
発売日:1987年9月
ジャンル:ブルースロック、クラシック・ロック、ポップロック、ハードロック
- 概要
- 全曲レビュー
- 1. I Feel Free
- 2. Sunshine of Your Love
- 3. White Room
- 4. Crossroads
- 5. Badge
- 6. Presence of the Lord
- 7. After Midnight
- 8. Let It Rain
- 9. Bell Bottom Blues
- 10. Layla
- 11. I Shot the Sheriff
- 12. Knockin’ on Heaven’s Door
- 13. Wonderful Tonight
- 14. Cocaine
- 15. Lay Down Sally
- 16. Promises
- 17. Swing Low Sweet Chariot
- 18. Let It Grow
- 総評
- おすすめアルバム
概要
『The Cream of Clapton』は、エリック・クラプトンのキャリアを横断的にまとめたベスト・アルバムである。ソロ時代の代表曲に加え、クリーム、デレク・アンド・ザ・ドミノスなど、クラプトンが在籍した重要バンドの楽曲も収録されており、彼の音楽的変遷を把握する上で非常に有用な作品となっている。
クラプトンは1960年代の英国ブルース・ロックを牽引したギタリストであり、ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、クリームを経て、ロック・ギターの表現力を大きく拡張した存在である。その一方で、1970年代以降はソロ・アーティストとして、ブルース、レゲエ、ポップ、AOR的なサウンドを取り入れ、より幅広いリスナーへと接近していった。
本作の特徴は、クラプトンの「ギター・ヒーロー」としての側面だけでなく、ソングライター、ボーカリスト、解釈者としての側面も見せている点にある。「Sunshine of Your Love」や「White Room」ではクリーム時代の攻撃的なサイケデリック・ブルースロックが示され、「Layla」では激情的なロック表現が展開される。一方で、「I Shot the Sheriff」や「Wonderful Tonight」では、より抑制された歌心とポップな親しみやすさが前面に出る。
したがって『The Cream of Clapton』は、単なるヒット曲集ではなく、1960年代から1980年代にかけてクラプトンがいかにロックとブルースの間を行き来し、その表現を変化させてきたかを示す編集盤である。
全曲レビュー
1. I Feel Free
クリーム初期の代表曲。サイケデリックなコーラスと軽快なビートが特徴で、ブルースを基盤にしながらもポップな実験性を持つ。クラプトンのギターはまだ抑制的だが、バンド全体の緊張感が強い。
2. Sunshine of Your Love
クリームを象徴するリフ主体の名曲。重いギターリフ、ジャック・ブルースのボーカル、ジンジャー・ベイカーの独特なドラムが一体となり、ハードロックの原型を示している。
3. White Room
ドラマティックな構成とワウを用いたギターが印象的な楽曲。サイケデリック・ロックとブルースの融合が高い完成度で示され、クラプトンのギタートーンも非常に象徴的である。
4. Crossroads
ロバート・ジョンソンのブルースをクリームが高速ブルースロックとして再解釈した名演。クラプトンの即興演奏が際立ち、彼のブルースへの深い理解とロック的な推進力が同時に表れている。
5. Badge
ジョージ・ハリスンとの共作曲。クリーム後期の楽曲で、ブルースロックの重さよりもメロディアスなポップ感覚が強い。クラプトンのソロ・キャリアへつながる橋渡し的な一曲である。
6. Presence of the Lord
ブラインド・フェイス時代の楽曲。信仰や救済を思わせる歌詞と、静から動へ移る構成が特徴。クラプトンの内省的なソングライティングが早くも表れている。
7. After Midnight
J.J.ケイル作の楽曲をクラプトンが軽快なロックとしてカバー。ブルースやカントリーの要素を含み、ソロ・クラプトンのリラックスしたスタイルを象徴する。
