Sun Hits the Sky by Supergrass(1997)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Sun Hits the Sky」は、Supergrassが1997年にリリースしたセカンド・アルバム『In It for the Money』に収録された楽曲で、彼らの代表曲のひとつとして広く知られている。アルバム全体の中でも特にエネルギッシュで開放感のあるナンバーであり、そのサイケデリックかつファンキーなアレンジと、晴れやかで自由な世界観が魅力である。

歌詞においては、「太陽が空を打つ瞬間(Sun hits the sky)」というイメージが象徴的に使われており、目覚め、解放、再生、自由といったポジティブなモチーフが繰り返される。主人公は「自分を縛るものを打ち破りたい」という衝動に駆られながら、混乱の中から抜け出し、光の方へ向かおうとする。

その語り口は抽象的かつ断片的で、明確なストーリーラインは存在しないが、それが逆に“感情の動き”を直接的に描いているとも言える。Supergrass特有のスピード感とテンションの高い演奏が、歌詞に込められた“爆発寸前のエネルギー”を見事に補完している。

2. 歌詞のバックグラウンド

1997年当時、Supergrassはブリットポップ・ムーブメントの中で一際異彩を放つ存在であった。デビューアルバム『I Should Coco』では、“無邪気な若者像”と“高速ロック”で一躍注目を集めたが、セカンド・アルバム『In It for the Money』では音楽性の幅を一気に広げ、より洗練された構成とメッセージ性を打ち出している。

「Sun Hits the Sky」は、そのアルバムの中でも特に“バンドの進化”が顕著に現れた楽曲のひとつであり、サイケデリックなギターリフやエフェクトの多用、グルーヴ感のあるリズムなど、60年代後半から70年代初頭の英国ロック(特にThe WhoやT. Rex)へのオマージュが感じられる。

ガズ・クームス(Gaz Coombes)のヴォーカルもよりダイナミックになり、声を振り絞るようなシャウトから繊細な囁きまで、自在に使い分けられている。これは単なる“楽しいロックバンド”ではなく、確かなビジョンと表現力を持ったアーティストとしてのSupergrassを印象づけるきっかけとなった。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元:Genius Lyrics – Sun Hits the Sky

I’m going out, my head is on fire
外に出るんだ 頭の中が燃えてる

I’m going out, alone, I can’t take no more
一人で出ていくよ もう限界なんだ

I’m gonna show you everything I know
知ってることを全部見せてやるよ

I’m gonna blow it all wide open
すべてをぶち壊してやるさ

When the sun hits the sky
太陽が空を打つそのときに

このように、歌詞全体には“爆発寸前の衝動”と“新しい世界への跳躍”が息づいている。

4. 歌詞の考察

「Sun Hits the Sky」の歌詞は、単なる“朝の目覚め”や“日常からの逸脱”を描いているのではなく、もっと根源的な「再起動」や「自己解放」を表現している。とりわけ「I’m gonna blow it all wide open(全部ぶち壊してやる)」というフレーズは、閉塞した世界や心の殻を破って、自分自身を新たなフェーズへと押し出そうとする強烈な意志の表れである。

一方で、主人公はひとりきりで動き出しており、その行動にはどこか孤独な影も感じさせる。すべてを吹き飛ばした先に何があるかは分からないが、とにかく今この瞬間の爆発が必要だ──そんな衝動的で刹那的な感情がこの曲には込められている。

「Sun hits the sky」というフレーズも、ただの日の出の描写ではなく、ある種の転換点や臨界点を象徴する言葉として機能している。暗闇の終わり、怒りと混沌の出口、新しい意識のスタートライン。Supergrassはその一瞬の“光の衝突”を音楽の中に焼き付けているのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Can’t Stop by Red Hot Chili Peppers
    自由なグルーヴと、爆発するようなエネルギーを兼ね備えたロックナンバー。

  • The Seeker by The Who
    精神的探求とロックンロールの衝動を融合させた60年代後半の名曲。

  • Electric Feel by MGMT
    サイケデリックでメロディアス、そして自由なスピリットが共通する。

  • Rocks by Primal Scream
    鉱石のようなグルーヴと荒々しいロックが融合したアッパーな名曲。

  • Time to Pretend by MGMT
    青春の幻想と現実の狭間を描いた“飛び出し系アンセム”。

6. “解放の一瞬”を音にしたロック・アンセム

「Sun Hits the Sky」は、Supergrassの表現がより成熟し、よりスピリチュアルな方向へと広がっていったことを示す重要な一曲である。それは、ただ“楽しい”ロックではなく、“何かを超えようとする意思”を伴ったロックであり、聴く者の精神をも一瞬で開放してしまうような爆発力を秘めている。

この曲が特別なのは、その爆発が“怒り”ではなく“可能性”から来ているという点だ。自己否定からの脱却、現状打破への渇望、そして太陽のような光へ向かって跳ね上がるような解放感。それらがすべて、この3分間のロックンロールに凝縮されている。

「Sun Hits the Sky」は、日常の閉塞感を吹き飛ばしたいとき、何かを変えたいとき、そしてもう一度“走り出したい”ときにこそ響く、永遠のリスタート・ソングだ。Supergrassはここで、ロックという手段で“太陽の衝突”を描き、それを聴く者の内側に再現することに成功している。

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