
発売日:2010年6月29日
ジャンル:Electropop / Dance-Pop / Electronic Rock
概要
Streets of Goldは、コロラド州ボルダー出身のSean ForemanとNathaniel Motteによるデュオ、3OH!3が2010年に発表した3作目のスタジオ・アルバムである。前作『Want』から「Don’t Trust Me」「Starstrukk」がヒットしたことで広く知られるようになった二人が、そのエレクトロニックなパーティー・サウンドをメジャー市場向けにさらに大きくした作品だ。鋭いシンセ、強く加工されたドラム、Auto-Tuneを含むボーカル処理、ロックやヒップホップ由来の掛け声を一つの派手な音像へ詰め込んでいる。
制作にはMotte自身に加え、Matt Squire、Benny Blanco、Dr. Lukeらが参加した。2000年代末から2010年代初頭に急速に広がったEDM以前のエレクトロポップと、ポップ・パンク/Warped Tour周辺の文化が接触した時期をよく映したサウンドである。前作の粗く攻撃的な電子音を残しながら、サビはより大きく、メロディも明確になり、Keshaを迎えた「My First Kiss」のようにラジオ向けポップへ踏み込んだ曲も目立つ。
歌詞ではパーティー、酒、性的な駆け引き、自信過剰な人物像が繰り返し登場する。その多くはForemanとMotteが誇張されたキャラクターを演じるような書き方で、真面目な告白として読むより、悪趣味なジョークや挑発を含むパーティー音楽として理解しやすい。一方、後半には恋愛や別れを比較的素直に扱う曲もあり、騒々しいシングルだけでは見えにくかったメロディメーカーとしての側面も確認できる。
全曲レビュー
1. 「Beaumont」
短いイントロで、アルバム本編へ入る前のアナウンスのような役割を担う。加工された声と電子音によって現実のライブ会場というより、人工的に作られたパーティー空間へ聴き手を誘導する構成だ。独立した楽曲として展開するより、次の「I Can Do Anything」へ勢いを渡すことに徹しており、本作の過剰なテンションを予告する。
2. 「I Can Do Anything」
タイトル通り根拠のない万能感をそのまま曲にしたような一曲で、太い電子ビートと鋭いシンセが前へ押し出される。ForemanとMotteは歌唱とラップの中間にあるような声で言葉を叩きつけ、サビではメロディを単純化して集団で叫べる形にする。細かなニュアンスより勢いを優先したアレンジが、アルバム冒頭の性格を決定づけている。
3. 「My First Kiss」
Keshaをフィーチャーした代表曲で、キスを表す効果音までフックとして利用した極端に直接的なポップソング。ヴァースでは男女の声を交互に配置し、サビへ入るとシンセとドラムを一気に厚くすることで、恋愛というより遊びと誘惑の高揚を作る。Keshaのキャラクターと3OH!3の悪ふざけが自然に噛み合い、当時のエレクトロポップの享楽性を凝縮した曲になった。
4. 「Déjà Vu」
反復するシンセと強い四つ打ちを使い、同じ夜を何度も経験しているような感覚を音にする。パーティーや人間関係が繰り返される状況を「デジャヴ」として捉え、楽しさの中にわずかな倦怠感を混ぜているのがポイントだ。サビは明快だが、背景では電子音が細かく出入りし、単純なコード進行でも音色の変化によって飽きさせないように作られている。
5. 「We Are Young」
大きなシンセとコーラスを使い、若さを集団的な高揚へ変えるアンセム型の曲。ここでの「若さ」は繊細な青春の回想ではなく、今この瞬間に無茶をするための免許のように扱われる。ヴァースを比較的抑え、サビで声と電子音を広げる単純な構造が効果的で、クラブとロック・フェスのどちらでも機能する3OH!3の立ち位置がよく分かる。
6. 「Touchin on My」
性的な言葉を意図的に途中で切り、その空白自体をジョークとリズムに利用する。ビートが歌詞の欠落部分を埋めるため、編集上の仕掛けがそのまま曲のフックになっているのが面白い。サウンドは軽快なエレクトロポップだが、言葉の配置はヒップホップ的で、意味より語感やタイミングを優先する3OH!3の作詞法が特に分かりやすく表れている。
7. 「House Party」
自宅でのパーティーを題材にした、デュオのイメージをほとんど説明不要な形で音にした曲。低音の強いビートと掛け声を反復し、複雑な展開を作るより参加しやすさを優先している。歌詞も騒ぎを拡大していくこと自体が目的で、人物の心理を掘り下げるような要素はほとんどない。その徹底した単純さが、中盤のパーティー・アルバムとしての勢いを支える。
8. 「R.I.P.」
題名から想像される重さに反して、サウンドは引き続き電子的で大きい。ただし前半の無敵感からは少し距離が生まれ、人間関係の終わりを「死」にたとえることで、失われたものへの苛立ちや未練を表す。ボーカルの加工もここでは単なる派手さだけでなく、感情を現実から一歩遠ざける効果を持ち、アルバム後半へ向けた変化を作っている。
9. 「I Know How to Say」
電子音を基礎にしながら異国風のフレーズや言葉を遊びとして取り込み、世界を飛び回るポップスター的な人物像を誇張する。歌詞の内容は意図的に軽く、外国語や土地のイメージも深い文化描写ではなく、騒々しい言葉遊びの材料として使われている。音楽的にも場面転換の速さを優先し、落ち着く前に次のフックへ移る本作らしい作りだ。
