Strange Overtones by Brian Eno & David Byrne(2008)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Strange Overtones」は、**Brian Enoブライアン・イーノDavid Byrne(デヴィッド・バーン)が2008年にリリースしたコラボレーション・アルバムEverything That Happens Will Happen Today』**に収録された楽曲であり、電子音楽とフォーク/ゴスペル的な要素が融合した独特なサウンドを持つ作品である。

歌詞のテーマは、時代遅れになりつつあるアーティストが、新しい時代の音楽を作ろうともがく様子を描いており、「古い楽器で新しい音を作ろうとする」ことを象徴的に表現している。楽曲全体に漂うノスタルジックな雰囲気と、テクノロジーの進化に対する皮肉が込められているが、そこには楽観的でポジティブなエネルギーも感じられる。

デヴィッド・バーンの特徴的なボーカルがリードし、リズミカルなギター、シンセサイザーの柔らかなコード進行、そして細かく配置された電子音が楽曲の雰囲気を作り出している。イーノのアンビエントなプロダクションと、バーンのユーモアと皮肉が込められた歌詞が見事に融合した楽曲となっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

ブライアン・イーノとデヴィッド・バーンは、1970年代後半から1980年代初頭にかけて、Talking Headsのアルバム『Fear of Music』(1979)や『Remain in Light』(1980)で共同制作を行い、新しいサウンドを生み出してきた。

2008年にリリースされた『Everything That Happens Will Happen Today』は、約27年ぶりとなる彼らの本格的なコラボレーション作品であり、前述のアルバムとは異なり、よりメロディアスで、フォークやゴスペルの要素が取り入れられた作品となった。イーノはこのアルバムを**「エレクトリック・ゴスペル」**と形容しており、「Strange Overtones」もそのスタイルを象徴する楽曲のひとつとなっている。

この楽曲の歌詞は、現代の音楽制作の現場をユーモラスに描写しており、デヴィッド・バーンが**「誰もがパソコンで曲を作れる時代に、古い方法で新しい音を作ろうとするアーティスト」**の視点から書いたとされる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Strange Overtones」の印象的なフレーズを抜粋し、和訳を添える。

Original Lyrics:
I wake up every morning
I hear your feet on the stairs
You’re in the next apartment
I hear you singing over there

和訳:
毎朝目を覚ますと
君の足音が階段で聞こえる
君は隣の部屋にいる
そこで歌っているのが聞こえるよ

Original Lyrics:
This groove is out of fashion
These beats are 20 years old
I saw you lend a hand to
The ones out standing in the cold

和訳:
このグルーヴはもう流行遅れ
このビートは20年前のものさ
君が助けの手を差し伸べているのを見た
寒さの中に立ち尽くしている人たちに

Original Lyrics:
Strange overtones in the music you are playing
We’re not alone, it is strong and we are listening

和訳:
君の奏でる音楽には奇妙な倍音がある
僕たちは一人じゃない、その響きは強く、僕たちは耳を傾けている

引用元:Genius

4. 歌詞の考察

「Strange Overtones」の歌詞は、時代遅れになった音楽と、それを新しい時代の中でどう活かすかという試みを描いている。

「This groove is out of fashion / These beats are 20 years old(このグルーヴはもう流行遅れ / このビートは20年前のものさ)」というラインは、過去の音楽スタイルを振り返りながらも、それが今でも力強く響くことを示唆している。デヴィッド・バーンはこの楽曲で、単なる懐古ではなく、新しい音楽を作ることへの前向きな姿勢を示している

また、「Strange overtones in the music you are playing(君の奏でる音楽には奇妙な倍音がある)」というサビのラインは、音楽の持つ独自性や、進化の過程で生まれる不完全さを肯定するメッセージとして解釈できる。音楽は常に変化し続けるが、その中で個性や予測不能な要素こそが、魅力を生み出すのだという視点が込められている。

全体的に、「Strange Overtones」はテクノロジーが進化する中で、アーティストがどのように自分の表現を更新し続けるのかを考えさせる楽曲となっている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

「Strange Overtones」の持つ洗練されたエレクトロニック・サウンドと、ノスタルジックな雰囲気を気に入ったリスナーには、以下の楽曲もおすすめできる。

  • “Everything That Happens” by Brian Eno & David Byrne
    • 同アルバム収録曲で、よりメロウで感動的な雰囲気を持つ楽曲。
  • Once in a Lifetime” by Talking Heads
    • デヴィッド・バーンの代表曲で、時間の流れや変化をテーマにした哲学的な楽曲。
  • “I Zimbra” by Talking Heads
    • アフロビートとポストパンクが融合したユニークな楽曲で、リズミカルなサウンドが特徴的。
  • “Sky Saw” by Brian Eno
    • 『Another Green World』収録の楽曲で、ミニマルなリズムと不思議なコード進行が魅力。
  • “Heaven” by Talking Heads
    • メロディアスで美しいが、皮肉と哲学が込められた楽曲。

6. 楽曲の影響と特筆すべき事項

「Strange Overtones」は、2008年にリリースされたにもかかわらず、1980年代のポストパンクやアートロックの要素を感じさせる楽曲であり、ブライアン・イーノとデヴィッド・バーンの長年にわたる音楽的探求の集大成のひとつといえる。

また、この楽曲は現代のインディーロックやエレクトロニカのアーティストにも影響を与えLCD SoundsystemHot Chipといったバンドが持つレトロフューチャーなサウンドにも通じる要素を持っている。

「Strange Overtones」は、音楽の進化と変化をユーモラスに描きながらも、過去のサウンドが持つ力強さを肯定するメッセージを持つ楽曲であり、今後も多くのリスナーに影響を与え続けるだろう。

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