アルバムレビュー:Ship of Memories by Focus

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

Spotifyジャケット画像

発売日: 1976年(録音:1970〜1975年)
ジャンル: プログレッシブ・ロック、ジャズロック、クラシカル・ロック


漂流する記憶たちの断章——未完の断片に宿る、Focusのもうひとつの肖像

『Ship of Memories』は、1976年に発表されたFocusのコンピレーション・アルバムであり、実質的には未発表音源やアウトテイクを集めた“アーカイヴ作品”である。
録音は1970年から1975年にかけて行われており、アルバムとしての統一感は薄いが、それだけにバンドの変遷や創作の裏側を垣間見ることのできる貴重な記録となっている。

収録曲は、セカンドアルバム『Moving Waves』制作時の初期セッションから、『Mother Focus』期のフュージョン寄りなアプローチまで多岐にわたる。
Focusというバンドの多面性——クラシック的構築美、ジャズ的即興、ロックの推進力、そして洒脱なポップセンス——が断片的ながら鮮やかに刻まれている。


全曲レビュー

1. P’s March

軍隊行進曲風のアップテンポなインストゥルメンタル。
マーチの構造にユーモアとクラシック的緊張感を織り交ぜた、バンド初期の個性がよく現れた楽曲。

2. Can’t Believe My Eyes

ハードロック色の強いギターリフが印象的なナンバー。
1973年頃のセッションと思われ、Jan Akkermanのアグレッシヴな一面が炸裂する。

3. Focus V

『Mother Focus』にも収録された同名曲の別ミックス。
フルートとギターの穏やかな絡みが美しく、リラクシングな雰囲気をたたえる。

4. Out of Vesuvius

荒々しいジャズロック・セッション。
「Anonymus II」系譜の即興演奏で、パーカッシヴなドラムとオルガンが火を噴くスリリングな展開。

5. Glider

軽快なフュージョン風の小品で、後の『Mother Focus』に通じるムード。
エレピとギターのコンビネーションが爽やかな印象を与える。

6. Red Sky at Night

ロマンティックで映画音楽的なインストゥルメンタル。
シンセの柔らかなパッドとピアノが主役で、幻想的なムードを醸し出している。

7. Spoke the Lord Creator

Focusとしては異例のヴォーカル入り楽曲
幻想的なアレンジと宗教的・神秘的なテーマを融合した、サイケデリックな香りも漂う一曲。

8. Crackers

ユーモラスな短編。
変則リズムとサウンド・エフェクトが際立ち、Focusの“遊び心”が前面に出ている。

9. Ship of Memories

アルバムのラストを飾るタイトル曲。
メランコリックでドリーミーなピアノ中心の小品で、まさに“記憶の船”を象徴するような締めくくりとなっている。


総評

『Ship of Memories』は、Focusのキャリアの中では異色の位置づけにあるものの、断片的であるがゆえに、その魅力が逆説的に立ち上がってくる一枚である。
統一感のなさは明白だが、それこそがバンドの創作過程のリアルを物語っており、むしろ“記録”としての価値は高い。

ここには、未完成であるがゆえに生々しいアイディア、荒削りな演奏、そして完成作には入りきらなかったFocusの“陰影”と“余白”が刻まれている。
タイトルが示すように、これは一艘の記憶の船——過去の残響とともに、いまも静かに波間を漂っている。

完成された名盤とは違った意味で、Focusというバンドを深く理解したいリスナーにとって不可欠な作品と言えるだろう。


おすすめアルバム

  • King CrimsonIslands
     実験的で内省的なムードと、セッション的感覚が共通。
  • Soft Machine – Six
     断片的な構成とジャズ色の強い即興が『Ship of Memories』に通じる。
  • Frank Zappa – Hot Rats
     ロックとジャズの境界を自在に行き来するスタジオ・セッションの集大成。
  • Can – Future Days
     環境音や即興性を取り込んだ、漂流するような音楽世界。
  • Jan Akkerman – Profile
     Focus初期の音楽性とギター主導の構築性を感じられるソロ・デビュー作。

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