10. 「Double Vision」
ギターを含む明るいポップの感触が強まり、アルバム中でも特にメロディの親しみやすさが際立つ。強い日差しや酩酊を思わせるタイトルの感覚を、開放的なサビと軽快なテンポへ置き換えている。前半の攻撃的なシンセ曲よりボーカルの旋律を素直に追えるため、3OH!3が刺激的な音色を外してもポップソングを成立させられることを示す。
11. 「I’m Not the One」
ここではパーティーの騒音を抑え、人間関係の不一致を比較的真っすぐに扱う。相手が求める人物にはなれないという認識を中心にした歌詞で、前半の自信過剰なキャラクターとは対照的だ。電子的なプロダクションは残るものの、ボーカルとメロディへ空間を与えることで感情を前に出している。アルバム終盤に必要な温度差を作る曲である。
12. 「Streets of Gold」
タイトル曲は、成功や高揚を思わせる「黄金の街」というイメージを、大きなシンセと広がりのあるコーラスへ変換する。パーティーの一場面を描く曲より視野が広く、若さや野心、そこから見える理想化された未来をまとめるように響く。一方で電子音にはどこか人工的な光沢があり、その理想が現実なのか幻想なのかを曖昧にしたまま進むところも本作に合っている。
13. 「See You Go」
標準盤の最後では、誰かが去っていく場面を扱いながら、完全なバラードにはせずポップな推進力を残す。前半で繰り返された出会いや誘惑とは逆に、ここでは関係の終わりが中心となり、アルバムの感情を少し落ち着かせる。電子的な装飾より歌の輪郭が目立つため、最後には3OH!3の派手なキャラクターの下にあるシンプルなポップ・ソングの作りが見える。
総評
Streets of Goldは、3OH!3が『Want』で確立したエレクトロニック・ロックを、2010年のメインストリーム・ポップへ合わせて拡大したアルバムである。音はほぼ常に大きく、シンセは鋭く、ドラムには強い加工が施され、ボーカルさえ自然な声として残すことにこだわらない。ロック・バンド的な生々しさより、スピーカーから瞬間的に飛び出してくる刺激を優先したプロダクションである。
この音作りは、当時の時代性と強く結びついている。Keshaをはじめとするエレクトロポップがチャートを席巻し、ポップ・パンクやシーン系の文化とクラブ志向の電子音が接近していた時期に、3OH!3はその境界をかなり自然に移動できた。「My First Kiss」はその典型で、ロック的な掛け声、ヒップホップ的な言葉の置き方、ダンス・ポップの巨大なサビが一曲の中でほとんど区別なく使われている。
一方、アルバムとして聴くと、その過剰さには明確な弱点もある。前半から強いビート、大きなサビ、挑発的なジョークが続くため、曲単位では強烈でも全体では刺激が均一になりやすい。歌詞の性的な冗談も意図的に幼稚なものだが、そのスタイルに乗れなければ作品のかなりの部分が単調に感じられるだろう。「Double Vision」や「I’m Not the One」のようにメロディを前へ出した曲があることで、後半にはようやく違った表情が生まれる。
それでも、本作の価値は洗練や普遍性だけでは測りにくい。インターネット、Warped Tour、エレクトロポップ、派手なボーカル加工が同じ若者文化の中で混ざり合った2000年代末から2010年代初頭の空気が、極端な形で封じ込められているからだ。Streets of Goldは3OH!3の悪趣味なユーモアを薄めて大人びるのではなく、それをメジャーなポップ・プロダクションで巨大化した作品であり、その時代特有の騒々しさまで含めて個性になっている。
おすすめアルバム
Want by 3OH!3
2008年の前作で、「Don’t Trust Me」を含む3OH!3の出世作。Streets of Goldより音が荒く、エレクトロとシーン系ロックの衝突が直接的で、そこからメジャー・ポップへ進んだ変化を比較できる。
Animal by Kesha
「My First Kiss」に参加したKeshaの2010年作。強い電子ビート、加工されたボーカル、酒やパーティーを扱う歌詞など共通点が多く、当時のメインストリーム・エレクトロポップの空気を理解しやすい。
Hello Fascination by Breathe Carolina
コロラド出身という背景も共有し、電子音とシーン系ロックを強引に接続した2009年作。3OH!3よりポスト・ハードコア寄りだが、シンセとロックの境界が崩れていた時期の感覚がよく表れている。
Sorry for Party Rocking by LMFAO
2011年作で、パーティーという題材そのものを誇張されたキャラクターと巨大なダンス・ビートへ変換している。音楽的な出自は異なるが、3OH!3の悪ふざけをクラブ側からさらに押し進めたような作品として比較できる。
Omens by 3OH!3
2013年の次作。攻撃的な電子音と下品なユーモアを維持しながら、EDMが主流になった時代のドロップや低音をさらに取り込んでいる。Streets of Goldのエレクトロポップが、その後のダンス・ミュージック環境でどう変化したかを追える。

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