アルバムレビュー：Space Cadet by Beabadoobee

アルバムレビュー

2025.04.29

発売日: 2019年10月14日（EP）
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、グランジ、ポップ・パンク、ベッドルームロック

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概要
全曲レビュー
総評
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ファンや評論家の反応
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概要

『Space Cadet』は、Beabadoobeeが2019年に発表した5作目のEPであり、彼女が初めて本格的に「ロック」へと飛び込んだ作品である。

前作『Loveworm』でのアコースティックで繊細なベッドルーム・ポップから一転し、本作では90年代のグランジ、ポップ・パンク、ローファイ・オルタナティヴ・ロックといったサウンドを軸に、より外向的で攻撃的な音像が展開されている。
タイトルの“Space Cadet（宇宙訓練生）”は、現実から少し浮遊したようなBea自身のキャラクターを象徴し、同時にティーンエイジャーの曖昧で不安定な精神状態も表している。

このEPのリリースは、BeabadoobeeがDirty Hitレーベルのロックラインナップの中で存在感を高めるきっかけとなり、後のフルアルバム『Fake It Flowers』に直結する音楽的進化の通過点でもあった。

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全曲レビュー

1. Space Cadet

EPのタイトル曲にしてオープニング。宙を漂うようなコード感とBeaの浮遊感あるボーカルが、「現実とちょっとズレた私」という主題を完璧に導入している。

2. I Wish I Was Stephen Malkmus

本作のハイライトとも言える一曲。PavementのフロントマンであるStephen Malkmusへの憧れを、パンク調のリズムに乗せて吐露するセルフアイロニックなアンセム。ギターの歪みがBeaの新たなフェーズを告げる。

3. Sun More Often

メランコリックなメロディラインが印象的な一曲。「もっと太陽を見たい」という歌詞には、抑うつ的な感情と、それを抜け出そうとする願望が込められている。

4. She Plays Bass

女友達への憧れと愛情が交錯するガールズラブソング。パンク的な疾走感の中に、Beaらしい素朴で思春期らしい切なさが宿る。MVではBea自身のガールギャング感覚も色濃く出ており、ファッション面でも注目を集めた。

5. Ghosts

EPを締めくくるこの曲では、感情的な断絶や過去の関係の亡霊を描いている。静かなイントロから轟音ギターへと展開する構成は、彼女のダイナミクス表現の成長を感じさせる。

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総評

『Space Cadet』は、Beabadoobeeがシンガーソングライターとしての自意識を、「ロックバンドの一員」としての感覚へと拡張していったターニングポイントである。

本作には、ティーン期の葛藤、孤独感、羨望、アイデンティティの混乱といったBeaの内面が、ギターとドラムの荒々しい質感を通じてダイレクトに投影されている。それは、静かに囁いていた『Loveworm』の自分とは異なり、「世界に叫びかける存在」へと脱皮した姿でもある。

音楽的には、90年代のグランジ／ローファイを下敷きにしつつ、現代的なDIY感覚やポップネスを取り入れた柔軟なスタイルで、当時のZ世代ロック再評価の潮流とも共振していた。

Beabadoobeeにとって、このEPは「まだ不安定な自分」と「そのままで世界を生きようとする自分」との接点であり、聴き手にとっては、心の迷子たちに寄り添ってくれるような存在となるだろう。

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ファンや評論家の反応

『Space Cadet』は、リリース直後からBeabadoobeeの“本格派”としての地位を確立した作品として注目された。

音楽誌「NME」では「90年代の亡霊たちと現代の感受性が交差する、異常に中毒性の高い作品」と評され、SNSでも“ギター女子の新しいアイコン”として熱狂的な支持を集めた。

日本国内でも、当時拡がっていた90sオルタナ再評価のムーブメントと相まって、Beaのスタイルやファッションがカルチャーアイコン的に紹介され、ライブの来日を待ち望む声が高まった。

結果として『Fake It Flowers』での成功を確かなものにしたのは、このEPが築いたファンとの信頼関係であり、Beabadoobeeにとっての“ロック元年”とも言える重要作である。