも、根底にある怒りや喪失の感覚はより深く内面化されている。
おすすめアルバム
- Candy Apple Grey / Hüsker Dü
崩壊の予兆と共に美しく沈むメジャー初作。 - New Day Rising / Hüsker Dü
怒りと再生の叫び。メロディック・パンクの金字塔。 - Workbook / Bob Mould
バンド解散後のソロ作品。静謐と痛みが交錯する内省の名作。 - Rites of Spring / Rites of Spring
エモの原型を形作った激情と叙情の爆発。 - Pinkerton / Weezer
ポップと自己破壊の間に生まれた、90年代的感情の継承作。
アルバムレビュー:Rubycon by Tangerine Dream
発売日: 1975年3月21日
ジャンル: エレクトロニック、アンビエント、ベルリン・スクール
深淵に響くシンセの波——意識の彼方へと誘う電子音の瞑想
Rubyconは、Tangerine Dreamがベルリン・スクールの最深部へと踏み込んだ作品であり、シンセサイザー音楽の黙示録のような一枚である。
1975年という時代にあって、その音響構築の緻密さと空間の広がりは、今なお“未来”を感じさせる。
本作は2つの長大なパートで構成され、ミニマルなリズムと有機的な音のうねりがゆるやかに移り変わる。
メロディの明確な起伏はないが、そのぶん“時間感覚”や“空間認識”そのものを揺さぶるような体験が待っている。
まさに“聴く禅”とも言える、電子音楽の金字塔。
おすすめアルバム
- Phaedra / Tangerine Dream
ベルリン・スクールの始まりを告げた神秘的な電子の旅。 -
Zeit / Tangerine Dream
時間と空間をテーマにしたドローンの極北。 -
Music for Airports / Brian Eno
アンビエントというジャンルの礎を築いた、静けさの革命。 -
Oxygène / Jean-Michel Jarre
ポップと実験性が融合したフレンチ・エレクトロの傑作。 -
A Rainbow in Curved Air / Terry Riley
ミニマル・ミュージックの魔術的トリップ。
アルバムレビュー:Phaedra by Tangerine Dream
発売日: 1974年2月20日
ジャンル: エレクトロニック、アンビエント、ベルリン・スクール
夢の向こうで鳴る音——“電子音楽”が魂の風景となった瞬間
Phaedraは、Tangerine Dreamがヴァージン・レコードからリリースした初のアルバムにして、ベルリン・スクールの代名詞とも言える作品である。
モーグ・シンセサイザーとシーケンサーの革新的な使用によって、音楽は初めて“彫刻された空間”として機能しはじめた。
タイトル曲「Phaedra」は、20分以上にわたり変化し続ける電子のうねりと残響が、聴く者の意識を深い無意識へと沈めていく。
それはストーリーでも感情でもなく、“存在そのものの運動”を捉えようとする試みであった。
おすすめアルバム
-
Rubycon / Tangerine Dream
Phaedraの発展形として、より内省的で洗練された音の迷宮。 -
Atem / Tangerine Dream
プリ・ヴァージン期の粗削りだが神秘的な宇宙音楽。 -
Discreet Music / Brian Eno
“背景としての音楽”という発想を世界に広めたアンビエントの源流。 -
Departure from the Northern Wasteland / Michael Hoenig
美しい旋律とシーケンスが融合するベルリン・スクールの隠れた名作。 -
Mirage / Klaus Schulze
幻想と瞑想が交差するシンセ・ドローンの大傑作。
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