8. Let It Rain
ゴスペル的な広がりとロックのダイナミズムが融合した楽曲。コーラスとギターが重なり、ソロ初期のクラプトンがバンド全体の響きを重視していたことが分かる。
9. Bell Bottom Blues
デレク・アンド・ザ・ドミノス期の名バラード。失恋と執着をテーマにした歌詞が重く、クラプトンのボーカルも非常に感情的である。ギターよりも歌の説得力が中心となる楽曲。
10. Layla
クラプトンのキャリアを代表する楽曲。激情的なギターリフと、後半のピアノ・コーダによる二部構成が特徴で、ロックにおける恋愛表現の極点の一つといえる。
11. I Shot the Sheriff
ボブ・マーリーの楽曲をカバーし、クラプトンに大きな商業的成功をもたらした一曲。レゲエのリズムを取り入れながらも、ロックリスナーに届く形へ再構成している。
12. Knockin’ on Heaven’s Door
ボブ・ディランの楽曲を穏やかなレゲエ調に解釈したカバー。死や終末をテーマにした原曲の重さを、柔らかなグルーヴによって独自に表現している。
13. Wonderful Tonight
クラプトンの代表的バラード。極めてシンプルなメロディとギター・フレーズによって、日常的な愛情を静かに描く。技巧よりも余白の美しさが重要な楽曲である。
14. Cocaine
J.J.ケイル作の楽曲。乾いたリフと淡々としたボーカルが特徴で、過剰なドラマ性を避けたロック表現が際立つ。クラプトンの1970年代後半のスタイルを象徴する一曲である。
15. Lay Down Sally
カントリー・ロック色の強い楽曲。軽快なリズムと親しみやすいメロディが特徴で、クラプトンのアメリカ南部音楽への接近が表れている。
16. Promises
ポップ寄りの軽やかな楽曲。恋愛におけるすれ違いや期待を描きながら、サウンドは柔らかく、AOR的な洗練も感じられる。
17. Swing Low Sweet Chariot
トラディショナルな霊歌をレゲエ的に再解釈した楽曲。ブルースやゴスペルのルーツに対するクラプトンの関心が表れている。
18. Let It Grow
アコースティックな質感と叙情的なメロディが印象的な楽曲。内省的な歌詞と穏やかなアレンジにより、クラプトンのシンガーソングライター的側面がよく示されている。
総評
『The Cream of Clapton』は、エリック・クラプトンの多面的なキャリアを効率よく俯瞰できるベスト盤である。クリーム時代の攻撃的なブルースロック、デレク・アンド・ザ・ドミノス期の激情的な表現、そしてソロ期のレゲエ、ポップ、カントリーへの接近が一枚の中に収められている。
本作の重要性は、クラプトンを単なるギター名人としてではなく、時代ごとに自らの表現を変化させてきた音楽家として捉え直せる点にある。初期の派手なギター・プレイは確かに強烈だが、後年の代表曲では、抑制されたフレーズや歌を支える演奏がより重要になっている。
また、ブルースを出発点としながら、レゲエやポップへ自然に接続していく流れは、クラプトンの音楽的柔軟性を示している。結果として本作は、彼の代表曲をまとめた入門編であると同時に、ロック史におけるブルースの変容を理解するための資料的価値も持つ作品である。
おすすめアルバム
- Eric Clapton – Slowhand (1977)
「Wonderful Tonight」「Cocaine」「Lay Down Sally」を収録したソロ代表作。
2. Cream – Disraeli Gears (1967)
サイケデリック・ブルースロック期のクリームを代表する作品。
3. Derek and the Dominos – Layla and Other Assorted Love Songs (1970)
クラプトンの情念とブルースロックが最も濃く表れた名盤。
4. Eric Clapton – 461 Ocean Boulevard (1974)
レゲエや南部音楽を取り入れ、ソロ期の方向性を決定づけた作品。
5. Eric Clapton – From the Cradle (1994)
ブルースへの原点回帰を示した重要作。



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